行動再開
ドラゴン達が妖精城に向かったのを見届けてから歩き出そうとする。
「か、体がかなり重い……」
トリプルで付与されている状態異常の影響で走る事はできず、歩く事すら少々きつい。 原因は〈サクリファイス・ボウ〉を放った為に発生した後遺症なのだろうが、これはきつい。 骨折とかしてリハビリをしなければならなかった時の感覚が蘇る。
「これでも過去に比べればマシになったと言う事だが……」
過去の妖精族の威力そのままであったら、1発で灰を通り越してロストしてしまうというのは事実のようだな。 とてつもない力が秘められた効果の再使用で消されるような感じなのかね。 〈サクリファイス・ボウ〉は警告どおり、無闇と乱発していいスキルじゃない。
正直、これはデスペナ貰って、街まで戻ることを覚悟で撃つべき最終手段だ。 現に今は移動する事すらこれだけ苦労しており、とても撤退行動を取れる状態じゃない。 まさにサクリファイス(尊き犠牲)を地で行っている。 大事な相棒まで永遠に失ってしまうわけだし。
「頼りたくは無かったのだが……ピカーシャ! 来てくれないかー!」
目立つだの何だの言っていられない、正直ここから宿屋に着くまでこんなとぼとぼ歩いていたら何時までかかるか分からない。 今朝泊まった宿屋まで行くのに協力して貰うしかない、気分は入院患者だよ。
「ぴゅい~♪ ひ、ぴゅい!?」
呼びかけたら来てくれるピカーシャ、今は本当にありがたい。 もういろんな特権の個人行使がひどい気がするが、今はそれを横においておこう。 のろのろとピカーシャに近寄る自分を見かねて、ピカーシャがくちばしに自分をくわえて、ぽいっと背中に乗せてくれた。
「すまない、ちょっと体をぼろぼろにしてしまった……まずは服屋に向かって貰えないかな?」
ぴゅいと一鳴きして、テクテク歩き出すピカーシャ。 今後、自分を乗せて運んでくれる存在が切実に欲しいな。 ピカーシャは妖精国の存在だから本来頼ってはいけないし、頼れる存在ではない。 ある程度大きい動物型の妖精は、主人を背中に乗せてくれると聞いているのだが……あいにくこれは自分には望めない。 ツヴァイの妖精が確か大きい狼だったが、ああいうのは背中に乗せてくれそうだな、うらやましい。
「ぴゅい」
と、そんな考え事をしているうちに服屋に着いたようだ。 服屋に居る人たちはピカーシャを見て、一体何事かと驚いている様子、そんな状態の中、のろのろと降りる自分はかなり格好が悪いだろうな。 何とかピカーシャから降りて、店の主人に注文をする。
「申し訳ないが、体をすっぽりと隠せる外套が欲しいのですが、在庫はありますか?」
目的はひとつ、この全身のドラゴンスケイルライトアーマー一式を隠すためだ。 この美しい青い鎧はかなり目立つ、なのでマント代わりの外套を上から羽織って隠してしまおうと言うわけだ。
「そうですね、この辺はいかがでしょうか?」
店の主人は慌てた表情を浮かべながらも色々な色を取り揃えた外套を見せてくれる。 ふと、一部外套の仕立て方が違う物が目に入る。
「主人、あの外套は?」
変に考えるより、本職が居るなら聞いておくべきだ。
「ああ、あれですか。アレは弓を使う者が弓を構えやすくするために、外套にスリットを入れて、脱がなくても両手を前に出せるようにしてあるんですな、お客様も弓を使うので?」
この質問に、弓は自分も確かに使います、と答えたら「なら、お勧めの外套になりますな」と返答してくる服屋の主人。 値段は安い物で3000グローから始まり、高い物は10万グローを超えている。
「この値段の差はどういうことですか?」
恐らく、魔法付与か、耐久力の差か……一応あたりはつけておくが、素人判断は不味い。 防具の生産は全く関ってきていないのでその辺が良く分からないのが痛いところだ。
「耐久、ある程度の永続保護魔法、高い物は自己修復まで備えておりますので量産が出来ず、申し訳ありませんが高めになっております」
ほう、自己修復か! 外套を失いたくない状態に陥った今、自己修復を備える外套は実にありがたい。 それならばと、店に展示してあった中で1番高い18万グローと表示されている緑色の外套を指差し……。
「ならば、これを頂きたい」
そう伝えると服屋の主人は一瞬ぽかんとした表情を浮かべた後に……
「お、お客様、確かにそれは当店でも1番自信を持って展示している一品ではございますが、たかが外套にそこまでのお金を払う人はいないと言う遊びもかねて展示していた物です。 18万もあれば、相当の防具一式を揃えることが可能です、本当に宜しいのですか!?」
そりゃそうでしょうなぁ。 いくら素晴らしい外套といっても、レザーやライトアーマーとかの一式をそろえたら鎧の方がはるかに強い。 が、今の自分は例外中の例外だからな。
「構まいません、今着ている鎧は非常に優秀で、後は外套をしっかりとした物を揃えたかった所ですので」
と、半分口からでまかせを言う。 鎧は確かにドラゴンスケイルなのだから優秀だが、外套はこのドラゴンスケイルアーマーを隠せれば何でも良かったのだ。 そこにたまたま良い物があったというだけに過ぎない。
「そういうことでしたら……」
と、展示されていた外套を下ろし、差し出してくる服屋の主人。 こちらも18万グローを手渡し商談は成立、すぐさま外套を装備する。 鏡に映った自分を見て、ドラゴンスケイルアーマーを全て隠せていることに満足する。
「ん、いい感じだ、いい買い物をさせてもらいました」
そういって服屋の主人に軽く頭を下げる。
「いえ、こちらこそいい取引が出来ました、またご縁があればよろしくお願いします」
服屋の主人も頭を下げてくる。
「そのときはよろしくお願いします」
残念ながら、二度とくることは無いと思うけど……社交辞令と言う奴だ。 再びピカーシャにかぷっ→ぽいっ♪ で背中に乗せてもらい、宿屋に向かう。 この体の状態では色々ときついし、今はドラゴン達が会談している可能性も高いので、クィーンの所に行くのは明日にするつもりだ。
このあと、宿屋の主人にはやや渋られたが、明日妖精の城に出頭するつもりなので今夜だけは泊めて欲しいと頼み、何とか部屋を借りることが出来た。 今は休んで、少しでも状態異常を軽減しておかねばならない。
明日、クィーンとの対話になります。 ピカーシャはいい子。
追記。
それからあまりにも指摘が多かったので記載しておきますが、話に上がっていた硬貨とは、ウィザー○○ィ エピソード2 ダイヤモ○ドの騎士に存在していたアイテム『力のコイン』の事。
使用すると一瞬でどんなキャラでも上級職に転職できるチートに近いアイテムなのですが、再使用するとなんとキャラクターが消失してしまうと言うとんでもないアイテム。
また、ドロップした直後から一度使用されているコインが出ることもあったために、それで育ててきたキャラをロストさせられた悲劇もあったそうです。
スキル
風塵狩弓Lv23 蹴撃Lv22 遠視Lv53 製作の指先Lv58 小盾Lv9
隠蔽Lv41 身体能力強化Lv41 義賊Lv28 鞭術Lv38
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
木工Lv39 鍛冶Lv40 薬剤Lv43 上級料理Lv13
ExP 4
所持称号 妖精女王すら魅了した者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 指名手配(妖精国)
二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
状態異常 〈虚弱〉〈移動速度90%ダウン〉〈パッシブスキル無効化〉

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