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とあるおっさんのVRMMO活動記 作者:椎名ほわほわ

戦闘終了後の報酬

(動かんな……)

 死亡したので幽霊状態になっている自分は、動かないグリーン・ドラゴンを眺めている。 この幽霊状態は二分ほど続き、蘇生行為を受けれないと一番最後に泊まった宿屋の前に強制転送される。 

(どうやら、何とか最後の特攻は成功したようだ)

 ちなみにこの幽霊状態、死亡した自分の体から2mぐらいの範囲なら歩き回れる。 もちろん声を出しても、生きてる人には何も聞こえないし、幽霊である姿も見えないのだが……幽霊同士なら会話が出来るので、PTで全滅した時は反省を話し合うこともあるのだとか。

(さて、大人しく2分待ちますか……)

 そう考えて、胡坐をかいて座り込む、その時である。

 ドッス~ン ドッス~ン ズッシ~ン

 と派手な音を立てて、着地するでっかい影が3つ。何事かと思ってみているとレッド・ドラゴン、ブラック・ドラゴン、ホワイト・ドラゴンが着地してきた。 こちらに来るが……同胞であるグリーン・ドラゴンを助けにでも来たか?

『早々に取り掛かれ』

『『はっ』』

 やはり、グリーン・ドラゴンを治療しに来たのか……ドラゴンはやはり同じ穴の狢と言う事か……そう思って眺めていたのだが、なにやら自分の体にぺたぺた液体を塗りつけている。 それにグリーン・ドラゴンの方には見向きもしない、なんか、様子がおかしいぞ?

 【蘇生行為を受けました、復帰しますか? YES/NO 】

 はい? 何故に? そもそも蘇生方法はプレイヤーにはまだ不明だと言うのに、あっさりと蘇生? ともかく蘇生を施すということは何かしら理由があるのだろう、とりあえずYESを選択する。

「うう、なんかくらくらするな」

 宿屋の前に飛ばされての復帰と違い、なんだか少しフラフラする。 ゲームによっては蘇生アイテムや魔法による復帰は少しの間ペナルティを受ける物があるが、ワンモアもそのうちの1つなのだろう、とあたりをつける。

「こたびのこと、真に申し訳なかった」

 前を見ると、三匹のでかいレッド・ブラック・ホワイトの3匹のドラゴンが体全体をぺた~~っと地面にくっつけて、でかい頭もぺとっと地面にくっつけて……ええと、表現が微妙なのだが、いわゆる犬なんかの……伏せ! のような物も思っていただければ……あれ? なんか可愛い、顔はごついと言うのに。

「はあ……」

 気が抜けた言葉を発してしまったが、逆にこの状況ですべてを理解できる人が居たらぜひ紹介して欲しい。 聞きたいことがてんこ盛りでかえって何も聞けない、そんな状態である。

「そちらも多々文句はあるだろうが、先に事情を説明させていただきたい」

 ちなみに、まだぺと~~っと伏せ状態である。

「貴公が倒したグリーン・ドラゴンこと、エメルはグリーン・ドラゴンの長老だったのだが……ここ数年は、恫喝とドラゴンの力による威圧を主体にした話し合いばかりをしている疑いが持ち上がっていた」

 ふむ。

「そればかりか、どういう方法をとっていたのかはわからないが、ブルードラゴンと私の千里眼能力をもごまかす方法を身につけたようで、奴の行動が読めなくなっていた」

 ん?

「じゃあ、誰か密偵とか放たなかったのか?」

 そういう監査役は必要だろうに。

「人ならではだな、その意見が出るのは……我らのこの体の大きさで、そういう密偵行動が可能と思われるか……?」

 あ。 そうか、この大きさじゃ……。

「どう頑張っても……目立つな」

 うむ、とレッド・ドラゴンは同意する。

「それゆえに、監視は千里眼で行なうのだが……見事に騙された。 グリーン・ドラゴンの一匹が密告してきた事によりエメルの悪事が明るみに出掛かったのだが……人族でもそうであると思うが、はっきりとした証拠か、その現場を抑えることが出来ねば、いくら王とはいえ、罰することが出来なかった」

 耳が痛いな。 適当な証拠をでっち上げて、誤認逮捕なんて話が転がっている現実を知っているとな。 苦い表情を浮かべていると同意と受け取ったのかレッド・ドラゴンは話を続ける。

「が、ようやく今回はそれを暴くことが出来た。 奴も焦ったのか、貴公を追いかけているとき、フェアリー・クィーンを脅迫し、無理やり指名手配させた場面を千里眼で確認することが出来た。 思い通りに行かなくなると、幻覚が崩れるのかも知れぬ」

 出来すぎている、が……。

「そのため、このエメルを罰するべく国から出てきたのだが……よもや人族である貴公が討伐するとは……見事としか言いようが無い」

 一応聞いておくか。

「とはいえ、王の同族である、グリーン・ドラゴンを殺したわけだがそれは良いのか?」

 当然悪いといわれようが、謝るつもりは無いが。

「構わぬ。 貴公が倒せなければ私が食いちぎるつもりであった。 どの道コヤツに生きる道は無かったと言うことだな。 王には非情さも求められる事を知らぬわけではあるまい?」

 これには頷く。 脅迫されたとはいえ、1人のゲストより国民を優先したと思われるクィーンもそうだし、国と種族に泥を塗ったグリーン・ドラゴンを容赦なく切り捨てる決断を下したこのレッド・ドラゴン然り。 王は国を守る存在ではあるが、その国を守るためなら重鎮と言えど容赦なく切り捨てる判断も求められる。 100を守るために10を切り捨てるのが王なのだ。 全てを守れる王などは幻想に過ぎない。

「まあ、その辺の話は頭の方では理解できる。 が、そちら側を現時点では心の方で信用が出来ない。 信用して欲しいのであれば、他の迷惑をかけた種族に対して相応の侘びを続ける事だな」

 信用は得るのに10年、失うのは1秒と会社の上司も口すっぱくして言うし、自分もそれは真理だと思う。 ドラゴン族が信用を取り戻せるのかは今後しだいだろう。 とりあえず今は、自分個人としては信用ができない。

「耳が痛い。 が、忘れてはいけない事か……国に帰ったら全てのドラゴンに伝えておこう。 それから、グリーン・ドラゴンは全員謹慎させている」

 なるほど、その辺は手をうったか。

「それから、今まで貴公が作った料理に対して報酬を払っていないと言うとんでもない事実も確認している。 故にその報酬、ならびにこたびの迷惑をかけた侘びとして、これらを受け取っていただく」

 表示された物は、現金80万グロー、???の弓、ドラゴンスケイルライトアーマー一式。

「あと、貴公が討伐したこやつの体から取れる素材も全て持っていくが良い」

 確認すると、ドラゴンレザー×120 グリーンドラゴンスケイル×110 良質なグリーンドラゴンスケイル×22 ドラゴンボーン×85 ドラゴンミート×60 と表示された。 これ、下手に市場に流したら絶対大騒ぎになるぞ。

「むう、ドラゴンスケイルライトアーマーか……」

 軽鎧のスキルは持ってないんだよな、宝の持ち腐れになりそうだが。

「安心しろ、ドワーフの手が入っている一品ゆえに重量などは非常に軽い。 人族でいうローブぐらいの重量しかない」

 レッド・ドラゴンに言われたので着てみると、青を主体とした色で外見はかなり立派な鎧なのだが、重量が本当に軽い。 インチキだろうこれは、外見は鎧なのに、機動力がレザーより高くなるというのは……。

「こんな装備、イカサマに限りなく近いぞ……」

 そうつい呟いてしまうと、にやりとレッド・ドラゴンは笑う。

「それだけのことを成して貰った礼だ、生半可な物ではこちらの沽券に関る」

 そういう意味もこめてか。 手に入ったドラゴン素材を市場に流しても、この装備は作れないのだろう、というか、ドワーフこの世界に居るのか。

「それからこの弓なのだが……」

 ???の弓としか表記されていないし、攻撃力を初めとした全てのステータスが???と表示されている上に装備も出来ないようだ。

「その弓は、過去、唯一私と直接戦った妖精族の遺品だ。 その弓は、長く所持するなどの条件で主と認めていく変わり者のようだ。装備は今は出来なくとも、長く所持していれば心を開くかも知れんぞ」

 意志のある武器というやつか? なんか更に面倒な話になりそうだが。

「それからもう1つ、我らドラゴンの骨は鉄のような特性を持つとその鎧を作ったドワーフが言っていたな、その骨から弓を作るとしたら参考になるやも知れんな」

 そう言うと、3匹のドラゴン達は立ち上がり妖精の城に向かいだす。

「これから、私は全ての種族を回って謝罪をする旅をせねばならぬ故、そろそろ失礼する。 いつか、貴公に信用をしてもらえるようにならねばならぬ、わが娘のためにもな」

 そう言い残し、飛び上がるドラゴン達。 これからはより世界が騒がしくなりそうだ。
装備がほぼ一新。 しばらくアースは療養生活です。

スキル

風塵狩弓Lv23 蹴撃Lv22 遠視Lv53 製作の指先Lv58 小盾Lv9
隠蔽Lv41 身体能力強化Lv41 義賊Lv28 鞭術Lv38 
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)

控えスキル

木工Lv39 鍛冶Lv40 薬剤Lv43 上級料理Lv13

ExP 4

所持称号 妖精女王すら魅了した者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者  指名手配(妖精国)

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

状態異常 〈虚弱〉〈移動速度90%ダウン〉〈パッシブスキル無効化〉
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