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とあるおっさんのVRMMO活動記 作者:椎名ほわほわ

ドラゴンさんご来訪の理由

 グリーン・ドラゴンと名乗る目の前にいる男性、だが。

「アレ? 確かドラゴンって、あまり出てこないんじゃなかった? 力の制御を諦めて他者と関わる事を避けたと聞いているんですが……」

 クィーンの説明ではそう言っていた筈だが。

「なるほど、女王陛下からそう聞いているのですね、それならば話が早い。 単純に言えば、グリーン・ドラゴンは例外なのですよ。 力がドラゴン族としては劣る代わりに、機動力は随一でこのように人型になることも可能、かつある程度ならば力の制御も可能です。 当然かなり疲れますけどね」

 何事にも例外は存在すると言うわけね。 それに力が劣るなんていっているが、他の種族から見れば反則級なんだろうな、ブレス1発で1千の軍隊を吹き飛ばすとかされても驚かん。

「ですが、誇り高きドラゴン族の一員である事に違いはありませんよね。 わざわざ出てきた理由をお伺いしても宜しいでしょうか?」

 何の関係もないならクィーンも呼び出しをかけたりはしないだろうし。

「そ、その前に……正座、もう足を崩させて……痛いんです……」

 あ、忘れてた。 泣き声をシャットアウトしていたから、クィーンを正座させている状態である事が頭からすっぽり抜け落ちていたわ。

「す、すまん、もう足を崩していいぞ」

 この言葉でクィーンが安堵した顔を浮かべて足を崩す。 後ろの側近達がクィーンの足を突っつきたそうに見つめているな、目で止めとけと伝える、後で地獄を見るのはそっちだぞ。

「し、失礼した。 改めてお話を伺いましょう」

 なんともシリアスと言う言葉が極端に似合わない人間、自分はそういう定めなのだろう。

「は、はあ……んんっ、では話の内容ですが……本当に心当たりはありませんか?」

 グリーン・ドラゴンの男性は緩んだ空気に毒気を抜かれていたようだったが、周りを引き締めなおしてこちらに問いかけてくる。

「そう言われても……レッド・ドラゴンのご両親に、レッド・ドラゴンの子供をお返しした事ぐらいしかドラゴン族との繋がりはありませんし、それにそのことは無かった事にしてもらった筈ですが」

 あの時の一件だけのはずだ。 あの前後では一回もドラゴンに出会ったことは無い。 掲示板でワイバーンに出会ったって報告もあったが、あれは自分とは全く関わりが無い。 それにあの時だってレッド・ドラゴンの子供の治療はしたが、怪我などはさせていない。

「ええ、そのまさにあなたが助けたレッド・ドラゴン陛下のお嬢様に問題が発生しているのです。 あの後、無事にお戻りになられたお嬢様を見て、ブラック・ドラゴンの長老はそれはそれは満面の笑みを浮かべておりました。 ブラック・ドラゴンの長老は、お嬢様が卵のときからお嬢様を可愛がっておられましたので」

 卵の時からって……。

「お嬢様もそれが分かっていますので、ブラック・ドラゴンの長老に『おじ様~』とお声をかけられまして、そのときの長老の表情はかなりだらしなかったですね」

 ああ、なんとなくではあるが理解できる。 微笑ましい。

「その後、ブラック・ドラゴンの医師がお嬢様を診断しまして、どこも異常なしと太鼓判を押されました。 これで一件落着、そうなるはずでした」

 ここで、グリーン・ドラゴンはため息を吐く。

「問題はその翌日から判明しました。 お嬢様が食事をあまり取らないのです。 これから大きく成長するためにはまずは食べなくては始まりません。 ですがお嬢様は平均的な子供ドラゴンが食べる量の半分も召し上がらないのです」

 一気に雲行きがおかしくなってきたぞ、おい。

「そして今日まであまり食事を取ることが無いまま来てしまいました。 その上、お嬢様がある日グリーン・ドラゴンの集落に直接訪れ、こう仰いました。『私にも人化の術を教えて』と。 確かにレッド・ドラゴンの一族の皆様は全てのドラゴンの能力をお持ちです。 ですが、人化の術を使おうとするのは前代未聞の事でして……」

 あれまぁ。

「つまり、お嬢様が何故食事を取らないのか。 そして前代未聞の人化の術まで修めようとするのは何故か、それを聞いてこいとレッド・ドラゴン陛下の指示を受けたわけですか」

 そう自分が言うと、グリーン・ドラゴンは頷く。 人型になっているとはいえプレッシャーをこちらに向けて出さないで欲しいなぁ。

「そう言われても……あの日、お嬢様を助けて、ご飯をある程度食べさせて……大したことはしてないのですがねぇ……その時はお嬢様は非常に良く食べていましたよ?」

 嘘偽り無い事実をグリーン・ドラゴンに告げる。 ここでグリーン・ドラゴンは首をかしげた。

「ちなみにそのとき、どれぐらい食べましたか?」

 確か……あの時の記憶を思い出しながら喋る。

「ハイ・ラビット2匹、ウォーディアー1匹中の7割、あとはハンバーグとスープも食べてましたな」

 この言葉を聞いたグリーン・ドラゴンの片目がピクッと反応した。

「ハンバーグ? スープ?」

 あ、マズったかも知れん。

────────────────────────

「──これは美味しいですね! 生で食べる肉に興味がなくなるわけですよ!」

 そう言いながら次々と出来上がるハンバーグとスープを平らげていくグリーン・ドラゴンさん。 その横で……。

「おかわり!」

 と、何故か一緒になって食事をしているクィーン&側近6名。 ああ、貯めておいた食材がガンガン減っていく……ある意味門の前で足止めを喰らっていて、良かったかも知れぬ。

「疑いは晴れましたか?」

 そう自分が問いかけても食べる方に夢中で全然聞いてくれない。

「次、次をお願いしますよ!」

「おかわり!」

 この大喰らい達は遠慮が全く持って欠片も無い、作っても作ってもきりが無い! これで疑いが晴れなかったら勝ち目が無くて良いから、個人で喧嘩を売ってやる!


 ──結局、30分後にこの8人が満足するまで延々とハンバーグとスープ、焼き鳥に備蓄のポーションジュースまで提供するハメになった。 お陰で疑いは綺麗に晴れたのだが……。

「ぜ、ぜひ持ち帰りたいので、もう少し作ってください! このまま帰還したら、お前だけ食ってきたのか! とレッド・ドラゴン陛下にお叱りを受けてしまいます!」

 そりゃ自業自得でしょうに、と言ったら「そこを何とか!」と頼み込まれる。 もう材料が無いんですよと言ったとたん、「ではかき集めてきます!」と言うが早いか、グリーン・ドラゴンは外に出て行った、窓から。

 結局追加で料理を作って持たせ、グリーン・ドラゴンを送り出す。 これであの小さいレッド・ドラゴンであるお嬢様の食欲が戻るといいが。
ある人は言いました。

「一度上を知ると、二度と下には戻れなくなる」

と。

風塵狩弓Lv17 蹴撃Lv22 遠視Lv53 製作の指先Lv58 ↑1UP 小盾Lv6
隠蔽Lv41 身体能力強化Lv34 義賊Lv26 鞭術Lv37 
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)

控えスキル

木工Lv39 鍛冶Lv40 薬剤Lv43 上級料理Lv13 ↑1UP

ExP 4

所持称号 妖精女王すら魅了した者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
+注意+
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