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とあるおっさんのVRMMO活動記 作者:椎名ほわほわ

襲来・後編

 翌日、ログインしてひまわり亭の依頼が張ってある板をチェック。 ううむ、相変わらずPT向けの依頼しかないな。 やはり明日にはここを出よう、自分の居場所はこの街にはない。 昨日の事がなければもう既に、ここを出ていたんだがな……。

 街中を歩き、ハーブや野菜、調味料などを買っていると、外套を着込み、手にハープを持って歌っている女性が居た。 女性だとわかったのは外套の上からでも分かるふくらみと声でだ。

『みんな笑顔を忘れてしまう あんなに笑いあっていたのに

 ただただ楽しいときには笑い 悲しい時には泣き 悔しいときには怒り 嬉しい時は笑顔に

 そんな単純なことを たった数年で忘れてしまう みんながみんな、成長の名の下に

 表情を隠し 仮面ペルソナをつけて 無表情になっていく

 それが世界の望みと言わんばかりに それが秩序と言わんばかりに


 あの時愛した貴方 笑顔が素敵で 怒り顔も可愛くて そんな素敵な貴方だったのに

 そんな貴方も何時しか仮面ペルソナを被り 笑顔をゆっくり消してしまった

 表情を消すのが大人? 冷静であり続けるのが大人? 私には臆病者にしか写らない

 そんな私の声すらも 雑踏の中では響かない それが現実

 だからこそ 私は覚えている あの時の貴方の笑顔を 怒り顔を 泣き顔を

 貴方が寿命を迎えて 静かに自然に帰り その魂が天に上った後も 私は覚え続ける


 例え滑稽と世界中の命から笑われても 私は誇りを持って覚えている

 あの眩しいばかりの笑顔を 喧嘩をしたときの可愛い怒り顔を 夢に敗れた悲しい泣き顔を

 貴方がいなくなっても 私の魂が この世界に居る事を許されている限り

 だから私は今を生きている 貴方が生きていた事を 世界が忘れ去らないために

 あの日は二度と戻らぬけれど あの日の記憶は昨日の事のように

 私の心の中に ずっとある 私が天に帰るまで 私の隣にずっと居る

 あの日の貴方は 今でも私の心のルビー 赤く熱く 心の中に暖かく眠ってる』


 ──そういえば、演奏スキルとかは確かあったが、ここまで演奏付きで歌う人が居るとは思わなかったな。 吟遊詩人プレイなんて自分にはレベルが高すぎるなぁ。 そう思いながら歌を歌っていた女性を見ていたが、その女性がこちらに気がついたようで、ゆっくり歩いてくる。

「歌聴いてたでしょう? 拝聴料ちょうだい」

 声が歌って居たときとは違って色気のある声だ。 こういう手合いには変に逆らうと不味い。 それに、歌を堪能してしまったのは事実だから、ここは素直に払うしかないか。 出してきた手に100グローを乗せると、とりあえず満足したのか懐にしまう。

「で、1つ質問が有るのだが……」

 姉か妹が居るのか? と聞こうとしたのだが、目の前の外套を着た女性に割り込まれた。

「私のスリーサイズ? 上から102……」

 と言いかけたところで、口をてで物理的にふさぐ事で阻止。

「もごもごー! (なにするのよー!)」

 ため息をわざと大きく見えるようについてから話を始める。

「誰がそんな事言えと言った……こっちが聞きたいのは、貴女に姉か妹が居るか聞きたかったんだよ、ぼそぼそと喋るタイプのな」

 そもそも、この街に滞在する日数を一日増やしたのはそのためなのだから。 そして目の前の女性が着ている外套は、昨日の女性の外套と実にそっくりだった。 身長とプロポーションは全く違うが。

「ああ、貴女が姉さんの言っていた人族の人ね、歌っていれば引き寄せる事が出来そうなんて言われたけれど、本当に引き寄せられて来るなんてね~」

 表情は外套で見えないが、ケラケラ笑っているのは簡単に予想がつく。

「話が長くなるのなら、静かなところに移動しないか?」

 この自分の言葉に「ふぅーん?」と声を漏らす目の前の女性。

「いきなり連れ込もうなんて、とっても……」

 全てを言い切る前に、久々に取り出したハリセンで容赦なくひっぱたく。

「いったーい! 何するのよ!」

 アンタのその無駄にでかくなった胸に聞いてみろってんだ。

────────────────────────

「ふーん、連れ込まれるかと思ったのに、つまんないわね」

 何故か目の前の女性は変な方向でご立腹である。

「あんな歌を歌っておいて、そんな事をいうなっての」

 ひまわり亭のまだ開店していない酒場部分を女将さんに借りて、話をしている。

「まあいいわ。 詳しいことは言えないけれど、貴方にあって来いって言う指示を受けたのよ」

 あっさりバラす女性。

「言えないなら詳しく聞こうとは思わないが……何故自分なのだろう……?」

 そこそこ自分の名前は売れてしまっているが、今1番名前が売れているのはシルバーの爺さんだろう。

「妖精を誑し込んだ男に可愛がってもらえ、って事じゃない?」

 水を飲みながらそんなことを言ってくる、どうしろと。

「可愛がって、ねえ。 ジャーマンスープレックスもどきとかできるかね」

 KAWAIGARIでもしろってか。

「い、いや、それは流石におねーさん遠慮する……」

 脅しが効いたか。 聞く人によっては曲解どころじゃすまない台詞をはくんじゃありませんよ。

「で、本当のところは? 言える範囲でいいから」

 と問いかけてみるが、「会いに行けと言われただけよ~」としか目の前の女性は言わない。

「言える範囲で言うなら……裏の意味では貴方は一番有名だからかしら?」

 裏の意味?

「掲示板とかの話か?」

 そう問いかけてみるが……。

「これ以上は言えないわね……、ぎりぎりヒントで、そういう掲示板とかじゃないわ。 これ以上は、本当に言えないわ、ごめんねえ」

 地雷を回避したらその先には、大型地雷が待っていたとかいう話じゃないだろうなこれ……。

「まあいい、こっちにはどうしようもなさそうだ……時が来るのを待つしかないか、後手に回るのは良くないんだが……」

 うんざりとした表情を見た女性はなぜか楽しそうに笑った後。

「大丈夫、そのときが来たらおねーさんが守ってあげよう! おねーさんは強いのです!」

 などと言い出してくる。 事実か否か……実際普段はフラフラしてるくせに、戦うとなると一転して強い人は結構居たりするのがこの世界。

「そんな時がこないことを祈っているよ……もう厄介事はおなか一杯なんですよ」

 そんなたわいない会話を10分ぐらいして修了。

「姉も言っていたと思うけど、また会いましょうね♪」

 と、投げキッス付きで去っていった、女将さんには散々からかわれた。 その後はまた給仕の手伝いを行い、ログアウト。 翌日、東の内陸街に向かって出発する事にして、東の砦街を後にした。
歌の歌詞は10分ぐらいで適当に考えて書いたものなのですが、
自作の歌です。

あと、実際に歌うことをほぼ考えてないので、長さが微妙かもしれませんが、そこは突っ込みを控えめでお願いします。

スキル

風塵狩弓Lv17 蹴撃Lv22 遠視Lv53 製作の指先Lv57 小盾Lv6
隠蔽Lv41 身体能力強化Lv33 ↑1UP 義賊Lv26 鞭術Lv37 
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)

控えスキル

木工Lv39 鍛冶Lv40 薬剤Lv43 上級料理Lv11

ExP 4

所持称号 妖精女王すら魅了した者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
+注意+
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