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とあるおっさんのVRMMO活動記 作者:椎名ほわほわ

宿屋を見つけてお仕事を・・・

 入る前からちょっとした出来事はあったが、何はともあれ宿屋を確保して、そこを拠点に動かないとな。 妖精国の経済は、たっぷり稼いでたっぷり使うで回っているから、手持ちが今はそれなりにあるとはいえ、依頼を受けてお金を稼いでおかなければ。

 数人の衛兵に道を聞き、なんとかこのひまわり亭という宿屋を見つけることが出来た。 東の砦街はこの宿屋を拠点に依頼をこなす事としよう。 そう思って早速依頼が張ってある要請板のような物の前に行ったのだが……。

「ずいぶんと……少ないな。 こっちではあまり冒険者の需要がないのか?」

 南と比べると依頼の件数が明らかに少ない、大雑把に言って8分の1ぐらいだろうか。 残っている依頼もウォーゴブリンズ部隊の殲滅や、ウォーディアーの群れの駆除など、ソロでやるには辛い依頼ばかりだ。

「ああ、貴方こっちにくるのは初めてなのね。 最初はもっとたくさん依頼があったんだけど、いっぱい人族の冒険者さんが訪れるようになってからは、ものすごい勢いで依頼が達成されだしてねぇ。 どこの宿屋でも依頼の数はそんなものよ」

 そういってひまわり亭の女将さんは笑っていた。 ううむ、依頼が少ないのは平和ってことだから良い事なのだが、冒険者としてはちょっと厳しい、収入のあてが無いって事になる。 他の依頼は明らかに3人以上のPTでやるような依頼だ。 ソロの自分が手を出すには厳しいものがある。

 要請板の前でうんうん唸っている自分を見ていた女将さんは、こう声をかけてきた。

「じゃあ、手ごろな依頼が入るまで、うちで下働きでもする?」

 冒険者の仕事? と言うには些か疑問が残るかもしれないが、街中の雑事に対する依頼と言うのは人族のほうでも普通にあった事だったので、それでもいいか……と考えて女将さんに頷いた。

────────────────────────

「はい、これを7番テーブルのお客さんにもっていって!」

「了解!」

 そしてこっちの世界での夜を迎えている。 ただいまひまわり亭の酒場が忙しい時間帯でございます。 給仕役としてアルバイトをしている状況だと思ってくれればいい。 まさかこんなことを再びやる日が来るとは思っていなかった。

「次は12番テーブルだよ! 急がないとお客さんにどやされるよ!」

 女将さんのいい声が響く。 自分も遅れないように素早くお酒と料理を運ぶ。 戦闘に比べたらはるかに楽なので疲労なんて全くないが。 まあ、それは自分が男だからなのかもしれない。 他の女性の給仕さんは、酔っ払いに絡まれたり、軽いボディタッチをされたりしている。 だが、それに対してしっかり反撃していたり、追加注文を引き出していたりするから侮れない。 こういう世界の女性は特にたくましいね。

「はい、ちょっとすみませんね、はい後ろ通りまーす!」

 声を出しつつ酔っ払いたちのおっさん達の間を通る。 って、俺もおっさんだよ……酒を飲んでいるときの自分は給仕の人から見ればこういう感じなのかと変な場所から再確認。 いくら酒に弱いからといって全く飲んだことが無いわけではないし、付き合いだってあった。 そのときの自分も外から見ればこんな感じだったのだろうか。

「はい、新入り、これを4番テーブルにだよ!」

「合点承知!」

 対して疲れはしないが、次から次へと注文がきて、それを捌いて届けねばならないので忙しさはリアルと全く変わらない。 本当にゲームかこれ? と突っ込みたくなってくるが……。 この忙しさは酒場閉店間際まで続く事になった。


「はいおつかれさん!」

 ようやく客が1人減り、2人減りで静かになり始め、宿泊客も2階や3階にある宿屋部分に戻り、酒場の掃除も終わってようやく一息つけた。

「ずいぶんとお客さんが入っていましたが、毎日こんな感じなのですか?

 そうひまわり亭の女将さんに質問してみる。

「いやいや、今日みたいな混雑は7日に1回ぐらいさ! 普段はこれの半分ぐらいだよ。 むしろその忙しい日に助っ人が居てくれて助かったさ!」

 女将さんは笑っていた、そうか、7日に1回ならまあいいか。 明日が休日だから少しハメをはずしていた様な物と考えればいいだろう。 飲食業にとっては稼ぎ時な日だったわけだ。

「はい給金。 まあ冒険者としては少ないだろうけど、その分食費や宿泊費は取らないから割り切っておくれ!」

 そう言って400グローが手渡される。 確かに収入としては少ないが、宿代が浮くのだから十分だろう。 どの道東の砦街にしばらくは居たいし、その間は最悪このひまわり亭の下働きをやっていても良いのだし、そう考えれば別に悪い話ではない。

「いや、女将さん、十分だ。 じゃ、今日はこれで寝ますよ」

 そう女将さんに告げて上がらせてもらう。 「いい夢みなよ!」なんて女将さんの声が後ろから聞こえた。 これもまたプレイスタイルの1つとしてワンモアは設計しているのだろうか? 今はまだないが、プレイヤー自体が家を持てるようになり、その家をお店として運用し、従業員として働くプレイスタイルと言うのも将来はアリなのかも知れないな。 そんなことを考えつつ、ログアウトした。
こういう一コマもあっても良いかなと。

風塵狩弓Lv17 蹴撃Lv22 遠視Lv53 製作の指先Lv57 ↑1UP 小盾Lv6
隠蔽Lv41 身体能力強化Lv32 義賊Lv26 鞭術Lv37 
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)

控えスキル

木工Lv39 鍛冶Lv40 薬剤Lv43 上級料理Lv11

ExP 4

所持称号 妖精女王すら魅了した者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
+注意+
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