妖精国入り・・・?
妖精国に向かう前に、ほんの少しだけ坑道と木材伐採所に立ち寄った。 坑道は幸いライトメタルの鉱脈を引き当てることが出来たので、10分だけ掘って撤収した。 木材の方は最上級の木は無かったが、そこそこ良い木が生えていたので一本だけ採取した。
多少ではあるが資源を手に入れたので、今度こそ妖精国に向かう道をてくてくのんびり歩く事にした。 前回では妖精国に着くことばかりを考えていてろくすっぽ風景を見ていなかったからだ。 木が左右に生い茂る中、それなりの道幅がある道をてくてく歩く。 木は生い茂っているが、ここの木はプレイヤーが調べた結果、製作には不向きな木であると判明しているので、切り出される事はない。
ゲームの中で森林浴……と言うわけではないのだが、それでもそれなりにはリフレッシュ出来る。 もちろん〈危険察知〉は展開しており、モンスターらしき陰が寄って来たら即座に武器を構えている。 今回は戦うことが目的ではないから、こちらを完全にターゲットにして向かってこない限りは、無視することに決めている。
順調……というか、毎回毎回ハプニングがあってはたまらない訳だが、妖精国の北砦が見えてきた。 前回は南に行ったから今回は西か東に行って見ようかね……そんな事を考えていた時だった。
『くぉ~ん……くぉ~ん……』
と、鳴き声? と言っていいのだろうか、妙な声らしきものが聞こえてきた。 こんな鳴き声を出すモンスターは記憶にないので、立ち止まって集中し、声らしきものが聞こえて来る方向を探る。
『くぉ~ん……』
方向は分かったが、どう考えても森の中なんだよな……。 厄介事なのは分かるが、無視しても落ち着かずに、心残りになる事も間違い無い……好奇心猫を殺すになるか、虎穴に入らんずば虎子を得ずになるか……。 がさがさと音を立てながら木と背の高い草を掻き分け声のする方向を目指す。 この状態では戦いにくさが跳ね上がるので、〈危険察知〉による警戒を最大限にしている。
『くぉ……ん……』
声がどんどん弱々しくなってきている。 急がないと間に合いそうにないが、まだ声の主は見えてこない。 ──止むを得ないと覚悟を決め、〈大跳躍〉で飛び上がり、木の枝に飛び乗る。 そこから〈フライ〉で滞空できる時間を増やして、アニメの忍者のように、枝から枝へと飛び移る移動方法に切り替えた。 当然MPの消耗は激しくなるが、間に合わなければ意味がない。 そして3分ぐらい移動して、目標は見つかった。
「──ドラゴン?」
こちらは西洋型の4つ足に羽根を持ち、ブレスを吐くファンタジーでよく使われるあのドラゴンだ。 ただ状況が分からない、ドラゴンは孵化したばかりなのか、半分以上が卵の殻の中に入っている。 そしてその周りに人と野生動物の死体が合計で10ほど転がっているのだ。 割合は人が4、動物が6である……そして、その死体は光の粒子となり、消え去った。
死体が消え去ってそこに残されたのは孵化したてのドラゴンだけであった。 鳴き疲れたのかもう声を出す余力すらないようだ……ううむ、流石にこれは見捨てたら後味が悪すぎるか。 木の枝から飛び降りて、ドラゴンに近寄る。 ドラゴンは生気がかなり薄れた目でこちらを見上げてくるので、ためしに生のウサギの肉を出してみたところ、とたんにかぶり付いた。 一気に食べつくしたので、3切れほど追加したのだがそれも一瞬で平らげた。
念のため、レア・ポーションをドラゴンの体に振り掛けて、その後に卵の殻から取り出してみた。 鱗の色は赤、つまり火が得意なレッド・ドラゴンの子供なのだろう。 ポーションが効いたのか、空腹が紛れたのか、どちらかは分からないが、『くぉーん』と鳴き声に生気が戻ってきている。 大きさは両手なら十分に持てるぐらい……リアルのウサギより一回り小さいぐらいだ。
さて、助けたは良いがどうしようか。 ファストやネクシアにいくのは絶対ダメだ。 目立つしこの子もそんな状況では休めまい。 となると妖精国にこのまま行くしかないのだが……歴史上いろんな種族に対して、戦争をした背景がある妖精国に、この子を連れて行ってもいいものだろうか? 有るかどうか分からないが、仮にドラゴン皇国なんて物がどこかに存在した場合、この子を連れ歩くと外交問題に発展しないか?
その上に助けたとは言っても、あの4人の死体になっていた奴らが、ドラゴンの卵をどこかから盗んできた可能性が否定できない。 そんな人族をドラゴンが信用してくれるだろうか? ……無理だな、あの4人はドラゴンを盗んでどこかに売るつもりだったか、調教して手札にするつもりだったのかは今となっては分からないが、ドラゴンからしてみれば(可愛いわが子を奪われた!) 以外の何物でもない訳で……人族がそれを助けたなんていっても怒り狂うだけだろう……。
今後はどうするかひとまず横に置いて森を抜けるか……、ドラゴンに「ちょっとだけ大人しくててくれな」と頼むと、『くぉん』と1鳴きして動かなくなったので、再び〈大跳躍〉で枝に飛び乗り、〈フライ〉で飛び移る移動方法をとる。 念のために言っておくが飛び移っているのは十分な太さがある枝のみであるのであしからず……そしてようやく開けた道まで戻ってこれた。
「さて、戻ってこれたはいいが、これからどうしよう……まずはコイツの飯の確保か」
ドラゴンを見ながら言うと『くぉん?』と小動物みたいに首をかしげるドラゴン。 小さいときはどんな生き物も可愛く見えるものか……。 大きく成長すれば、ブレス1発で人間の丸焼きが上手にに焼けましたなんて火力を持つんだろうがな……。 ま、それはそれで置いておこう、今は考えても無駄だし。
ちょうどいい得物が居たので、弓を構え、こちらに対して無警戒なウォーディアーこと、鹿タイプのモンスターに〈隠蔽〉からのコンボで攻撃を仕掛けて狩る。 狩って手に入った肉を半分は自分用に肉と香草を入れてスープに仕立て、もう半分はこの小さいレッド・ドラゴン様に食べていただく。
「旅は道連れ世は情けとはよく言うが……こっちの世界でもそれは通用するのかね~?」
ものすごい勢いで鹿の肉を食い尽くして、更にスープを初めとした料理まで要求するちいさなドラゴンに苦笑しつつ独り言が漏れる。 スープを適当な平たい皿に盛ってやるとまた勢い良く食べだす、どれだけ食欲旺盛なのやら。 まあ、こんな時間も悪い物ではないなと、そんなのんびりとした時間でもあった。
チビドラゴンとの旅が始まる・・・か?
どのプレイヤーにも大なり小なりイベントは発生します。
そしてそれを無視するも関わるも自由です。
大きなイベント以外は全部ゲーム自身がイベントを作っています。
風塵狩弓Lv17 ↑1UP 蹴撃Lv22 遠視Lv53 製作の指先Lv56 小盾Lv6
隠蔽Lv41 身体能力強化Lv32 義賊Lv26 ↑1UP 鞭術Lv37
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
木工Lv39 鍛冶Lv40 薬剤Lv43 上級料理Lv11
ExP 4
所持称号 妖精女王すら魅了した者 一人で強者を討伐した者 ???
二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

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