冒険の舞台は・・・
鍛冶場から場所を変えて、アヤメさんのギルドエリアに案内され、そこで話を聞くことになった。 前回はネイザーのことがあったが、今はネイザー達はログインしていないとの事。
「裏ダンジョン?」
アヤメさんと、自己紹介をしてくれた『クリスタル・レイン』の副ギルドマスターである、ノアさんがそう切り出した。
「ええ、死者の挑戦状の裏側にいつの間にかもう1つの入り口が開通していたの」
と、ノアさんが教えてくれた。 ふむ、恐らくシークレットボスの討伐回数で開通するのだろう、インフォメーションは少なくても3回は流れた。 自分がログインしていないときに討伐が追加達成されてさらに流された可能性も十分あるが、最低でも3回はインフォメーションが流れた事は間違いない。
「ふむ、それは分かりました、で、そのダンジョンの特徴は?」
その質問にはアヤメさんが答える。
「同じ種類の武器をメイン……1番スキルLvが高い物をメインとするようだけど、片手剣なら片手剣だけ、槍なら槍だけの6人PTで挑む事、制限時間は2時間、目的地は地下6階、これがルールになっていますね」
武器縛りか……そして制限時間が長くて地下6階ということは。
「そうなるとダンジョンは広くて、その武器が苦手とするモンスター編成と言った所かね?」
ノアさんが返答する。
「その通りです、近距離系統武器のダンジョンでは魔法使い系統のモンスターが、魔法使い系には弓が、弓系統には硬いタンカータイプの敵がメインで、その脇を固めるかのように他のモンスターが沸いています。 その上メイン武器が固定されているので、特化した人達は特に苦戦しています」
また面倒なダンジョン持ってきたな。 アヤメさんが続ける。
「その上、ダンジョンに入った瞬間、装備の変更が不可能になっています。 なので、複数の装備が使えるようにサブウェポンを持ち込む人が多いですね、スローイングダガーが一般的で、他に鞭、魔法手や指輪、格闘用のグローブなどです」
その辺の手段のもち込みは基本か。 しかし意地が悪すぎるダンジョンだな、開発者出て来い!
「ふーむ、かなり厄介だと言う事は分かった、で、何故自分に声がかかったのかな?」
これを聞かねばならないだろう、いくつかの予想は立つが……。
「まずはこの、私が今使っている長弓を見てください……」
アヤメさんが差し出した長弓を『レンタル』状態で受け取る。 レンタル状態は一時的に貸すシステムで、1時間で持ち主に返還される。 貸してと言って、そのまま持ち逃げする詐欺の手口はこれによって使うことが出来ない。
ちょっと話がそれたが、アヤメさんの使っている長弓を確認する。
第五式長弓
Atk+29
製品品質8
なんだと? これが最大手である弓ギルドのギルドマスターの得物だというのか? 1番威力があるはずの長弓でこれだと言うのか!?
「──自分のついさっき制作が完了した弓を見せようか、種類は一応狩弓となっている」
そうして自分が先ほど作り上げた複合X式狩弓ライトメタルコートをレンタルでアヤメさんに貸す。
「ええ!? このAtkの値……火力が長弓よりは落ちるはずの狩弓で……私の長弓より大幅に強いの!?」
大きな声を上げて驚くアヤメさんが、ノアさんにも弓を見せている。
「これは……形状が特殊ゆえ本人しか扱えないのでしょうが、破格の性能ですね……」
興味しんしんでノアさんがX弓を観察している。
「自分への話と言うのは、弓の製作依頼と言う事で良いのですかね?」
それに頷くお2人……だが。
「問題が多すぎる……時間はまあいいとして、資源の方をお2人は用意する事できますか?」
そこで言葉に詰まる2人。
「──正直厳しいですね、資源が色々枯渇している状況はこちらも理解しています。 貴方のフェアリークィーンとの戦いの後、弓使いが一気に増えたのです、これはお分かりのはずですね」
アヤメさんがそういった後に、ノアさんが続ける。
「しかし、店売りの弓ではすぐに不満になった人が数多く居まして、木工職人に弓の製作依頼を持ちかける人が多く居ました……しかし今まで木工と言えば杖製作といわれるほどの状況だったため、弓の製作は下地すらない状況……その上その時に貴方ことアースさんは捕まりませんでした」
色々目立ちすぎたんで逃げてたからなぁ。
「もちろん職人の方も何回か試作の弓を作り、それが出回るようにはなりましたが、アヤメの弓が現時点で出回っている最高級品だと思ってください。 そして、弓矢の生産のために大量の木材が今までに消費されています」
あー、そりゃいくら腕利きでもあまり作った経験が無いなら良い物は作れない。 自分だって杖を作るとなったら、ぼろぼろのみすぼらしい物しか作れないだろう。 そして試作を重ねるために木材はよりいっそう消耗されるし、矢だって土台は木だ、嫌でも大量に消耗するのは当然の事だ。
「そのような状況でしたが、昨日ピカーシャと一緒にアースさんが現れたとの話を伺いました、そこでもしかしたら会えるかもしれないと思い、鍛冶場にお邪魔してみたのです」
ノアさんがそう締めくくる。 自分はまだメールもウィスパーチャットも閉じているからな……。 実は一回開放してみたのだが、その瞬間に、山ほどのメールと鳴り止まないウィスパーチャットの申し込みが殺到したため、すぐさま閉じるハメになったのだ。 質問メールはやっぱりピカーシャ関連、一部妖精PTに付いての質問があった。
「そうしたら……ここまでの弓を既にお作りになっていたとは……資源が厳しい事は理解しています、しかし、せめて1張だけでもお願いできないでしょうか? 裏のダンジョンに挑むために、少しでもいい弓が欲しいのです」
とアヤメさんが懇願してきた。 うーむ、素材的にはぎりぎりだし、長弓は作ったことが……。
「時間を貰いたい、数日ほど。 それから、Atkが30後半行ったら4万、40台乗ったら8万グローを戴きたい、吹っかけていると思われるかもしれないが、資源の状況上、これぐらいは出して戴かないといけないのだが宜しいだろうか?」
かなりの悪条件を突きつけざるを得なかった。 練習に安い木材で作って1日つぶし、その後また合板のような作り方にライトメタルを補強で使う予定にするため安く出来ないという実情もある。
「──はい、それでお願いします」
アヤメさんはかなり悩んだようだったが最終的に首を縦に振った。 ノアさんが「流石に口約束なのに高すぎるわ、貴方の今使っている弓は8千グローだったのよ!?」と言っている、が。
「ノア、分かっているはずよ、武器が限定されている以上、少しでもいい弓を誰か1人は持って、その一撃に賭けられると言う可能性の有無は大きいって。 その可能性を出せるなら現時点で相応のお金がかかるのは止むを得ないわ」
このアヤメさんの一言で押し黙る。 そうだな、そういう旗が有るだけでも士気が持つと言う事は十分にありえる。 そこに居るのはデータとはいえ中身は人間なのだ。
「それではよろしくお願いします、完成したらメールをくださいね」
それに「了承しました」と返答し、ギルドエリアから自分は立ち去った。 これはまた別の意味で面倒になったな。
アイテム製作話は結構苦手です。
スキル
風塵狩弓Lv16 蹴撃Lv22 遠視Lv53 製作の指先Lv55 小盾Lv6
隠蔽Lv41 身体能力強化Lv32 義賊Lv25 鞭術Lv37
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
木工Lv36 鍛冶Lv40 薬剤Lv43 上級料理Lv11
ExP 7
所持称号 妖精女王すら魅了した者 一人で強者を討伐した者 開放者 ???
二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

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