挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
とあるおっさんのVRMMO活動記 作者:椎名ほわほわ

ピカーシャといっしょ。

タイトルがこれしか思い浮かばなかったんです。
 宿屋に来てくれたピカーシャに乗り、今自分は空の上に居る。 目的地はファスト、食材の仕入れを行なわねばならないので、ネクシアではなくファストにした。

 初めは妖精国の中だけ限定で運んでくれるのかと思っていたが、物は試しで人族のファストと言う街に行けるか? と聞いてみた所、あっさりピカーシャは首を縦に振った。 なのでどうせもう悪目立ちしているのだから思いっきりやってしまえと開き直ってお願いしたのである……。

「お前は相変わらず速いな~」

 そういって飛んでいるピカーシャの首筋を撫でてみる。

「ぴゅいいいい~~♪」

 ピカーシャの機嫌もいいようだ、この鳴き声も聞きなれたな。 そんなやり取りを交わしていればあっという間に妖精国を出ている、この速度の前ではファストなんて目と鼻の先である。

「ごめん、ここで下りて!」

 ピカーシャは「ぴゅい?」と疑問を持つような声を出しつつも素直に下りてくれる。

「ピカーシャへのお礼の料理の材料として、いくつか狩って行きたいやつらが居るんでね、すまないが寄り道をしたいんだ」

 この言葉でピカーシャが「ぴゅいぴゅい♪」と嬉しそうに鳴く。 これは頑張らねばならんな……手ごろなベアが居たので弓で狙おうとすると、青い物体が高速でベアに向かっていった。

「ぴ、ピカーシャ!?」

 そう、ピカーシャがベアに向かって突進したのである。 あっけに取られる自分の視線を受けながら突っ走り、ベアに近寄る。 そして……。

「ぴゅい!」 ──ドスッ! ドスッ!

 1鳴きしたかと思いきや、くちばしでベアの顔面に容赦ない突き攻撃を行なった。 その後に蹴りでベアを宙に浮かすほどの一撃を当てた。

「はあああああ!?」

 マヌケな大声を上げてしまう自分。 待ってくれ、ピカーシャってこんなに強いの!? 哀れなベアは空中で光の粒子となりドロップのお肉が自分の手元に入る。 い、いいのかこんなんで……。

────────────────────────

「ぴゅ~い、ぴゅ~い、ぴゅいぴゅいぴゅ~~い♪」

 ご機嫌な歌声? を鳴きながらピカーシャと一緒に歩く。 あの後10匹少々のベアが空を舞った……ちなみに、ベアは自分の筋力では持ち上げるどころか引きずる事も出来ないほど重いという事を言っておく……そんな重量のある相手を蹴り1発でピカーシャはあっさりと空に舞わせたのである、もういろいろ自分の中の常識がおかしくなりそうだ。

 ファストへの道の途中にある森ではしっかりドレッドウルフを狩って行く。 ロックアントの方はピカーシャが「ぴゅい!」の1鳴きとともに踏み潰して終わりである、殆ど戦車だ。 これだけ強いのなら、生半可な妖精王は乗せたくないんだろうな……。 お陰で安心して薬草の収集も出来るというものだ。

 そうして街が見えてきたのだが……ピカーシャが目立つ、実に目立つ! その事は覚悟はしていた、開き直ったつもりだった! だけど視線がめちゃくちゃ痛い!

「ぴゅい?」

 ああ、ピカーシャ、君の責任ではないんだ、困ったような顔をしないでおくれ……。 そういえば気が付いたのだが、街中には人族だけではなく、妖精の姿がちらほらと居る様だ。 プレイヤーの契約妖精ではなく、放浪妖精の方だ。 その放浪妖精たちは、ピカーシャを間近で見たためかあんぐりと口を開けている、そりゃ妖精国のほうじゃ間近に見ること自体が稀な存在だからなぁ。 これで街中に入ってしまうとさらに大混乱が発生しそうだ。 止むを得ない……。

「すまない、ピカーシャ、ここで少し待っていてほしい」

 ファストの門の前でそういうと……

「ぴ、ぴゅいいい!?」

 と、慌てた鳴き声をあげる。

「街中は流石に狭くてね、ピカーシャにとっては窮屈になってしまうからな。 ちょっと味をつけるための材料を買ってこないといけないんだ、いい子だから少しだけ待っていて」

 こうなだめると、「ぴゅい……」と寂しそうに鳴き、座り込むピカーシャ。

「出来るだけ早く戻るから待っててくれ!」

 そういい残しファストの町に飛び込む自分。 「何でピカーシャがいるの!?」といった質問があちこちから飛んでくるが、「待たせてるから今は返答不可能!」と言って回避しながら、〈フライ〉と〈大跳躍〉を組み合わせて街の空中を駆け抜ける。

「すまない、香辛料とハーブと野菜と果物を……これとこれとこれをたくさん売ってくれ!」

 なつかしのファスト食材のお店へ文字通りに飛び込むと、矢継ぎ早に注文を出す。 食材店の主人は驚きながらも応対してくれた、そういえば人族のほうの店主も反応が人間臭さが増したような……?

「まいど、またよろしく!」

 そう店主が言う言葉を背中に受けてまたも街の外へ駆け抜ける。 あまり待たせるとピカーシャが可愛そうだからな……そして戻ってくると、予想通り黒山の人だかり……いや、七色山の人だかりかな、髪の毛の色がカラフルだから。

「ちょ、ちょっと通してくれー!」

 無理やり人の間を押しのけながら進む。 人山の中央に居たピカーシャもここまで囲まれるとぐったりとしていた。

「ぴゅい~!」

 自分の姿を見つけたとたん、近寄ってきて顔を摺り寄せてくる。 これだけの数に囲まれていたらそりゃ心細いよね……「すまない」と謝っておく。

「じゃ、早速作るから、ピカーシャ、遠慮なく食べてくれ! おなか一杯になったら俺の顔に擦り寄ってくれればいい」

 この自分の声にピカーシャは「ぴゅい!」と首を縦に振って答える。

────────────────────────

 それからしばらくの間、ステーキに始まり、野菜炒め、シチュー、から揚げ、サラダ、そして飲むためのポーションジュースも合い間に作りつつ、ピカーシャに料理をふるまった。 その次から次へと出来上がっていく料理をピカーシャは次から次へと平らげてゆく。 周りに居る人達はそんなピカーシャを「かわいい~」とか「触りたい~」とか言っている。 どうも触らせるのはピカーシャが断固拒否したようで、自分に向けられている視線の中に強い嫉妬が混ざっている気がする。 チョコの日でもホワイトな日でもないんだ、しっとマスクの出番はないぞ?

 満足したのか、ピカーシャが自分の顔に擦り寄ってきた、戻ってきてから狩りで取ってきたお肉の8割がピカーシャのお腹に消えた。 まあ、ピカーシャ本人が取ったようなものだから問題はないけど。 ピカーシャは軽く毛繕いをしたあとに、1本の羽根を自分の体から抜き取り、こちらに渡してくる。

「いいのか?」

 そう質問するとピカーシャは頷くので、くちばしに銜えていた1本のピカーシャの羽根を受け取る。


ピカーシャの心羽根

レジェンド アクセサリー

ピカーシャの信頼を勝ち取ったものが手にできる一枚の青く輝く羽根。 ブローチの様に身につけておくとあらゆる疲労を和らげてくれる能力がある。 また、風の加護を受けられる。

アーツ、魔法発動によるMPコストが15%軽減される
薄い風のバリアにより、飛び道具、魔法に対する回避率が10%上昇
移動速度が10%上昇する


 これはまた……さっそく羽根を左胸に飾る。

「これでいいかい?」

 ピカーシャに向かって、胸に飾った青く輝く羽根をみせると、「ぴゅいぴゅい♪」と満足そうに頷く。 頷いたとたん空へ飛び立つピカーシャ。 そしてあっという間に見えなくなって行く。

「またなー!」

 そういって手を振る。 ……その後プレイヤーと放浪妖精達に取り囲まれて、質問攻めにされたのは言うまでもない。
契約妖精がいない分、こういった部分での優遇が大きいです。

スキル

風塵狩弓Lv16 蹴撃Lv22 遠視Lv53 製作の指先Lv55 小盾Lv6
隠蔽Lv41 身体能力強化Lv32 義賊Lv25 鞭術Lv37 
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)

控えスキル

木工Lv34 鍛冶Lv39 薬剤Lv42 上級料理Lv11 ↑1UP

ExP 7

所持称号 妖精女王すら魅了した者 一人で強者を討伐した者 開放者 ???

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ