クロマグロ:乱獲STOP 長崎の一本釣り漁師立ち上がる
毎日新聞 2014年07月24日 16時00分
乱獲によるクロマグロの減少を食い止めようと、長崎県壱岐市の一本釣り漁師たちが立ち上がっている。インターネットで情報を発信し、全国のマグロ産地を訪問。「マグロ資源を未来に残そう」という呼び掛けに賛同者が増え、活動は広がりを見せている。
「このままでは日本でクロマグロが漁獲できなくなる」。5月20日、水産庁の有識者会議に参考人として呼ばれた壱岐市の一本釣り漁師、中村稔さん(46)が訴えた。
昨年10月、地元の漁師仲間ら約340人と「壱岐市マグロ資源を考える会」を設立し、会長に就いた。ブログを開設し、クロマグロを増やすために漁獲規制の強化を訴える。今年4月にはマグロ産地の青森県・大間、北海道・戸井、和歌山県・那智勝浦を訪問。現地の漁師と意見交換し、協力を呼びかけた。
水産庁は今年3月、3歳以下の未成魚の漁獲量を2002〜04年平均から半減させることを明らかにした。来年から実施される予定だ。しかし、中村さんは「それだけでは資源保護はできない。さらなる漁獲規制を国に訴えなければならない」と話す。このため、同会は5〜8月の産卵シーズンに3歳以上で産卵期を迎えた親魚についても、漁獲量を抑制するよう国に提案している。
壱岐島(壱岐市)最大の勝本漁港での昨年度の水揚げ量は67トン。05年度の358トンに比べ5分の1以下になっている。昨年は約10人のマグロ漁師が廃業した。中村さんがマグロ漁を本格的に始めた01年ごろ、壱岐沖では水面を跳びはねる多くのマグロが見られた。しかし、近年は漁に出ても全く釣れない日があるという。
「マグロは回遊魚。全国的な漁獲の規制が必要」という会の訴えに同調する動きも出てきた。北海道・焼尻(やぎしり)島の一本釣り漁師、高松幸彦さん(58)もその一人だ。高松さんはインターネットで会の存在を知った次男から活動内容を聞くと、壱岐島を訪れて中村さんらと面会、意気投合した。道内の漁師に呼び掛け、同様の組織を設立する方針だ。「クロマグロが減っているのは何年も前から感じていた。今、何とかしなければ」と高松さん。中村さんは将来、全国のマグロ漁師が資源管理について話し合う場を設けたいと考えている。【一條優太】