朝日新聞と一橋大学が共同で実施したアンケートで、回答した全国の自治体の8割が再生可能エネルギーの推進に意欲的で、地域振興に役立てようとしていることがわかった。

 福島第一原発の事故から3年以上。発電の方法を見直す動きから、地域を自分たちの手で再構築する試みへと深化しつつある様子がうかがえる。

 例えば、電力会社に電気を売って得た収益を福祉施設の運営に回したり、発電設備を維持し保守する会社をつくって雇用創出につなげたり。地域で資金を募って設立する市民共同型の発電所も増え、500を超える勢いだ。

 いずれ電力が自由化されれば、電力会社や電源を選んで電気を買えるようになる。そんな将来をにらんで、農業や漁業、林業の生産者が遠隔地の消費者とつながり、直売する地場産品の中に、電気も組み込もうという構想も生まれている。

 経済活動の枠組みには収まりきらない動きも現れている。

 原発被災地となった福島県南相馬市では、太陽光発電所とそこでできた電力を使った植物工場を運営しながら、子どもたちが体験学習できる場がある。

 代表理事の半谷栄寿さんは地元出身で東京電力の元役員。事故の反省から事業を起こした。目標とするのは電気の仕組みや活用法の学習を通じて「自分で考え行動する」人材を育てることだという。

 これまでの電源開発は「つくる人」と「使う人」が分かれがちだった。とりわけ原発は、大量に電力を消費する都会向けにつくられてきた。立地条件も限られ、恩恵を受ける「地元」も一部にとどまった。

 地域振興にしても、これまでは大企業を誘致したり補助金でハコモノをつくったりという他力本願型。その面でも原発誘致は典型だった。

 確かに、安定的な電力供給という面では、再生可能エネルギーに技術的な課題は残る。固定価格での買い取り制度も、電源の開発費用が下がらないと料金負担が大きくなる欠点がある。

 それでも、地域に普通にある資源をいかす再生可能エネルギーは、従来の発想を転換させて、地域に「主権」を育むきっかけになる。

 自分たちで事業を進めれば難題や意見の相違にもぶつかる。どう乗り越え、いかに納得するか。小さな民主主義の実践が積み重なる。

 自分たちの町や生活と関連づけてエネルギーをとらえる機運を歓迎したい。