ご挨拶
ゲスト・オブ・オナー 瀬名秀明
こんにちは。あるいは、はじめまして。皆様と科学の街〈つくば〉でお目にかかれますことを、とても嬉しく思っています。
佐藤竜雄様とともにゲスト・オブ・オナーとして参加させていただくことになりました瀬名秀明です。光栄なことで、本当にありがとうございます。しかしGoHとは何をする人のことなのでしょう? コニー・ウィリスの文庫『空襲警報』を取り出してきて、付録の「二〇〇六年世界SF大会ゲスト・オブ・オナー・スピーチ」を読んでみました。
最初にウィリスはこう語っています。「ゲスト・オブ・オナーに選ばれることがすばらしいのは、作家になるのを助けてくれた人たちみんなに感謝するチャンスが与えられるからです」と。少し先の方にはこんな言葉もあります。「それに加えて、これだけの年月、小説を書きつづけるのに力を貸してくれた人々みんなに感謝するチャンスも与えられます」と。まさにその通りだと思いました。これから二日間、私はここにいらっしゃる、SFが大好きで、科学が大好きで、楽しいことに本当に夢中になれる皆様へ、多くの感謝の気持ちを伝えるために、このつくばへ参った次第です。
一九八五年、私が高校生だったころ、つくばで科学万博がありました。残念ながら私は行けませんでしたが、ちょうど進路を決める時期だったので、私の学年では筑波大学がとても人気だったのです。後年になって「日本ロボット学の父」と呼ばれる早稲田大学の故・加藤一郎先生の伝記絵本を書いたとき、加藤先生たちがつくった「WASUBOT」などのロボットを紹介しました。「WASUBOT」はオルガンを弾くヒト型ロボットで、科学万博の開会式ではNHK交響楽団と協演したのです。「これからは一家に一台、マイロボットの時代が来る」「よい秘書ロボットをつくるには、相手の心がわかることが大切。今後ロボット研究者は生物の心の進化を学ぶべきだ」と、加藤先生は当時としては極めて斬新な思想を打ち出しました。「WASUBOT」も、音楽芸術という人間らしい活動≠ノ協調作業できるロボットをつくりたいという願いから生まれたものでした。私はいまでもロボットに関する講演会で「WASUBOT」が演奏している映像を見せることがあります。ほんの数分間ですが、みんなじっと耳を傾け、ロボットと人間の未来に想いを馳せてくれます。講演後「あのビデオには感動した」と伝えて来る人も少なくありません。
つくばはいまロボット特区です。私もぜひこのつくばでセグウェイに乗ってみたいものです。筑波大学に所属する人工知能やバーチャルリアリティの研究者の方々とは、これまで何度もお話しする機会がありました。私の小説はそうした科学者・工学者の方々、未来を見つめている多くの方々との対話から生まれてきたものです。
SF大会とは何でしょうか? もちろん知人と旧交を温める絶好の機会でもあります。でも、もしあなたが初めてSF大会に参加なさるなら、ぜひ私についてきてみてください。皆様への感謝の気持ちを込めて、丁寧にひとつひとつの企画に参加したいと思います。そして初めての方は、この二日間でひとつでも何か発見をして、それを胸に抱いて帰っていただきたい。好奇心を取り戻してほしいのです。なぜって、それこそ私たちが、SFを大好きになったいちばんの理由なのですから。
そうそう、つくばには隠れた名所があります! 映画『パラサイト・イヴ』の一部は筑波大学で撮影されました。三上博史さんと葉月里緒奈さんがキャッキャウフフとじゃれ合って大学構内の木立を駆ける、あの伝説のシーンは筑波大で撮られています。いまもあるのかな? ぜひアビーロードで記念写真を撮るように、そこで真似してみてくださいね。
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