インドネシアの大統領選でジョコ・ウィドド氏が当選した。七代目で初めて軍幹部やエリート層ではない庶民派の大統領が誕生。真の民主主義の建設に向け、汚職追放など大胆な改革が望まれる。
大統領選はジャカルタ特別州知事のジョコ氏と元陸軍幹部のプラボウォ氏の一騎打ちとなった。
地方の政治家としてたたき上げてきたジョコ氏が汚職追放など国内にはびこる腐敗体質の打破を訴え清廉さを前面にアピールした。選挙戦でも庶民との直接対話を重視した。
エリート軍人のプラボウォ氏は「強い指導者」をセールスポイントに組織力で選挙戦終盤には追い上げたが、ジョコ氏に及ばなかった。選挙結果に問題があるとして憲法裁判所に異議申し立てを図っているが、結果が覆ることはなさそうだ。
国民の直接選挙による大統領選挙で三回目にして初めて庶民出身の指導者が誕生した。インドネシアの民主主義が新しい段階に入ったともいえ、ジョコ氏の手腕を期待したい。
国民は、十年間のユドヨノ政権下で経済成長は成し遂げたが、生活が一向によくならないことに不満を募らせていた。失業率が高く、社会にまん延する腐敗の撲滅を地方で大胆な改革を進めたジョコ氏に託した。
タイでは、総選挙で国が安定せず、軍事クーデターが起き、民主主義の在り方が問われる状態になっている。インドネシアでは選挙戦で対立した両陣営もしがらみを越え、国を安定させ、新しい民主国家形成を進めてほしい。
ジョコ氏にとっては、国会での与党勢力が過半数をとれていないなど、政権運営に課題も多い。
外交も新政権にとって未知数の分野だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)の大きな課題が中国との関係だ。南シナ海などで大胆な海洋進出を図る中国とベトナム、フィリピンなどとのあつれきが続いている。ASEANの中心国としてインドネシアにかかる期待は大きい。
日本とは輸出入ともに高い比率で経済的なつながりも深い。最近は人的な交流も広がっている。これまで日本との人脈も薄いといわれるジョコ氏だが、日本との関係を重視する発言もしている。
世界第四位の人口を擁する大国の行方は日本にとって影響は大きい。これまで以上に経済的、政治的に関係を深め、アジアの成長、安定に貢献したい。
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