南久留米駅に謎の六芒星 陸軍の符号?魔よけ? [福岡県]
福岡県久留米市にあるJR南久留米駅。駅舎入り口の天井に、印象的な星形の装飾がある。二つの正三角形を上下に重ねたデザインで、イスラエル国旗でも知られるダビデの星=六芒星(ろくぼうせい)=のマークだ。1928(昭和3)年に建てられた小さな木造駅は戦時中、兵士や兵器の輸送を担った。軍都として発展した久留米。この六芒星には、ある願いが込められていた。
「旧陸軍が関係しているのでは」。六芒星について、地元にはうわさがある。駅周辺には陸軍第18師団司令部や兵器工場、予備士官学校などの軍事施設が林立していたからだ。だが、陸軍のマークは五芒星。マークの導入にはフランス軍の事例などを参考にしたというが、ユダヤ人との関係は浮かんでこない。
ただ、陸軍も符号としては六芒星を使っていた。軍隊符号は、地図上に書くなどして戦術を練る記号として使う。17年発行の冊子「陸軍軍隊符号」によると、六芒星は旅団司令部を表す。久留米にはかつて歩兵第24旅団があった。
しかし、その歴史を引き継ぐ陸上自衛隊久留米駐屯地は「符号は実際の建物に書くものではないし、司令部ではなく駅に六芒星を書く理由も説明がつかない」と判断。陸軍との関係には否定的だ。
では、どんな意味があるのか。国鉄から駅を引き継いだJR九州には、当時の設計図や資料はなかったが、社内にこんな言い伝えが残っていた。「駅から出征した兵士が、久留米に無事戻って来られるよう施されたのではないか」
歴史上の記号に詳しい大阪成蹊短大の岡田保造名誉教授(日本史)も「魔よけだろう。災難や魔物が近づかないよう、誰かが仕込んだ可能性が高い」と分析する。六芒星の形は、日本では古来、竹などで編んだ格子の目を「籠目(かごめ)」と呼び、魔よけに使っていた。
六芒星は戦地からの生還を祈る「おまじない」だったのだろうか。戦後69年。時代が変わった今も、利用客は六芒星に見守られて目的地へと向かう。
=2014/07/26付 西日本新聞朝刊=