さて、しんがりは豊臣秀吉演じる麿 赤兒さんの登場です。今回の秀吉のテーマカラーは朱色。衣裳にもメイクにも、赤や朱色が効果的に使われています。衣裳は、胴服に鳳凰の柄の入った豪華な羽織。秀吉ならではの桐の家紋も入っています。物語が朝鮮出兵の時代の話となるので、その世界観を生かすために素材に西洋のものを使ったり、洋風の柄を入れてみたりもしているそう。重厚感もあり、ひたすらゴージャス!

麿赤兒

  メイクを終えた麿さんは「メイク中に顔をマッサージしてもらったから、なんだか気持ち良くなって眠くなってきちゃったよ」と、ニコニコとやわらかな雰囲気。しかし、さらに準備が整い、秀吉さが増していくと「麿さんの秀吉、これはホントに間違いない感じですねえ!」「一体、いつの時代からいらしたんですか?」とその完璧な雰囲気づくりに、各スタッフたちも納得の表情を見せています。

麿赤兒

  撮影がスタートすると、まずは河野さんが「目の前をうろちょろ飛ぶハエを睨む感じでお願いします」と注文を出すと、目をギョロッとさせてレンズを睨む麿さん。さすがの目ヂカラ、迫力満点です。続いて「怒鳴りつける感じで」と言われると、言葉にならない奇声を発しながら表情を作る麿さんに、野波さんも「そう! その感じ!」と手応え十分の笑顔で応えます。

麿赤兒

麿赤兒

  仁王立ちをしたり、椅子に軽く座ってみたり、小道具の金色の扇をパタパタさせたり、とさまざまなパターンで撮影は続きます。この金の扇にちょうど照明の光をうまく反射させるように微調整すると、今度は「この、たわけ者が〜!という感じで」と河野さんがリクエストし、だんだんノってきた麿さんも「たわけ者!」だけではなく「ガー!」「フワ−ッ!」「ググー!」「チャー!」「キェー!!」などなど、独特の不思議なかけ声を上げながら撮影を続けていきます。

 麿赤兒

麿赤兒

麿赤兒

  目に光が映るくらいのアップの顔を撮る際には、目を見開いたり、口をガーッと大きく開けたりと激しい表情を撮っていると、野波さんが「次は逆にクールな表情も撮りたい」と言い、冷たく静かな表情でも撮影。「うん、カッコイイ!」とOKが出ると、さらには「じゃ、今度はにっこり笑って」との指示が。すると、あっという間に怖い表情から一転、ニカッと笑顔になる麿さん。野波さんが「あれ、ちょっとかわいくなりすぎた?」と聞くと、河野さんは「いやいや、これもまたいいよ!」となんだかうれしそう。

麿赤兒

麿赤兒

 そしてラストカットで、コミカルな表情を撮るときには「ここでは秀吉ではなく、麿さんの素の表情でいいので」と説明を受けると、「そう言われてもなあ?」と麿さんは複雑な表情。それでも1ショットごとに、笑ったり、怒ったり、クールにキメたり、舌を出したり、といろいろな表情に果敢にチャレンジしていきます。「超カッコイイ! OKです!!」と撮影はひととおり終了。

麿赤兒

 と、そこでなぜか風船ガムをふくらませることにも挑んでみることにした麿さん。大きな風船にするために、5枚ものガムをいっぺんに口に含んでしばらくクチャクチャ…。さて、いよいよ膨らませようとしたその瞬間、なんとそのガムはぽろりと床へ! その絶妙なタイミングと間にはご本人を含めその場にいた全員が笑うしかなかったのですが、しかし残念ながら幻のカットとなってしまったのでした。

  麿さんにも、撮影の感想をお聞きしてきました。

――この舞台への出演が決まった時の感想は。
  その、あくる朝から走り出しましたよ。体力が相当いるらしいという噂をずっと聞いていましたからね。死んでもいいかというくらいの気合いを入れていかないとイカンと思って。だから今はこれならなんとかいけるかなあーって、はかっているような状態ですね。全体のノリではもう、いけると思っていますけど。

――体力をバッチリつけて、臨もうと。
  そうです。おかげで、かえって元気になりましたよ。なんせいつも、ヒマですからね。寝てばかりの毎日だったので。 ――え、でもふだんもお身体は鍛えていらっしゃるのでは?  まあ、踊りをやっていますからね。それはそれで動かしていますけど。セリフを言いながらというのは久しぶりなもんですからね。だって、ただブツブツ言ってればいいってもんじゃないですから。

――やはりちょっと勝手が違いますか。
  そりゃ、そうですよ。やっぱり舞台も2000人くらい入る大舞台ということを想像すると、大変なことだなーと思いますからねえ。さらに、きちんとセリフも覚えなくちゃいけないわけですからね。

――秀吉役を演じることについては。
  うん。面白そうだなあと思いましたよ。他の武将たちに比べると、役づくりが自由な感じがしましてね。イメージがなんか多彩な感じがするじゃないですか。たとえば家康や信長だとなんか決まったイメージがあって、あまりふざけたことをやると「家康はあんなじゃない」とか「そんなおちゃらけた信長はいないよ」って怒られそうだけど。それに比べると、秀吉さんはなんやらもっと自由な感じがしてね。楽しくやれそうな感覚があります。

――今日の撮影は、いかがでしたか。
  いや〜、なかなか面白かったですよ。「ああ、いいですね、いいですね!」ってホメられると、豚も木に登るというか。「おぉ〜」って思って、一生懸命やらせていただきました。役者なんて、そういうもんです。はい、楽しみました。

麿赤兒


文:田中里津子 撮影:田中亜紀



 メイクをすませてフロアに現れた村井國夫さんの姿に「おぉ〜っ!」と歓声が上がるスタジオ内。キリリと入ったアイラインは悪役らしい迫力があり、それでいて大人の色気もたっぷりのたたずまい。特にその肌の張りには、あちこちから「若いねぇ〜!」とのため息まじりの声が漏れ聞こえてきます。

村井國夫

 よく見ると爪にはゴールドのマニキュアが塗られていて、そのことに触れられると「マニキュアなんて“蜘蛛女”以来だわ!」と、代表作のひとつでもある舞台『蜘蛛女のキス』で演じたモリーナよろしく女言葉になってみたり、「そのメイクだと外国人みたいですねえ」と声をかけられると「そう、ちょっと混ざってるからね。佐賀と愛媛の血が…」とトボけてみたりする村井さん。撮影開始前から、早くもノリノリです。

村井國夫

村井國夫

  そして村井さん演じる蜂ヶ屋善兵衛の衣裳は、いわゆる“小忌衣(おみごろも)”というスタイルをベースにしたもの。衣裳スタッフに聞くと、この大きめな襟をつけたいというのは、いのうえさんのご指定だとか。ジャガード織りの銀色がひたすらゴージャスで、南蛮と貿易をしている商人らしさを出すために洋風の生地があちこちに使われています。「なんだか天草四郎みたい」「エリマキトカゲ?」などとも言われ、村井さんも「こんな衣裳を着たら、一体どういう芝居をしたらいいのかわからないよ!」と苦笑い。

村井國夫

村井國夫

 撮影が始まると小道具の扇子を開いたり閉じたり、帯にはさんだり。河野さんから「隣にいる聖子さんと悪だくみをしているつもりで笑ってください」という注文が入ると、とても悪そうな笑顔でニヤリ。続けて野波さんからも「そのまま口元をへの字に」「次は睨みをきかせて」などと重ねてリクエスト。そんな調子で全身のカットを撮り終えると、セットチェンジのためにちょっとブレイク。椅子に腰かけ、ふうっと深い息をつく村井さん。

 次のポーズではワイングラスが小道具で登場。南蛮モノらしき豪華な椅子に座り、赤いワイングラスを掲げる村井さんですが、このグラスの位置を照明の光がうまく反射するように調整して腕をキープしなければなりません。その姿勢でまたもや細かい指示に応える姿を、モニターでチェックしている河野さんはシャッター音が響くたびに深くうなずいています。どうやらとても満足のいくショットが撮れた様子です。

村井國夫

村井國夫

 さらに葉巻を吸う姿を撮ることになると、小道具担当スタッフが用意したものではなく、村井さんご本人がいつも吸われている葉巻を使うことに。「全然、構いませんよ!」と先ほどの休憩時間でも吸われていた私物の葉巻を出すと、村井さんはとても絶妙にシャッターのタイミングをはかりながらゆっくりと煙を吐き出します。なんせ煙なので、うまく漂わせるのは至難の技…と思いきや、ほんの数回で「うん、これ!」と河野さんのOKが。

村井國夫

村井國夫

 またその直後に、コミカルな表情を撮ることになると今度は河野さんから「オヤジギャグを連発している感じで」と言われた村井さん。さっきまでの渋さとはまた違う笑顔で、嬉々としてシャッターを切られるたびにダジャレやら、一発ギャグやらをひたすら連発。スタジオ中は爆笑のまま、撮影は終了したのでした。

村井國夫

村井さんにも、撮影の感想を語っていただきました。

――まずは撮影の感想から。
 ものすごく緻密というか、丁寧というか。ここまで丁寧に大事に撮ってもらったのは初めてで、すごく驚きましたね。こんなに長い時間で撮られることもないですね。普通なら、途中でイヤになって帰りますよ(笑)。だけど、やっぱりノせられてしまって。すごく気が入りましたね。

村井國夫

――このお衣裳もお似合いで、とても素敵です。
 こんなきらびやかな衣裳は僕、生まれて初めてかもしれませんね。この前まで出ていた芝居ではステテコとランニングみたいな感じでしたので、えらい差があって面白いです。それと、舞台で和物の時代劇をやるのも初めてなんですよ。いつも外国人ばかりやっていますので(笑)、とても新鮮です。

――このお芝居へのオファーを聞いた時はどう思われましたか。

 まずね「なんで?」って思いました。「なんで僕をキャスティングしたの?」という感じはすごくありましたね。もちろん、いのうえさんとはよく劇場でお会いしますし、よく観ていただいているなとは思っていましたけど。まさか新感線の舞台に僕が出ることになるとは本当に思いませんでした。なんせ、こんなに地味な役者なんですから。いや、本当に(笑)。でも、きっといのうえさんがいろんな技を使って僕をのせてくださるんではないかと思って、非常に楽しみにしていますよ。

――台本を読んだ感想は。
「これ、一体どうなるんだろう?」と思いました。音楽も入るわけですし、これをどう仕上げていくんだろう、とね。だけど、こういう芝居の中で悪役をいただくというのは非常にうれしいことです。新感線に出るんだったら、ワルのほうがいいなあって思っていましたので、ここは思いっきり演じたいと思います。

――笑いがたくさん盛り込まれている舞台という意味ではどうですか。
 僕も笑いがある芝居はもちろんやりますが、それはいわゆる翻訳物の良き時代の喜劇であったりしますからね。それが新感線の場合はギャグもたくさん入るみたいで。ああいうギャグは、僕にはちょっと……無理かなあと……。だって正統な新劇俳優ですから(笑)。

――ついさっきまでそんなイメージを抱いていたのですが、でも撮影の終盤はオヤジギャグの嵐だったので印象が一気に変わりました(笑)。
 いや、あれは、しなきゃいけないのかなあって思ってやっただけですよ。正統な新劇人の義務感というか、サガですね。あれはギャグじゃないんです、あくまで考えに考え抜いた芝居を演じていたんですよ、はい(笑)。

村井國夫


文:田中里津子 撮影:田中亜紀





 石田三成という実在の人物に扮する粟根まことさんは、メインキャスト10人の中である意味唯一、正統派な衣裳とメイクで撮影に臨みます。本格的なかつらをつけると、早くも眼光鋭い侍姿に。しかし、この時点ではまだ河野さんは「うーん、偉そうに見えへんなー」。野波さんも「そら、見えへんやろー」と、なんだかニヤニヤ。

 粟根まこと


粟根まこと

 衣裳スタッフによると、この衣裳は直垂(したたれ)で、使用した布地は今回のために染めたオリジナルのものなんだとか。「他のキャストのテーマカラーにかぶらないよう、深い緑を使い、ただそのまま単色で着物に仕立てるだけではつまらないから、二色使いの布地も使って右半分と左半分の布地を入れ替えて縫った“片身替わり”にしました」とのこと。カタブツなキャラクターとはいえ、昔から伝わる“オシャレ”な衣裳になっているのです。

粟根まこと

粟根まこと

  
 本来なら、この時代の袴には刀は差さずに手に持つだけだということなのですが、全身写真ではやはり刀を差していないと絵にならないということで、衣裳や小道具スタッフたちが4人がかりでバランスをとりながら装着。粟根さんの「これ、自分ひとりじゃつけられないよなぁ〜」との言葉には、周囲の人々はうなづくばかり。


粟根まこと

  準備が整い、カメラの前でスッと立つ粟根さんの姿には「シブい! カッコいい!!」との賛辞があちこちから飛んできます。今度は河野さんも「うん、いいね、いいね!」、野波さんに至っては「これは完璧な二枚目だねえ!!」と絶賛しきりです。ここからはしばらく、カタブツな石田三成がシリアスにカッコよく、ポーズをキメていきます。

粟根まこと

  扇子を使って口元を隠したり、刀を構えてみせたりと、さまざまな小道具も使いつつ、撮影は順調に続きます。シルエットの撮影では「横顔の、おでこのラインがきれい!」との感想が出たり、またコミカルなショットではそれまでのシリアス路線から一転してのオーバーアクションで、スタッフたちは大いに笑わせられたり、その身のこなしの良さ、対応の素早さに感心させられたり。

粟根まこと

  また立ち姿を撮影する際、粟根さんがスローモーションで実際に刀を抜き、構えて、振り払うといった一連の殺陣の動きをすると、さすがに圧巻のうまさ。スタッフからも「やっぱり刀を使うと一段といいね」「サマになっているよ」「なんだか映画を見ているみたい!」との声が聞こえます。野波さんに「粟根さん、久しぶりの二枚目でカッコいいねえ」と声をかけられると「いや、二枚目じゃありませんよ。単に他の人たちがみんなオモシロだから、ただオモシロじゃない人、ということですよ」と冷静に返していた粟根さんからも、この撮影の感想を語っていただきました。

粟根まこと

粟根まこと

 ――『五右衛門ロック』の第3弾をやると聞いた時は、まずどう思われましたか。
 まあ、ウチはだいたいシリーズものだと『3』で終わるか『5』で終わるかというパターンばかりですからね。『五右衛門ロック2』をやったということはおそらく『3』もあるんだろうなーって思ってましたんで「ああ、やるんだな」とだけ思いました。予想通りでした。

――今回は、石田三成役ということですが。
 はい。この石田三成というのは比較的悪い評価をされがちな武将でして。特に関ヶ原で負けて以来、徳川幕府からすると一番嫌いな武将だと思うので、江戸時代にかなり改変されちゃった人物だと思うんですね。それで悪い噂ばかりが流されて、いわゆる敗軍の将として正当に評価されなかった武将だと思うんです。そういう人をやれるというのはうれしいですよ。しかも今回の物語はまだ豊臣秀吉が存命のころの話で、三成にとっても良かった頃の話ですから。悪い人だと思われがちな石田三成にも、いいところがあったんだよという風になればいいなと思っています。ただ、キャラクター的にはすごく優秀な人にありがちな周りを見下すような感じの人だったらしくて、案の定、今回もそんな感じの嫌味な人です。でも、私も嫌味な人なのでちょうど合ってますね。

――共感しますか?
 はい(笑)。気持ちは、よくわかります。


粟根まこと

――粟根さんはその役柄の歴史や背景を稽古前に調べるそうですが。
 はい、わりとするほうです。この間は三成の居城だった佐和山城(滋賀県彦根市)に行ってきました。これが今ではもう、ただの山でした。登城の道とかも全部壊されていて、ものすごいけもの道みたいな細い道を登っていくと、広いスペースに出て。“ここが本丸の跡です”と書いてあるだけなんですね。ただ景色はすごく良かったので、確かに城としてはすごくいい場所だったんだなあと思いました。

――そこに行って石田三成を思った。
 いや、というより「三成は人気ないな〜」と思いましたね。そのあとすぐ近くの彦根城にも行ってみたんですが“ひこにゃん”は山ほどいるのに“石田みつにゃん”はいないんですよね。とにかくもうみんな“ひこにゃん”側の井伊家オシなんですよ。三成はきっと昔も今も、肩身の狭い人なんです。

――なんだか、かわいそうですね。
 本当にね。負けたらこうなっちゃうんだなってことです。それは明智光秀にしてもなんにしても、敗軍の将というのはそういう風に貶められちゃうものなんだなと思いました。

――そして、今回の台本を読んだ感想はいかがでしたか。
 いやあ、面白いですね。なにしろ1作目に出てきたキャラクターと2作目に出てきたキャラクターが出てきますから。もちろん、前作を知らない方でも楽しめるように作ってはいますが、観ていただいた方にはさらに楽しめるような仕掛けになっているんです。右近(健一)くんの南蛮商人アビラに、高田聖子さんのマローネ、そして浦井健治くんのシャルル王子とか。そしてこの『3』が打ち止めになるかも?ですから、総決算として存分に五右衛門さんには暴れていただいて。さてそこに、石田三成はどうからんでくるのか。五右衛門たちの邪魔をしにくるのか、それとも手伝いにくるのか。そのへんも楽しみにしていただければと思います。

粟根まこと


文:田中里津子 撮影:田中亜紀



 前回の『薔薇とサムライ』に引き続き、マローネという強烈なキャラクターを演じることになった高田聖子さん。メイクを終え、衣裳をつけてスタジオに現れると「セクシー!」という声と同時に「す、すげえな!」「なんじゃこりゃ!!」という声もかけられ、聖子さんも「なんだか2丁目的な人の出番待ちみたいじゃない?」と苦笑い。さらにカツラが装着されるとまたちょっと雰囲気が変わり、「寄席に出てくる奇術の人?」「マローネ姉さんって感じ??」「俄然、マダーム感が出てきたー!」などなど、スタッフたちが口にする勝手な感想に「どうもー♪」と応える聖子さん。撮影前から、早くもテンションは高まる一方です。

高田聖子

 衣裳スタッフによると、今回のマローネの衣裳のテーマカラーは山吹色で、スペインの国旗を意識したとか。スパンコールや宝石のような飾りもすべて1個、1個手で縫いつけたものだそうで本当にゴージャス。いのうえさんからは「巨乳気味にしたい」とリクエストがあったそうで「時代的なことから考えると胸の部分は本来は潰すデザインにするところを、今回はあえて盛りました!」とのこと。パニエでふわっとさせた短いスカートの下は、やはり山吹色のパンツスタイルになっていて、機能性も抜群です。

高田聖子

高田聖子

 次のカットに登場した小道具は猫。本物!? いえいえ、パンフレットの撮影用に高橋さんがこの日の朝4時から5時間ほどかけて作り上げたものだとかで、身体には針金が仕込んであって猫らしいポーズが自由自在にとれるという優れもの。聖子さんはもちろん、スタッフもそれぞれ抱いてみては「すごいね、コレ!」と絶賛しきりです。河野さんが「ただ、スチール写真でこの面白さがどこまで伝わるかだな!」とつぶやくと、野波さんは「ハードル高いなあ〜」とニヤリ、意欲的な笑顔。

高田聖子

高田聖子

高田聖子

 準備が整い、まずは二丁拳銃を手にしたマローネの全身写真から撮影開始です。「バーン!」と聖子さんが言いながらさまざまなポーズをキメていくたびに「かわいい〜」「いいじゃん、いいじゃん!」などと周囲も盛り上がります。野波さんから「もっとくねっと、お尻を突き出して」「ハッピーな感じで」と注文が出ると、徐々にエスカレートしていく聖子さん。ついつい笑いだした河野さんに、野波さんが「やりすぎかなあ?」と聞くと「いやいや、面白くてエロいのはいいよ」とGOサイン。

高田聖子


高田聖子

猫と戯れるショットでも「ノドをなでてみて」と言われた聖子さん、「この毛並みがリアルだよねー。でもある意味アホくさいな、コレ!」とクスクス笑いながら、うまい具合に手足を曲げて抱えたりしながら、動きをつけていきます。そのうち野波さんまでが「お猫さま、アゴをもう少し上げてくれるかな」と猫に対してリクエストをしだす始末で、ひたすら爆笑続きの撮影となりました。
 聖子さんにも、撮影の感想をお聞きしてみました。

高田聖子


高田聖子

――今日の撮影、いかがでしたか。
 他の共演者の方の写真も見せてもらったんですが、なんだか私ひとりだけ同じ劇に出る人じゃないみたいじゃないですか?(笑) だけど、妙に楽しかったですねえ。ふふふ。なんかこう、アングラチックなムードもあって。まあ、今回はマローネにとってきっと初めての海外旅行だと思うんで、それでスカートもちょっと短めにして、動きやすいスタイルにしたんじゃないかな。

――これ、旅姿なんですかね? そういえば宝石みたいなのもいっぱいついていますが。
 危ないから、宝物はみんな身につけておけという作戦でしょうか。目立ってしょうがないですよねえ。江戸の人は宇宙人が来たって思うかも。

高田聖子

――そのマローネを前回に引き続きやると聞いてどう思われましたか。
 前回、ちゃんとすぐに裁いとけばよかったのに!って、思いますけどね。懲りない人なんですね、きっと。だけどお父さん(「薔薇とサムライ」で藤木孝さん演じた大宰相ラーカム)はどうしたんでしょう、お父さんはこの娘が旅立つのを止めなかったんでしょうか。

――いろんなことを想像しちゃいますね(笑)。
 だけどホント、まさかマローネがまた出てきて、しかもはるばる日本にまでやってくるなんて。そこまで業が深いとは思ってもみませんでしたよ。

――前回マローネという役をやった時に、難しかったこと、痛快だったことは。
 どちらかというと、痛快でした。自分の思うことが一番正しいと思って、何をするにも自信満々なので、こういう人をやるのは気持ちがいいもんだなと思いましたし。正直ですしね。たいがいの人は自分のことをまず疑ってかかるでしょ。そんなこともないのかな。私はそうなんですけど。だから、あそこまで迷いのない人生っていうのはうらやましくて。ああして一回捕まってエライ目に遭っているのにも関わらずまだ懲りないなんて、面白い人ですよね。ま、どうせ今回もまた結局、同じような目に遭うに決まっているのに。って、そんなことは今更みなさんに隠す必要もないくらいの話で。

――そこは、ネタバレではない(笑)。
 だって、マローネたちの悪だくみが最終的にうまくいくなんて誰ひとりとして思っていないでしょ? どう考えてもそんなの五右衛門がやっつけるに決まってるんですから。マローネは、絶対やられます(笑)。だけど、そのやられかたが今回もまた面白ければいいなって思っています。

高田聖子

――前回のやられかたも相当すごかったですが。
 そうですね、多くの女性のお客様からは「下品だ」とずいぶん叱咤激励をいただきました。今回もあれに負けないくらい、もっと素敵なやられかたをしたいなと思っています。なにしろ、お祭りみたいな公演なのでね。

――ああいうシーンも、新感線の舞台ならではですね。
 そうですよね。「うっそぉ〜」っていうような、やられかたがいいな。決してカッコよくやられるのではなく。年末年始ですし、パーっとした感じで。

――では今回のマローネの散りぎわも、ご注目ですね。
 それはまだ今のところどうなるか、決まっていないんですけどね。私もぜひ稽古場で何かアイデアを考えて、提案していきたいと思っています(笑)。

高田聖子

文:田中里津子 撮影:田中亜紀



 また今回も人一倍濃い〜メイクの橋本じゅんさんにかけられる声は「この顔、知ってる!」「久しぶり、轟天さん」というものが圧倒的。そしてみんながみんな、笑顔になっているのも特徴的。ちょうどフロアにいた、いのうえさんもじゅんさんの顔を見た途端に「懐かしいな、おかえり!」と言いながらも、しばし爆笑。「みんなのアイドルだねえ!」という声には誰もが納得です。

橋本じゅん

いのうえひでのり

橋本じゅん

橋本じゅん

 このインパクト大のメイクについて、メイクスタッフの内田百合香さんに聞いてみると「とにかく、じゅんさんの場合は表情がすごいですから。その表情に合わせてハイライトを入れて強調したりするんですけどね。でももう本人が一番よく知っているメイクなので、まずは本人が一筆がきみたいにして先にメイクをして、それから私が仕上げるという感じなんですよ」と、この独特のメイクの秘密を教えてくれました。たしかに、このキャラクター色の強いメイクは唯一無二のもの。ご本人がやはり、一番コツをわかっているようです。

橋本じゅん

橋本じゅん

 じゅんさん演じる前田慶次郎は“傾奇者(かぶきもの)”ということで、この通り衣裳はとにかく派手! 花柄あり、ストライプあり、虎柄あり、の柄尽くしの着物に毛皮や紅白のひも、さらには鋲のついたベルトやリストバンドなどなど…、どこもかしこもトゥーマッチな魅力がたっぷり。衣裳スタッフによると、五右衛門ともまた一味違う、面白い派手さを狙ったとのこと。メインに使っている黒地の花柄の生地は明治時代のアンティークの花嫁衣裳を加工したそうで、さすがの豪華さ。じゅんさん本人も、しみじみと自分のいでたちを鏡で眺めて「ホントめでたいねえ、この人! 全体的な印象は…深夜に通りかかったドン・キホーテの外観っていうイメージだな!」と、一言。

橋本じゅん

橋本じゅん

 慶次郎の持つ小道具も、数本の刀以外に鉄の扇など、さまざまなものが用意されています。巨大なキセルが登場するやいなや、河野さんが「でかいな、コレ!」と目を丸くしています。「武者人形みたいだね」と誰かが言うと「コレ、五月人形にしたらどう?」「かなりにぎやかな子供に育ちそうだね」という意見が飛び交い、スタジオ中が大笑い。さらに、その巨大キセルとのバランスに「ホビット族みたいだね、ちょっと足が短い人に見えちゃうかな」と河野さんが言い出すと、じゅんさんが「もともと足、短い人なんだけどね…」とボソッ。こんな調子で、常にスタジオは大笑いの連続なのです。

橋本じゅん

そしていざ撮影が始まると早速、野波さんからは「もっと豪快に手を広げて」「ぐーっと前傾姿勢になって」「ちょっと腕を組んでみて」、河野さんからも「口開けて、舌を出して」「腰をもっと前に突き出そうか」「ギョロッと目線下さい!」などなど、リクエストが続々と出されます。じゅんさんはもとより、スタッフ側もすっかりノリノリでさまざまなセット、シチュエーションで撮影は続くのでした。
 じゅんさんからも、お話を伺ってきました。

橋本じゅん

橋本じゅん

――今日の撮影の感想からお聞きしたいのですが。
 もしかしたら、撮影の最長記録を更新したんじゃないんでしょうかって気がするくらいなんですけど。

――確かに、長かったですね。
 そうですね。スタジオに入ってからほぼ7時間たちますからねえ。

――おつかれさまでした(笑)。
 なんか途中から「これ、何? 写真雑誌?」みたいな気にもなってきました。ここまで時間をかけてこだわって撮る、河野さん、野波さんという巨匠たちの姿を見ているのは面白かったですけどね。

――写真集ができちゃいそうなカット数でしたね。
 そうですよ。『月刊 橋本じゅん』みたいな?(笑)

――今回は衣裳も、ものすごくカッコいいですが。
 見てくださいよ、足にしたってこんなおめでたい感じなんですから。なんだか引き出物みたいなことになっています(笑)。まあ、これは本番用とはまたちょっと違ってくるとは思いますけど。

――前田慶次郎という役をやることに関してはいかがですか。
 これは元気な役なんだろうから、じゃあ元気でいなきゃな、風邪ひけねえな、と思いました。この前の『シレンとラギ』の時は、身体を動かしやすい季節に向かってどんどん稽古が進んでいたんですが、今度は極寒に向かって同じことを、だいたい同じ期間、そしてさらに歌や踊りが加わるわけなので、もっとファットなことに取り組んでいかなくてはいけない。ということは、しっかりと準備をしていかなきゃなと思っています。

――身体のメンテナンスから。
 巣作りみたいな感じですかね、冬に備えての。それなりに、いやかなり引き締めていきます。だけど、お祭りになるとは思いますけどね。その祭りを楽しく過ごせるような準備をしておこうと、地味〜に思っているわけです。

――台本の全体的な感想は。
 いや、ホント面白くなると思いますよ。『五右衛門』シリーズではおなじみのキャラも何人か出てきますし、ちょっとある意味、闇鍋みたいな世界観の中で「それって出オチじゃないの?」みたいな感じもあるけど(笑)。それがどんな風にまとまっていくんかなっていうのも楽しみです。あと、楽しみなのはやっぱり雪之丞さんの書かれる歌詞かな。かずきさんが僕の歌う歌に対して思い入れがあるようなことをおっしゃっていたので、どんなタイミングでどんな内容の歌を歌わされるのか。

――どういう歌ができあがってくるか。
 そうなんです、どんなことを仕掛けているんだろう。まあ、とにかく今回の『五右衛門』第3弾もお祭りみたいなものですから。みなさんもぜひ、楽しみにしていて下さい!

橋本じゅん

橋本じゅん


文:田中里津子 撮影:田中亜紀




 左手に数珠を持ち尼僧姿で登場した春来尼役の高橋由美子さんの姿には、その場にいた誰もが「すごい似合う!」「カワイイ!!」と叫ばずにはいられません。
 そしてこのピンク色の尼頭巾、よーく見ると鳥獣戯画風の兎の模様が入っているのです。衣裳スタッフに聞いてみると、この兎と、そしてピンクにこだわったのはいのうえさんなんだそう。それに合わせて下のうっすらと菊の模様が入った紋紗(もんしゃ)は濃い目のえんじ色にしたとかで、やはりこちらの生地もオリジナルのもの。ちなみに「本番の舞台衣裳用には兎の模様をもう少し大きめ、色も濃いめにする予定です」とのことなので、オペラグラスをお持ちの方はぜひとも目を凝らしてチェックしてみてください!

高橋由美子  

ただ、この尼頭巾が実はこの撮影ではクセモノ。左右のバランス、シワの寄り方にまでスタッフ陣が徹底的にこだわるため、ちょっと頭を動かしただけでもその左右対称さが崩れてしまい、すぐに手直しが入るという手間のかかり具合。そうやって、気軽に動けない状態でじーっとしながら「目線を遠くに!」「背筋をちょっと伸ばして」「あごをちょっとだけ上げて」などと細々と注文されながら撮られ続ける高橋さんの負担は相当なもの。本当に、頭が下がるばかりです。

高橋由美子

高橋由美子

 そして春来尼用の小道具は数珠の他にも仏具のおりんがあり、これが本物ならではのずっしりした重み。河野さんに「叩いてみてもええよ」と言われた高橋さん、早速、チーンと鳴らしてみるととてもいい音がスタジオに響き渡り「なんだかありがたい…」と呟くスタッフが多数。実際に、合掌する高橋さんの姿にはちょっと神々しささえも感じられます。

高橋由美子

  また、次にもうひとつの小道具として手渡されたものを見てケラケラと笑いだす高橋さん。なんとそれは、おにぎり! 「これは自分で食べるんちゃうよ」と河野さんに言われ、アッハハ!と大きく笑う姿は、先ほどの神々しさとはまた違うかわいらしさで現場の空気がゆるみます。野波さんに「差し上げる、という感じでね」と言われ、両手に載せたおにぎりを前に出しながら、にこにこと優しげな微笑みを浮かべる高橋さん。「これはこれで、やっぱりまたありがたい感じがするねえ」との囁きも聞かれます。

 高橋由美子

高橋由美子

  さらに座布団に正座の状態で「目線を落として!」「口元だけ少し微笑んでみて」「おりん、もうちょっと前に倒して!」などと本当に細かい指示を受け続ける撮影がしばらく続き、ようやく河野さんの「OK!」が出るとその途端、ふかふかの座布団から転げるように下りる高橋さん。ひたすらシリアスな表情で、ほとんど大きな動きがない一定の姿勢のままで長時間に及んだ撮影は、かなりキツかったご様子。このあとセットチェンジを行い、コミカルな表情での撮影に移ると途端にハジけたような明るい笑顔を見せていたのも、とてもキュートで印象的でした。

  高橋さんにも撮影の感想を聞きました。

高橋由美子

高橋由美子

 ――まずは撮影の感想から伺えますか。
  いやー、とにかくキメキメでいろいろなポーズを撮ったので、さすがにちょっとしんどかったですけど。でも、楽しかったですよ。どんな写真に仕上がるのか、私もちょっと楽しみですね。 ――とても美しい作品になっていると思います。  どうなんでしょうかねえ。でも、最後に撮ったコミカルな表情のショットは事務所NGが出るんじゃないかって気もしましたけど、どうでしょうか(笑)。使えるものを使っていただくしかないですけど。

 ――たしかに最後のほうは、ハジけてらっしゃいましたね。それまでの抑圧から解き放たれて。
  はい。おなかもすいていたので撮影用のアレ(詳しくはパンフレットをお楽しみに!)も、とてもおいしくいただきました(笑)。

 ――今日の、この尼さんの衣裳に関しては。
  とにかく暑いです…(笑)。だけど、着物は意外と着慣れているほうなので、その点ではラクなほうだと思うんですけど。だけど、尼さんなのにこんなピンクでいいんでしょうかって話もありますよね(笑)。どうやら、いのうえさんがピンクでとおっしゃったらしくて。

高橋由美子

――いのうえさんはその兎の模様がお気に入りだったみたいです。
これ? へえ、そうなんだ。これも、いのうえさんのアイデアだったみたいですね。

――衣裳を見て「兎が効いてるね!」って、うれしそうにおっしゃっていました。
  兎が? 私じゃないのかよ!(笑)ってね。

 ――(笑)。高橋さんは新感線にはおなじみではありますが、ちょっと久しぶりですね。   そうですねえ。でも、実はもうお声はかからないんじゃないかなと思っていたんですよ。きっと私がやれるところはもうないのではなかろうかと思い、観る側に徹しようとしていたんですけれど。ひょんなことから今回こういうお話をいただきまして。だけど完全なるプレッシャーを感じています。

 ――どんなところがプレッシャーに?
  だいぶご無沙汰していたので、なんだか突拍子もないことを言われるのではないかなあという感じですね。いのうえさんのほくそ笑む顔が浮かんで、今からちょっとビビっています。

 ――とんでもないことをやらされるのかもしれない、と。
  おそらく、そうなるんでしょうねえ(笑)。だけど、新感線の作品の中でも特に『五右衛門ロック』シリーズは明るく痛快なので、そこはちょっと思いっきり楽しませていただこうかなあと思っていますけどね。

 ――やっぱり春来尼さんでも、歌とか踊りのシーンはありそうですか。
  歌は結構あるみたいですけど、踊りはどうなんですかね。踊るのかしらあ〜?って感じですよ(笑)。

高橋由美子

高橋由美子


文:田中里津子 撮影:田中亜紀



 2年ぶりにシャルル仕様のメイクと衣裳にバッチリ身を包んだ浦井健治さんが控室から姿を現すと、ちょうどスタジオ入りしたいのうえさんとたまたま目が合った様子で、なぜか「エヘヘー」と笑い合う2人。久しぶりの再会気分なのでしょうか。まずは河野さんと野波さんがモニターに他のキャストたちの写真を映して、このあとの撮影の流れを説明。次々と出てくる写真を見ながら1枚ごとに「うわ! すげー!! こわっ! 大迫力!! カッコイイ〜」と叫ぶ浦井さん。「シャルルの格好をすると、やたらテンションが上がるんです!」とのことで、早くもノってきている様子。

浦井健治

浦井健治

  ちなみにこの日のいでたちは、白がメインの衣裳にキラキラと刺繍が輝き、胸元や袖口にはたっぷりのフリルがつき、白タイツといういかにもな王子風。そこに赤いサッシュベルト、トリコロールのリボンで飾りが付けられ、指にも赤、青、白の大ぶりの指輪。爪は帽子や靴に合わせてシルバーのマニキュアが塗られます。「キンキラだなあ!」としみじみ呟く、いのうえさん。スタッフたちからも「本当にトリコロールだらけで笑えるー」「マンガみたい!」「なんだかオスカルみたいになってきたね」と、口々に感想が漏れます。テスト撮影を始めるやいなや、河野さんから「上着の裾を少し開き気味にしたい」とリクエストが入り、衣裳スタッフが左右の裾にテグス糸を縫いつけることに。「靴にもキラキラした石をつけたいな」との言葉には、素早く小道具担当の高橋さんが対応。早速、用意されたトリコロールの石が靴に装着され、準備は完璧、いよいよ撮影スタートです。

浦井健治

浦井健治

浦井健治

 「最初の顔の表情はクールに、でも手の表情はオーバーに」という指示に沿って、大仰にポーズをキメる浦井さん。途中、投げキッスをしてみたりするおちゃめなシャルル王子には、野波さんも「もう、すっかり外人だなあー」と感心まじり。加えて、派手な鳥の羽(もちろん、これもトリコロール!)が付いている帽子を手に持ったバージョンの撮影では、スタンバイ中に浦井さんがさまざまなポーズを試していると、気に入ったポーズがあったようで「おっ、それいいね!」とすぐさまシャッターを切り始める野波さん。

浦井健治

  続く撮影では、背景に入った斜めの照明のラインに合わせるようにして、大きく手を広げる浦井さんに、河野さんからは「アンヌへの想いを手に込めて、顔は切ない表情で」との演出が入ります。他にも「フラメンコを踊ってる感じで」「マイケル・ジャクソンみたいにキメてみて」など、いろいろな指示が飛んでくる度に「アンヌー!」「ハゥッ!」「ウィ!」などと声をどんどん出しながら、応えていく浦井さん。

浦井健治

浦井健治

  全身のショットが撮り終わり、モニターチェックをする浦井さんは自分の写真を見るなり「誰、これ!」と大笑い。そしてセットチェンジのために移動することになると、衣裳に縫いつけられたテグスの糸巻きを「僕、自分で持ちます」と拾い上げ、楽しそうにスチールカメラや動画カメラに向かってにこやかにポーズ。サービス精神も旺盛な王子に、周囲からは笑い声が絶えません。撮影後、浦井さんにも撮影の感想を尋ねてみました。

浦井健治

浦井健治

 ――ではまず、今終わったばかりの撮影の感想から伺えますか。

  こんなにきらびやかな衣装を着させていただいて。本当に、またシャルルを演じることができるんだなという喜びに今、浸っている最中です。

 ――他の役とはテンションが違いますか?
  だいぶ違いますね。この撮影のために、DVDで前作の『薔薇とサムライ』を昨日寝る前に黙々と観たんですが、自分のテンションの高さにひいたり爆笑したりしちゃいました。やっぱり『薔薇とサムライ』っていう渦の中は本当に楽しいことだらけだったなーって、しみじみ思いましたね。ひとりひとりの役者の個性も際立ちまくっていましたし。この中に自分もいたんだーと思いながら、今回はこの延長なんだーっていうプレッシャーを感じると同時に、すごいワクワク感も湧いてきて。そんな状態で、今日の撮影に挑みました。

 ――準備万端ですね!
  はい、準備万端です!(笑) そして、いのうえさんにシゴかれる準備も万端です!!

 ――今回「またシャルル役だよ」と言われた時はどう思いましたか。
  最初、関係者の方に「健ちゃんはまた健ちゃんで出てもらうから」って言われた時には、ただただキョトンとしていたんですけど。「どういうことですか?」って。よくよく聞くと、またシャルル・ド・ボスコーニュ役だというので、「ああ、またシャルルなんだ!」って、うれしかったですね。新感線さんには2度目の出演になるんですけど、僕は劇団☆新感線のファンでもあるので「これで準劇団員への道をまた一歩進めたぞ」とも思いました。その点もしっかり、肝に銘じながらやっていこうと思っています。

 ――シャルル役を演じるにあたって、苦労することはありましたか。
  苦労した点は、ちょっとやり過ぎてしまうと身体と心がバラバラになってしまい、古田さんに「おまえもう何やってるか、わからなくなってるだろ?」って言われたことがあって。「とりあえず平常心に戻れ」と言われたんですが、これがなかなか戻れなくってですね(笑)。だから今回も決してやり過ぎにならないように、あくまでみなさんに作っていただいたワクの中で、まるでアニメのようなシャルル・ド・ボスコーニュという役を、毎回リアルにナマモノとして流れにのっていけたらなと思います。

 ――シャルル役をやると知ったファンの方や、周りの方からの反応は。
 「キャー!」って言われますね。っていうか、言葉にすると「ギャー!!」かな(笑)。もうすっかり、喜びと歓喜の渦でございます。そこまで大勢の方に愛されるキャラであることはうれしいんですが、でもいざ自分で俯瞰して見るとウザいキャラでもあるんですよねえ。「何やってるんだ、こいつは」みたいなね。でもなんか憎めない。そんなキャラを構築してくれた、かずきさんといのうえさんには本当に感謝しています!

 ――今回の台本を読んだ感想はいかがでしたか。
  とにかく、笑えて笑えて楽しくて。読んでいるだけで、五右衛門の世界が目の前に広がっていった感じでした。

 ――シャルルの出番も多そうですよね。
  あ、はい(笑)。でも、どうなんでしょう。先日、粟根さんにお会いした時にも、頭ポンポンってやられて「健ちゃん、今回は前よりも作品の軸にからんでいるからきっと大変だよー」って言われて。「えっ、シャルルがからんでいいんですか?」って思いながら今、ちょっとプレッシャーを感じています。

浦井健治


文:田中里津子 撮影:田中亜紀



 そして、これまた新感線には初参加の蒼井優さんはまさに“猫の目お銀”という役名にピッタリな、帯や背中に猫の目がアレンジしてある忍者風、女ねずみ小僧風の衣裳で登場! ペイズリー柄が型抜きしてある黒いレースのような生地の下からは赤い着物がのそいていて、華やかかつかわいらしく、そしてセクシー。爪にも銀ラメ入りのマニキュアが塗られて、準備は万端。キリッと濃いめのアイラインがひかれたメイクはなんだかいつもの蒼井さんの印象とも少し違って、とても新鮮です。周囲から思わず「かわいい! めっちゃキュート!!」と歓声があがるなか、所属事務所スタッフからも「なんだか全然違う人みたいだね」と言われた蒼井さんは、ちょっと面白そうに鏡の中の自分を見つめています。

蒼井優

蒼井優

蒼井優

黒い背景の前で全身を撮るショットでは、まず野波さんから「腕を組んで、足を広げて、いたずらっぽく笑ってみて」と注文された蒼井さん。仁王立ちのような姿勢でニコッと笑ってみせると「そう、その表情!」とすぐさまOKサインが出ています。また河野さんからも「ちょっとアゴを上げて、ツンとした感じで」「ひとクセふたクセありそうな笑顔で」と次々と指示が出ると「じゃ、次は口開けて笑ってみてもいいですか?」と蒼井さんの方から確認する場面も。そんな様子でさまざまな笑顔を撮った後でさらに「今度は腹の底からドス黒い感じでニヤリとして」と言われて一瞬、苦笑しながらもニヤリと笑ってみせる蒼井さんに「それそれ、イケた!」と手応えを感じた様子の河野さん。

蒼井優

そんな感じで、前に垂らした髪ひとすじの乱れにもストップが入るような丁寧さで撮影が着々と進んでいくなかで、蒼井さんがついくしゃみをすると「あ! そこの姿勢がちょうどいい!!」と偶然が生かされることもあったり。そういう意味では、ここはビンビンに緊張感が漂うなかでも常に笑い声も絶えないという、非常に珍しい撮影現場なのかもしれないという気がしてきました。

蒼井優


蒼井優

 セットチェンジが終わると、今度は泥棒らしい小道具が次々と登場。ねずみ小僧風のほっかむりをつけられ、赤い唐草模様の風呂敷包みを背負ってポーズをとる蒼井さんの姿には「似合う! かわいすぎる…!!」とのつぶやきがあちこちから漏れています。さらには「顔、ちっちゃ!」「若いって素晴らしい〜」との声も出るなか、河野さんが「よし、ここでサービスカットだ!」と宣言。

蒼井優


蒼井優

すると今度は、網タイツの足がきれいに写るような片膝立てた姿勢のショットにも挑戦することに。ちなみに小道具スタッフに聞いたところによると、このショートブーツ+ニーソックスの上に巻かれた脚絆(きゃはん)に仕込まれているのは手裏剣とは一味違う武器で“苦無(くない)”と呼ばれる忍者の道具だとか。こんなふうに小道具ひとつとっても、今回の撮影にはこだわりの品々が使われているのです。
「こんなに長い撮影、久しぶり〜!」と言いつつも、終始楽しそうだった蒼井さんにも撮影の感想を聞いてみました。

蒼井優

蒼井優

――新感線の舞台にはどんな印象をお持ちでしたか。
 私が見ている作品は特に、スカッと爽快で、手放しで「面白かったー!」って言いながら帰れる感じのものばかりでしたね。カキーン、シャキーンって入る音もすごく気持ちがいいなーって思っていました。

――そこにまさか自分が?と。
 ホント、そうですよ。ましてや、ロックミュージカルということなのでよけいに。だってミュージカルの『アニー』に出たことがあるということだけで、今回キャスティングされたみたいですけど。でも稽古が始まるまで、誰も私の歌を聞いたことがないはずなんですよね…(笑)。

――とはいえ、しっかり歌わされそうですよね。
 そうなんです。さっきちょっとデモテープで自分の歌う曲を聞きましたけど、とってもかわいらしい歌でした。降板させられないようになんとか、がんばります。実はこんなカッコしてる場合じゃないんですよ、早く帰って練習しないと!(笑)

――自主練習されますか(笑)。
 そうですね、お風呂場で歌っておこうと思います!

――アクションもありそうですか。
 アクションはあるにはあるんですけど、お銀はそんなには活躍はしないようなので。すぐつかまったりとか、ちょっと足手まといになるような役なんです。やたら威勢はいいんですけど、言うほどでもないという。

――稽古で楽しみにしていることは。
 高田聖子さんのぬか漬けを食べること。聖子さんと以前お仕事をさせていただいた時に、家で漬けたぬか漬けを毎日持ってきてくださって、それがすっごい美味しかったので。聖子さんとお仕事をした方はみんなあのぬか漬けを楽しみに稽古場に行かれているんじゃないかと思いますよ。

――では、本番で楽しみにしていることは。
 今回は誰が罰ゲームをやるのかなーってことですかね。

――誰がということは、ご自分ではないと。
 私は絶対に罰ゲームにはならないように、時間厳守で動きたいなと思っています。絶〜っ対にイヤです。だってヒドいですもん、新感線の罰ゲームは(笑)。

――そして、今日の撮影の感想はいかがでしたか。
 ちょっと恥ずかしかったです。あまりこういうメイクってしたことがないし。私、今ショートカットなので、長い髪のカツラをかぶるとちょっと変な気分になりました。男の人がロングのカツラをかぶるのと同じような感覚なんじゃないかな。

――メイクも、だいぶ印象が変わりますね。
 いや、こんなにメイクに時間かけたのも初めての経験です。1時間くらい目元をずーっとやっていましたからね。非常に芸術的です。かなり大きく描いてもらって、つけまつげもつけていただいたので、なんだかプチ整形したような気分です(笑)。あのいつもの新感線さんの凝ったパンフに、私も載るんだな〜と実感が湧きました。

蒼井優

文:田中里津子 撮影:田中亜紀



 続いて、劇団☆新感線にはこれが初参加となる三浦春馬さん。三浦さんがスタジオに現れ、深い青色のロングコートを颯爽とはおると当然のようにあちこちから「やっぱりカッコイイねえ!」「アニメのキャラクターみたい!」と声がかかります。そして今回は明智心九郎という“名探偵”のような役どころとなる三浦さん。
「そのコートをはおると“明智感”がグッと出るね!」と言われ早速、小道具として用意されている小ぶりの望遠鏡を覗いたり、虫メガネを持ったりしてはニコニコとなんだかうれしそう。

三浦春馬

 撮影前に河野さんがどんなカットを撮っていくかを説明する際、既に撮影済みの他のキャストの写真を参考までにモニターに映すと「すごいですねぇ、みなさんカッコイイなあ!」とワクワクした表情を見せる三浦さん。その笑顔を見ていると河野さんだけでなく、そばにいるスタッフもみんなついつい笑顔になってしまっています。

三浦春馬

撮影がスタートすると、いきなり「ハハハ!」とちょっとワルそうな顔で笑ってみせて「ちくしょー、なんだか本当にアガりますね!!」という三浦さんの姿を、モニター越しで見ていたいのうえさんも「その衣裳、すごくハマってるね。お客さんが春馬の登場シーンでキャー!って言う絵が浮かぶよ」と早くも満足げ。

三浦春馬

 ちなみに衣裳スタッフによると、三浦さんの衣裳のテーマカラーはブルーで、紋が入った水色の着物の生地は今回のために染めたオリジナル。トレンチコートのようなラインを生かしたこの上着は“京都所司代盗賊目付探偵方”という心九郎の役目を意識して、鎧のようにハードなイメージを入れつつもアクションで動いた時にきれいに裾が流れるような工夫もしているのだそう。よく見るとうっすらと浮かぶ柄もとてもきれいです。

三浦春馬

 続いて銃を構えるシーンでは三浦さんはもちろん、スタッフもそれぞれ試しに銃を持って構えてみては「意外に重い!」と口々に感想を。実際に持ってみると本当にずっしり。そこで、腕への負担軽減と銃口がブレるのを防ぐためにその場にあったスタンドを使うことに。なるほど、これなら腕がふるえることもなさそう。

三浦春馬

 さらに刀を使ってポーズをとる姿を見た河野さんが「もしかして殺陣、やったことある?」と聞くと「あります!」と答える三浦さん。「やっぱりね、うまいうまい」「決まってる!」とほめられると「ヤッター!」とまたしてもにっこり。そして、ここでも三浦さんの結んだ長い髪やコートの裾がきれいに流れて写るように、ブロワーで風が送られます。その後も、スローモーションで見えない相手を斬りまくる姿は完璧な美しさ。周囲のスタッフたちもため息まじりで見守ります。その後も刀をかつぐような仕草でポーズを決めたり、片膝で座るようにして構えてみたりとさまざまな姿勢で撮影は続きます。

三浦春馬

 続いて、コートの内側に探偵の七つ道具のような小道具の数々を仕込むことになり、衣裳スタッフや小道具スタッフが4人がかりで虫メガネや望遠鏡、筆と紙などをバランスよく配置していきます。「ジャーン!って開いてみて」と言われてコートを開く三浦さんに「いいじゃん、いいじゃん」と河野さんもノッてきた様子。「びゃーっと口を開けてみようか、「これでどうじゃー!」みたいな感じで」「次は口元だけでニヤリと笑って」「目線を落としてみて」とさまざまな指示が容赦なく飛び交っています。

三浦春馬

 満月をバックにした撮影でも、先ほどの探偵道具は大活躍。虫メガネで自分の手相を見て驚いてみたり、調書をとるように筆で何かを書きつける仕草をしたりしながら、ここではちょっとコミカルな表現も。とはいえ、バックの満月との微妙なバランスをとるために、ほんの少しずつの体重移動を要求されたり、ひたすらじーっと姿勢を固定しなければならなかったりするので、この撮影はなかなかハードなもの。やがて野波さんが手応えを感じた様子で「イケた!」と叫ぶと、モニターをチェックした河野さんからも「うん、いいねえ!」とOKが出てこのショットは撮影終了。三浦さんにも、新感線のビジュアル撮影を初体験した感想から伺ってみました。

三浦春馬


三浦春馬

――では、今日の撮影の感想から伺えますか。
 この撮影のことは、前からすごく楽しみにしていたんですよ。なぜかというと、新感線さんを観に行ったときには必ずパンフを見るんですけれど、いっつも本当にカッコイイので! あのパンフに今度は自分も載るんだと思ったら、なんだかゾクゾクします。それで今日、実際にやってみたら、とてもカッコよく仕立ててくれたのでもう、感無量です!

――手応え、バッチリでしたか。
 そうですね。途中、モニターで僕も見せてもらったんですけど、かなりカッコイイ写真が撮れていたんじゃないかなと思います。

――すごくうれしそうにモニターをご覧になっていましたね。
 はい。こういうメイクも今までしたことがなかったですし。だって今日、目のメイクに一体どのくらい時間を使ったんだ?っていうほどでしたからね。また新たな自分と出会えた気がして、感謝しています。だけどメイクでこんなに人の顔って変わるんですねえ。

――この衣裳も。
 すごく素敵だと思います。時代劇なのにブーツっていうところがいいですよね。南蛮のものを取り入れているっていうような。新感線さんのセンスをすごく感じます。

――その新感線に今回初めて出られることになって、最初はどう思われましたか。
 もちろん、いつかは立ってみたいなと思っていたので、すごくうれしかったです。だけどまさかこんなに早く立てるとは思っていなかったので、最初はとても驚きました。しかもこのシリーズに出られるとは! 五右衛門シリーズだと聞いた時にはすごく気持ちがアガりましたね。だって観ていていつも痛快な作品ですし。ファンのみなさんが本当に大好きなものに出られるなんて、やっぱりすごくうれしいですよ。歌って踊って、激しいアクションもできますしね。今から、自分が立ち回りしているところを想像しちゃいます。とっても楽しみです(笑)。

――明智心九郎というキャラクターについてはいかがですか。
 口を開けば全部、説明ゼリフというような難しい役をいただきました(笑)。彼は頭も切れれば身体も動ける、そしてミステリアスな部分も持ち合わせているという、とても魅力的な男だと思っています。

三浦春馬


文:田中里津子 撮影:田中亜紀



 12月の本番に向けて、稽古はもちろん、いろいろなものが着々と進行している『ZIPANG PUNK〜五右衛門ロックIII』ですが、毎度のことながら凝りまくったパンフレットの作成も順調にスタートしています。今回も手間をかけ、時間をかけて、カッコよく、美しく、オモシロい写真満載の逸品になるようにスタッフ一同全力を尽くしている真っ最中です。

 そこで今回は特別に、メインキャスト10名のビジュアル撮影の模様をレポート! キャストとスタッフの努力の結晶のほんの一部をご紹介します!!

 まずはいきなり主役の登場!ということで、石川五右衛門を演じる古田新太さんの撮影の様子からお送りしましょう。

古田新太

 メイクと衣裳の下準備が終わり、スタジオのフロアに現れるやいなや「音楽を古ちん仕様にしようぜ!」と自らのiPodを音源に接続する古田さん。ふだん聴いている曲が“シャッフル”で流れるようにセットすると、ロックはもちろん、時折、ムード歌謡や演歌も飛び出すというラインナップにその場にいるスタッフたちは興味津々、本人はノリノリ。
 そして本人いわく「布団のような」、おなじみ“綿入れ”のごときスタイルの衣裳を身にまとい、例の巨大なカツラをかぶれば、2年ぶりの五右衛門復活!です。今回は目にも鮮やかな真っ黄色の衣裳ですが、よーく見るとあちこちに文字が。「絶景かな〜」とあるところを見ると、どうやら石川五右衛門の名台詞の数々のようです。さらに鋲付きの首輪や腕輪、胸元や右手首には刺青…今回もなかなかのド迫力。とおそらく皆が思っていると、当の古田さんが絶妙なタイミングでぼそっと一言、「こんなヤツぁ、いねーよ!」。スタジオは大爆笑。

古田新太

古田新太

古田新太

 今回のパンフレットもアートディレクターは河野真一さん、カメラマンは野波浩さんとおなじみのスタッフワークで取り組んでいます。河野さんが「その着物で、相撲みたいにシコ踏める?」と聞くと、古田さんは「大丈夫! 何年、この衣裳を着てると思ってるの!」と笑顔で即答。小道具担当の高橋岳蔵さんがピンポン玉を利用した数珠風首飾りを古田さんに合わせた長さで装着し終わると、「この格好で東京ガールズコレクションに出る!」と宣言する古田さんに「それ、ええなあー!」とスタッフ一同も即、同意。さて、いよいよ撮影開始です。

古田新太  
 まだ始まったばかりでも「暑い…」とボヤく古田さんのために今回はスタジオ内に大きめの扇風機が用意され、撮影に支障がないように工夫をしながら風が送られます。古田さんも自ら胸元を広げたりして刺青がチラリと見えるように気遣いつつ、キセルを構えてガッと口を開けたり、歯を食いしばったりとシャッター音が響くたびに表情に変化をつけていきます。

古田新太

 仁王立ちの次は高下駄は脱ぎ、台の上で腰を下ろして今度は刀も小道具に使って姿勢を固定します。野波さんに「ちょっとシンドいかもしれないけど…」と前置きされつつ、微妙に身体をひねった座り姿勢に挑戦する古田さん。見た目は確かにカッコイイのですが、これはじわじわと腰にきそう…。そんな中でも「ちょっとニヤリと笑って!」「もっと見下した感じの目で!」など河野さんや野波さんから出る注文に、1ショットずつ反応していきます。それをモニターでチェックするスタッフ一同からも「うーん、やっぱりかっこいい!」と声がかかります。

古田新太

 今回はこの全身カットの他に、スタイリッシュなカットや各キャストの意外な表情が楽しめるオモシロ写真など、バリエーション豊かな撮影が行われており、撮影時間はキャストによりまちまちですが短くても4時間以上、長い人だと7時間越えというハードな撮影になっています。長時間の撮影を終えた古田さんに、感想を聞いてみました。

古田新太

――まずは今日の大変だった撮影の感想から伺いたいのですが。
  今日は扇風機が回っていたので、今までの五右衛門よりはラクにできましたね。その代わり、目が乾いて実は涙が止まらなかった。でもそれよりも汗をかくほうがツライんですよ。だから第1弾のころから扇風機があればよかったのに!と思いましたね。

――今回の衣裳に関しては。
  暑いですよ、相変わらず。そしてカツラは当社比1.2倍なので、とうとう刀が頭上で回せなくなりました。だから今回の立ち回りはきっと地味になると思います(笑)。まあ、本番はこのカツラのままかどうかわからないけど。おそらく重さを減らすために本番用はかなり間引いてくれるはずですけどね。この撮影用のカツラのままでターンをきると、首が取れそうになっちゃうからね。

――かなり重いんですね。
  本当に重いです。疑うんなら、あとで実際に持ってみてください(笑)。でも衣裳のほうは今回、かなり軽量化されました。この帯は合皮ですけど中味をウレタンにしてくれたので、これでもだいぶ軽くなりましたね。まあ、でも綿入れ部分の分厚さはこれまでと一緒なので、保温力は抜群です。どうせなら、この後ある別件の寒いロケ撮影の時に、これを着ていけたらいいんですけどねえ。

――今回も野波さんの指示はとても細かい様子でしたけど。
  はい。立て膝の姿勢が一番しんどかったですね。この衣裳では身体をひねったりするのがなかなかできないんで。腹筋とお尻の筋肉が一回つりました。でもまあ、それでカッコいい写真になるんだからいいんですけどね。

――ちなみに今回、また五右衛門シリーズをやると聞いて古田さんはどう思われました?
「別にいいよー」って思いました。案の定、今回もこれだけにぎやかなゲストになったし、非常に楽しそうですよね。初共演は村井さんと春馬くらいかな。麿さんは映画で一緒だったし、優はドラマで一緒になったし。だけど以前から春馬や優とはちょくちょくメシに行ったりしていたので、べつだんなんの心配もしていません。

――台本を読んだご感想はいかがでしたか。
 「説明ゼリフが多いなあー」って(笑)。だけどその説明ゼリフをほとんど春馬が言ってくれるので「こいつは助かったぜ!」って思いました。オイラは「その通りだ」とか「俺もそう思っていた」とかそんな感じですみそうなので、その点は良かったんだけどなぜか戦うシーンも多少あるんでイヤなんですよね。オイラは平和主義者なので戦うのは嫌いなんですよ。

――五右衛門シリーズを振り返ってみて、改めて思うことは?
 五右衛門シリーズは生バンドなので、その点はやる側も非常に楽しいです。それにテーマ曲も冠(徹弥)や教祖(イコマノリユキ)がメインで歌ってくれるのでオイラはラクですし。オイラたちは、いわゆる大阪弁で言う“ほたえて”いればいい話ですからね。

――ほたえて、とは?
 “調子に乗って暴れる”という意味です(笑)。

――本番に向けて、特に楽しみにしていることはなんですか。
  なるべくみんなと飲みに行けるように努力したいと思うんですが、オイラの体力がもつかどうかですね。優も春馬も飲めるんでそこらへんはうれしいんですけど、まあ、とりあえず酒の席のことは今回は由美子がいるんで大丈夫かな。たまに村井さんにおごってもらえたらいいですけど、でも村井さんはお酒飲まないんだよね。麿さんは少々たしなむくらいか。でもまあ由美子がいるから、どんな状況でもきっと大丈夫でしょう!(笑)

古田新太

古田新太


文:田中里津子 撮影:田中亜紀




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