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 国内有数の豚肉産地である千葉県北東部の養豚場から、豚が盗まれる事件が相次いでいる。いずれも10頭以上が盗まれ、県警は豚の扱いに慣れた人物が関与した疑いが強いとみて捜査。産地では今春以降、「豚流行性下痢(PED)」の流行によって子豚が減少、出荷価格が上がっており、転売目的などとの見方も出ている。

 田畑が広がる東庄町小座。養豚場を経営する高橋悦子さん(52)は14日朝、掃除したはずの出荷用の台が、豚のフンや尿で汚れているのを発見した。豚舎を見ると、繁殖用に買ったばかりのメス豚13頭(約130万円相当)が盗まれていた。来夏にはそれぞれ10頭程度を産む予定で、高橋さんは「これから価値が出るのに」と肩を落とした。

 周辺では高橋さん方を含め、先月から盗難が3件続いている。

 県警によると、1件目の発覚は6月23日。東庄町内の別の養豚場で出荷直前の豚約20頭(約100万円相当)が盗まれた。今月11日には隣の旭市内でやはり出荷を控えた18頭(約90万円相当)が盗まれたことが発覚。次いで分かったのが、14日の高橋さん方だった。

 調べでは、いずれも通常よりも価値が高かったり、これから価値が出たりする豚ばかり。また、豚が通ったことを示すフンが、豚舎に併設の出荷台に散乱していた。県警は出荷台からトラックなどに積まれて盗まれた可能性が高いとみる。

 とはいえ、高橋さんが盗まれた豚の体重は約120キロ。豚舎から出し、出荷台まで約50メートルの通路を歩かせるのは容易ではない。

 高橋さんの養豚場では、子豚10頭余りをトラックに積み込むのも、3人がかりだ。キーキーと鳴いて逃げ惑う豚の背中を手や棒でたたき、荷台に押し込む。体重40キロでも、てこずっていた。

 捜査関係者は豚の扱いに手慣れた人物の関与を指摘する。「素人には出荷可能な状態に育った豚や繁殖用の豚の見分けは付かない。100キロを超す豚を出荷台まで誘導するのも難しい。プロが関与している可能性がある」