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■特派員リポート 石田耕一郎(瀋陽支局長)

 今年は戦後2回目の「甲午」の年。中国メディアで目にする表現だ。ここでの「戦後」は、今から120年前の日清戦争を指す。発生した1894年の干支(えと)から中国では「甲午戦争」と呼ばれ、今年は60年で一回りの記念年にあたる。対日関係が冷え込む中、「尖閣諸島は日清戦争を通じて日本にかすめ取られた」と主張している中国政府は、どんな行動に出てくるのか。恐る恐る取材を始めると、かつて見た尖閣国有化をめぐる反日デモとは異なる後味の悪さを残すものだった。

 まことに小さな国が、開花期を迎えようとしている――という印象的な書き出しで知られる司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」。司馬さんは同書で、日清戦争を「善でも悪でもなく、(中略)日本という国家の成長の度あいの問題としてこのことを考えてゆかねばならない」と記した。政権末期の清に勝利した日本は、台湾や周辺の島々を割譲させ、多額の賠償金を得て帝国主義列強の仲間入りし、アジアの強国に躍り出た。そして、第2次大戦の悲劇をもたらす「軍事力への過信」と「他国に対する不遜さ」も身につけてしまった。

 その「開花期の日本」を軽視したことから大敗した中国は今、この侵略戦争をどうとらえているのか。