気になる記事があったから言及しておきたい。
この記事を見て僕も「あ、そういうことか」と気づきがあったからこの記事のもう一歩先を書いてみたい。
音楽業界の衰退について元記事では
・Youtubeにやられた説
・ダンスや振り付けがついたものが主流になったから
・若者の車離れでCD聞く時間が減った(車の中を盛り上げる必要がなくなった)から
という要因が挙げられている。今回はそれを読んでいて僕が気づいた話から。
- 知らない音楽を聞かせる場所が減った
読んでいて気づいたが「車離れ=CD離れ」なら、同時に「車離れ=ラジオ離れ」でもある。ラジオなんかCDやラジオのプレーヤーを買わなくなった現在では車でのほうが聞くんだから。
「ラジオ」というメディアは音楽業界にとってかなり重要なプラットフォームで、どの時間でも音楽を流してくれる枠があるため、興味が無い人に流行りの音楽を聞かせる数少ないチャンスが「ラジオ」だ。
ラジオをよく聞いていた(聞くと想定されていた)主な層としては
・ドライバー(自家用車/業務用車両問わず)
・主婦(一部主夫も含む)
・受験生/中高生
なんだけど…この中でも特に離れているのが自家用車のドライバーと中高生だ。
裏付けの意味合いも込めてこんな話をしたい。
10代~40代がカラオケで歌う曲の中で急増しているのがアニソンやボーカロイドで、それらのジャンルを除いたJ-popのランキングを見ると僕が「懐かしい」と感じるようなアーティストの名前が並んでいたりする。
浜崎あゆみとか、ポルノグラフィティとか一青窈とか…僕が子どもの頃から聞いてたようなアーティストがカラオケランキングだと未だに現役で入れ替わってない。
カラオケという娯楽があって、ちゃんとネット発でブームした音楽は商品化されたりしてることから「音楽そのものから人が、若者が離れた」というわけではない。
しかし、カラオケに行っても「僕が子どもの頃から話題のアーティストが現役で、更にEXILEやGReeeeNのように高校生の頃からいた人までしかカラオケランキングや前の人の履歴にない」ということだ。
大学出てけっこう経過してるはずなのに、大学出る前と流行があんまり変わってないんだよ!カラオケには影響は少ないが、AKB48が入ったことを除けばほとんどカラオケで歌われるポップスの流行は変わってない!
どうしてこうなったかというと「流行が上書きされなくなったから」だ。
かつては「音楽番組」だけではなく、「ラジオ」が若者の流行をかなりの頻度で上書きしてた。音楽番組は興味がある人しか見ないのに対し、ラジオは受験生が音楽に興味がなくても聞いてるのがとても良い!
アニソンが未だに話題になり続けるが、アニソンを聞くオタクは声優やアニメに興味はあるかもしれないが、別に音楽家目当てではない。(ヘタするとアニメの曲を歌ってくれるまでは知らない…なんてことも)
それでも、自分の見るアニメの曲だと聞く。特にアバンがある場合は確実に音楽もセットで見る。
アニソンが流行る要因の1つは「音楽を探さない人に音楽を売り込んで行くことができるから」で、ラジオも音楽を宣伝するという意味では同じような機能を持つし、映画館から人が離れたことも少なからず痛手になっていると思う。
音楽や特定のアーティストに「特別な思い入れがない人をどう抱き込んでいくか」がかつての邦楽・J-popのブームを支えていたが、今はコレがごっそりと機能しなくなった。
高度に色んなメディアやエンタメと協力しあって、音楽は生きてきたのにそれが一極集中になったことで音楽で食べていく、新しく音楽をブームさせることが極端に難しくなった。
- ネットを邪険にしたという自殺行為/小林幸子の狙い
「だったら、音楽のプラットフォームをもっと積極的に人通りが多い場所に作ればいいじゃないか!」
と思うでしょ?そういうことをわかってるネット出身の音楽家やアニソンを手がけた経験のある人はニコ動にPVを上げている。
たしかに、ネットに上げてしまうことで「mp3に変換して保存すれば」「いや、そもそも持ち歩かなくていいや」とお金にならなくなってしまうリスクはある。
でも、それ以前に新しく音楽を聞かせる場所がなくなった今、PVがある曲だけでも上げないと宣伝基地さえ確保できない。
Youtubeではなく、ニコ動とかいた理由はランキングや新着動画をジャンルにかかわらず気にかける「フリーク」が存在するから。特にランキングに関連する「フリーク」は多いんじゃないかな?
JASRACが主だけど、音楽業界各社もこの「動画サイトをプラットフォームとして活用すること」にとても否定的だった。(それどころか、JASRACの対応はJ-popを「触ると傷つく腫れ物」に変えてしまった。そのことが権利関係で揉めにくいボーカロイドや東方の曲、あるいはゲーム音楽やフリー素材に流行がシフトしていく大きな要因になったことはネットの中では有名なお話)
一方で、権利を管理する側よりもアグレッシブだったのが、音楽家の方。
具体例では、70歳を過ぎた作曲家が実はボーカロイドで作曲してたことや大御所の小林幸子さんがコミケに出てくることも話題になった。(その他にも「プロの犯行」と呼ばれる和楽器のセッション動画やピアノ奏者のコラボ動画なども幾つか話題になってる)
コミケにガチガチの大御所が出てくることに懸念を示す人もいて、僕自身も小林幸子さんのファン層とコミケの親和性は最低だろう。
ただ、小林幸子さんの熱意はわかります!
彼女はポケモンやしんちゃんなど数々のアニソンを手がけてきたし、ニコ動での活動歴もある。ネットというプラットフォームを理解しようとアレコレ試行錯誤している人であることはよく知られていて、付け焼き刃の媚びへつらいではない。
コミケまで来る必要があったか、企業ブースではなくサークルで参加する必要があったのか?はとても疑問だが、先細って行くばかりの宣伝拠点から新しい拠点を確保する・モデルを作ることに積極的なのはとても興味深い。
僕は音楽よりもコミケの存続と自由を応援してるから小林幸子さんを応援しない。でも、動向は気になるし、今後も目が離せない話の1つだろうね。
最近、面白かったのは椎名林檎のNIPPONという曲で「PVを前半・後半に区切ってアップロードする」というやり方。前半と後半の間にハーフタイムが入ったPVしかネットでは見られない…という小粋で憎い演出をかけてアップされてるのが斬新で面白かった。
ちなみに、椎名林檎関連のネットの使い方は面白くて、YouTubeでPV付きの曲は消されないんだけど、ニコ動にはPVのある楽曲も消されちゃって演奏してみたしかないの。(CDに入ってる曲の不法アップはどちらのサイトでも削除される)
その代わりに、林檎自らの裏話を公式から上げてるほか、YouTubeでもニコ動でもなぜかそういう番組系・対談モノはほとんど削除されてない。…という不思議な基準で運用されてる。どこまでを意図的にやってるのかは知らないけど、面白い!