Updated: Tokyo  2014/07/25 21:08  |  New York  2014/07/25 08:08  |  London  2014/07/25 13:08
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河野元衆院議長:第二次大戦への日本の反省は不十分-インタビュー

  7月24日(ブルームバーグ):河野洋平元衆院議長は日本の第二次世界大戦への反省は不十分だとの考えを示した。昨年12月に靖国神社へ参拝した安倍晋三首相の下で、日本全体が右傾化の傾向にあるとも見ている。
河野氏は22日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで語った。第2次世界大戦をめぐり、日本の謝罪は十分だったかとの質問に対して、「不十分だ」と回答。「つらい思いをした人が『これで十分だ』と言っていない」ことを理由に挙げ、反省やおわびを脇に置いて行動を起こそうとしても「被害を受けた人が納得するはずがない」と語った。
同氏は宮沢喜一内閣の官房長官だった1993年に慰安婦問題への旧日本軍の関与を認めた談話を発表した。安倍政権は有識者チームを設置して談話作成の経緯を検証。6月20日に発表した報告書で韓国政府との事前調整があったとする結果を公表し、韓国はこれに反発している。
テンプル大学(東京)のアジア研究ディレクター、ジェフ・キングストン氏は、日本は何度も何度も謝罪してきたが、十分ではないために謝罪を続け、悔い改める姿勢を示す必要に迫られている、と指摘。その謝罪の言葉もあいまいな表現になりがちで個別の行為に触れていないために被害者は納得していない、と分析している。
河野氏は6月20日、慰安婦に関する自らの談話への検証結果についてコメントを発表。「当時いわゆる慰安婦と呼ばれた人たちが総じて自らの意思に反して働かされたということに対して申し訳ないという日本人の気持ちが、今も変わってはいないと思っている」と表明。日韓関係の一日も早い改善を「切に願っている」と述べた。インタビューでは、慰安婦問題に関する直接的なコメントは控えた。
安倍政権
河野氏は神奈川県出身の77歳。早稲田大学政治経済学部卒業後、商社勤務などを経て、1967年の衆院選挙で初当選。14期連続当選し、自民党総裁や副総理、外相、衆院議長などを歴任。2009年の衆院解散を機に議員を引退した。
自民党内では軍事力の拡大に慎重なハト派の代表的存在だった河野氏。戦後の日本は「海外で武力行使はしない、あるいは平和に徹することを国の基本にしてきた」と話し、安倍政権が閣議決定した集団的自衛権の行使を容認する考え方については「反対」と述べた。
安倍政権が武器輸出を禁止してきた原則を見直したことについては、「まったく反対。軍事産業が直接日本の政治に影響力を持つようなことは絶対あってはいけない」と批判した。原則見直しを求めてきた経済界に対しては「モラルというか、あるいは世界の平和というか、そういうものを考えるべきだ」と指摘した。
右傾化
河野氏は、「国全体が右へ傾斜しかけている」と話す。自民党が「右寄り」の議員がリードする体制になったことと、自民党よりも右側の主張をする政党や議員が多数出てきたことを挙げ、「こんなことはいまだかつてないこと」と指摘。その理由として「国のリーダーの姿勢、主張」が国政選挙に立候補する政治家一人ひとりに影響を与えているとみている。
安倍首相が昨年12月に靖国神社を参拝したことについては「まったく評価しない。今やるべきでないことをやっている」と批判。「自分がしたいと思っていても、それが国家にとって良いことであるか悪いことであるかということの分別は本人がつけるべきだ、と安倍さんに言わなければいけない」と語った。
安倍政権の内閣支持率は、1日に集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を閣議決定して以降、下落傾向にある。共同通信社が1、2の両日実施した世論調査によると、内閣支持率は47.8%で、6月の前回調査から4.3ポイント低下。13日の滋賀県知事選では与党が推薦した候補が民主党の元衆院議員に敗れた。
河野氏は安倍政権への支持率は今後さらに下落すると予測し、10、11月に予定されている福島、沖縄両県知事選についても「なかなか大変な選挙だろう」との見通しを示した。
河野談話
河野氏が1993年8月4日に発表した官房長官談話は、慰安婦について「本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、さらに、官憲等が直接これに加担したこともあった」と指摘。元慰安婦に対し、お詫びと反省の気持ちを表明した。同日の記者会見で河野氏は、強制連行について問われ、「そういう事実があったと。結構です」と語った。
日本側は「女性のためのアジア平和国民基金」を設立。国家補償ではなく、民間から集めた募金から元慰安婦に「償い金」を支給する事業を実施した。有識者チームの報告書によると、韓国のメディアや元慰安婦支援団体はこれに反対した。
その後も慰安婦像が米国などに設置され、韓国の朴槿恵大統領が各国との首脳会談で提起するなどして、政治問題化。日本は談話作成の過程を検証し、強制連行を示す資料がなかったことや、事前に韓国政府と調整して談話を作成したことを明らかにした。
談話の検証を要求してきた「次世代の党」の山田宏衆議院議員は、14日の衆院予算員会で、「これまでの談話は強制連行を確認できなかったということを前提に作られた」と指摘。記者会見で河野氏が強制連行の事実を認めたことに触れ、「なぜ本人の意思で『あった』ということが言えるのか。これは本人に聞かなければ分からない」として河野氏を参考人招致するように求めている。
朴大統領は日本が河野談話の検証作業を実施する方針を示した後の3月、独立記念日の講演で、河野談話について「日本の過去に対する反省の上に立っており、未来志向の日韓関係にするものだ」と評価。その上で、「歴史を否定する国は国際的な孤立を招くだけだ」と警告した。
安倍首相は3月の衆院本会議で、慰安婦問題について、「辛い思いをされた方々のことを思い、非常に心が痛む」とし、「安倍内閣で見直すことは考えていない」と明言。「歴史問題は政治、外交問題化されるべきものではない」とも話した。
韓国大統領スポークスマンによると、朴大統領は25日にソウルでの舛添要一東京都知事との会談を準備している。菅義偉官房長官は24日午前の記者会見で、日韓の間には難しい問題があるものの、「さまざまなレベルで緊密な意思疎通を図っていく、このことが極めて大事」と語った。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 高橋舞子 mtakahashi61@bloomberg.net;東京 アンディ・シャープ asharp5@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:大久保義人 yokubo1@bloomberg.net;Andrew Davis abdavis@bloomberg.net広川高史, 淡路毅
更新日時: 2014/07/24 12:04 JST

 
 
 
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