火薬と鋼

2014-07-09

武術動画とその反響について

最近話題の長尺の刀の抜刀の動画について。

先の修武堂の方の林崎新夢想流居合の動画と同様に天心流兵法の方の動画に関しても関連情報と反応を川村氏がまとめている。


林崎新夢想流居合に関するまとめ - NAVER まとめ

天心流兵法の三尺刀抜刀についての反響 - NAVER まとめ


いわゆる「バズる」という点で見ると天心流の動画のほうがバズっている。これは恐らく動画に登場している方のキャラクター性というものの力ではないかと思う。

それにしてもただ話題になることだけが目標ではないと思うので、今回の両者の反応をどう評価するのかは難しいところだと思う。話題になるだけなら猫の動画の人気作のほうがよほどバズるわけで(猫が稽古を見守る道場があったら大きな反響があると思う)、武術は猫にはなかなか勝てない。これが『猫の妙術』か(多分違う)。


特定の流派の知名度やイメージを向上させる際、派手に普及させたいのであれば先例はあるが、流派や団体の維持・存続あたりを目標とするとまた戦略が変わるのではないだろうか。

ただ、実際に入門する人につながらないにしても世間一般のイメージというのも大事で、変なイメージがつかないように知名度を上げるのは、それなりに難儀な話だと思う。

私は、格闘技全般に詳しくない人から格闘技のイメージや知識について聞くことがある。話を聞くとテレビの影響が強く、特に年齢が上がると過去のテレビ番組の印象が年月を経ても残っている。この結果、かつてのテレビ番組でデモンストレーションとして登場した「合気道は手を触れずに気合で相手を転がす」「空手は瓦や板を割る」といったイメージがついている。各団体や流派の違いはほとんど認識されない。

同種の格闘技・武術のイメージは他の団体や流派のイメージや認知にも影響を与える。今回の二つの動画も、広まっていく過程でやがてどちらも単に居合とだけ認識されていくのではないだろうか。

要するに特定の流派や団体、個人のPR活動は、入門希望者や関係者にはそれなりに個別性を帯びているが、やがて広く薄く剣術とか居合とか、大きなくくりのイメージに回収されていく。他所が作ったイメージについて良くも悪くも引き受けていくことになる。

一方、昔と違って流派や団体の看板となるWebサイトやブログ、SNS、他の動画といったものがあるので、漠然としたイメージから個別性を呼び起こす機会は増えた。この場合の問題は、外部の人が求めるような情報や良い印象をもたらすデザインを提供しているかどうかで、この点は個々の工夫にかかっている(あまりSEO対策を頑張りすぎると今度はうさんくさくなるという問題もある)。

動画についても撮影場所や機材、撮影技術によって見る人に与える印象は大きく変わるが、そこまでコストをかけられる所ばかりでもないだろう。


まとめ。

猫には勝てない。

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