スタンス

江原啓之関係のフジの番組企画に対してBPOが意見を表明して大分経つ今日この頃、細木数子はテレビからは身を引くみたいだけど、当の江原はまだやってますね。
公式HPではテレビ局側に非があって、江原は被害者みたいな書き方をした文章が掲載されたらしいですが(既に公開されていた文章は見られなくなっています)、正直どっちもどっちで、同様に加害者であるとわしは思っています。
 
テレビ業界がこういったオカルト関係に対して自戒しているかといえば、最近では「預言者」ことジュセリーノがわざわざ海外から呼び出されてたりと、変わる気配は一向に見えない。
で、ジュセリーノ。今回はテレビ東京で高橋英樹が司会を務める特番が組まれていた。仕事を選んでくれ、高橋英樹。ああいうがっちりとしたかっこよさを持つ人が超能力者を持ち上げてる姿は本気度」がやたらと感じられて痛々しい
ジュセリーノは今回も大活躍で言いたい放題。2008年は日本の最高気温が大幅に更新されて43~45℃になるとか、デング熱が大流行するだとか、植物「ルアナー」(正体不明、ブラジル産)からエイズワクチンが取れるだとかであるコイツは日本に恨みでもあるのか?

もちろんこれらの妄言が予言扱いされるには、これまでに予言が当たったということが重要である。それがなければ単なる「残念な人」だ。そしてその証明において嘘やインチキがあれば「嘘吐き」、それによって利益を上げるとなると「詐欺師」に格上げとなるだろう。
そして今回ジュセリーノの予言の証明で挙げられたエピソードは「16年前に阪神淡路大震災を予言してた」とか、「小惑星アポフィスが地球に接近することが予言されてた」とかである。まあ、この辺のジュセリーノの予言をその証明方法のいい加減さは以前の記事で書いてあるので深くは取り上げない。要するに今までどおりの与太話である。
 
で、この番組をみてて気づいたことは、番組の中で重視されているのは実はジュセリーノではない、ということである。
 
この番組、ジュセリーノの予言がありがたい!というよりも、その内容のほうが詳しく(時にはその分野の専門家の意見も交えて)述べられているのだ。まあ、2時間という放送時間に対して予言の絶対数が少なければ、何かで分量を水増ししないといけないのは当然だが、それならそれで、これまでの与太話のエピソードをたくさん取り上げればいいようなものである。楽だし。しかし、そうはしていない。
地球温暖とそれによる気候区分と伝染病の変化など、要は環境問題がメインなのだが、それらに対しての警告を促すというのが本来の番組の目的で、所詮ジュセリーノは客寄せの珍獣に過ぎない。話の取っ掛かりを作るため小話の扱いだろう。
ジュセリーノがマジで予言者だと考えているなら、いまさら伝染病や植物、気象などの専門家達の意見など紹介する必要などないのだ。予言が絶対視できるほどのものならそんな意見など必要ないだろう。
テレビ局のスタンスは「環境問題への警告を促すこと」が目的で、「ジュセリーノとかいうブラジル人がぬかしていることの真偽は重要ではない」というのが正直なところだろうし、「環境問題への警鐘」という大義名分が立っている以上、それを伝えるための手立てがいかなるものだろうとかまわないのだろう。
 
目的が正当であれば、そのための手段はいかなるものでもいい、という考えといっていいだろう。もしも「目的」すら第三者から見て正当でなかったとき、それは身勝手な犯罪になることだろうが。
江原啓之は守護霊やオーラなど証明できないものの実在を説いているが、その説話(?)の中では道徳的にいい事を言っているのだし問題がないとか、「水はなんでも知っている」は道徳的にいっていることがいいので、氷の結晶についてでたらめであってもいい、といった結論に至っている人は多いと思う(特に江原)。しかし、多くの人の目に触れる時間帯での番組に「なんでもあり」で情報を垂れ流すことは避けるべきだろう。「手段」として利用されている情報(霊の実在など)が目的たる情報(倫理的な教訓)と等価に受け止められる可能性がある。特にゴールデンでは子供が受ける影響が懸念される。
去年、香川県で起きた祖母と孫二人が行方不明(後に遺体として発見された)事件において、子供二人の父親、女性の息子である男性をみのもんたが彼がさも事件の犯人であるかのように扱ったことが問題となったが、あれはいわば「目的」が正当でなかった例としてあげることが出来るだろう。彼が犯人であろうというテレビ(あるいはみの)の予見を伝える「目的」のために、番組内でみのが男性の事件当日の行動の不整合さを際立たせていぶかしむという「手段」をとったのである。テレビに確たる証拠や情報はない、印象操作で彼を犯人扱いしたのだ。テレビが「目的」を見誤ることなど決してありえない話ではないのだ。
 
言論の自由の重要性を考えると、オカルト番組を全て放送禁止にしろとはいえない。わしも「バカなこといってんなー」と楽しむことが出来なくなるし。
下手に道徳観に訴えたりする番組よりも、むしろピンからキリまで嘘、バカ話と割り切れる番組のほうが健全なのかもしれない。そういう意味で矢追純一の番組よりも江原啓之の番組のほうが悪質だろう。
 
おまけ――
たとえば親が、江原の発言の倫理に関する部分にだけ注目して「この番組みなさい」と子供に勧めたとき、子供は親の望むとおり倫理的な部分だけを見てくれるとは限らないのである。もしかしたら倫理的な話は難しくてよく分からないけど、霊的な存在の実在を説く部分のほうなら分かりやすい(単に「いる」「いない」で割り切れるからね)、ということになってしまうかもしれないのだ。子供が自分のいいと思った情報だけを取捨選択する、というのは希望的観測にすぎないのだ。
もしも江原の道徳話だけを子供に聞かせたい、学ばせたい、と思うなら、「このデブのおじさん、幽霊がいるとかオーラが見えるとか、痛いこと言っているけど、家族大切にしようとか、近所の人と仲良くしましょうとか、そういった部分でなら言っていることは正しいからそこだけを聞いて、後はハナクソでもほじりながら無視でいいわよ」と説明する必要性が親にはあるだろう。そこまでする?
まあ霊の話もマジだと思ってんなら、省いていいけど。
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