「おーい!」
「みどりちゃん!」
こんにちは。暇な女子大生です。
と言っても、もう大学生ではありません。定職に就くわけでもなく気の向くままにフラフラしています。
「かんぱーい!」
みどり「久しぶりだよね……元気だった?」
みどりちゃんは私の大学時代の友人で、長く苦しい就職活動ののちにブラック気味の企業に入社したサッカー好きの女の子。その日はお互い秋葉原に用事があったので落ち合うことにしました。
みどり「ところでさ・・・」
「なんでメイド服着てるの・・・?」
暇「秋葉原と言えばメイド服っしょ!もうメイド服しかないっしょ!」
みどり「まあ、別にいいんだけどさ・・・」
久しぶりに会う友人とはフィッシュ・アンド・チップスを分け合おう
暇「最近どう?会社」
みどり「早く辞めちゃいたいよ~本当に憂鬱」
みどりちゃんはほぼ毎週休日出勤をさせられているらしい。
みどり「会社がイヤだから毎晩誰かと飲んでるんだ・・・」
暇「まあまあ今日は嫌なことなんか忘れちゃおうよ」
バッファローチキンとピッツァマルゲリータでパーリーナイトの幕明けさ。
みどり「この歳になってくるとさあ、だんだん周りの女子たちが結婚を見据えて恋愛相手を選び出すわけよ」
暇「うんうん」
うっすら浮かぶ「トライアゲイン」の文字が切ない
みどり「あたしの場合、結婚したいとか一つも思えないんだよね…だってさ、絶対独身の方が楽しいし気楽じゃん」
暇「わかる~」
暇「結婚しても、浮気とか不倫とか平気でする人いるもんね。何が幸せかよく分かんないよね」
みどり「世知辛いねえ・・・」
みどり「あんたも既婚者には気をつけなよ……ねえ、聞いてる?」
わたしはみどりちゃんの後ろを通ったカッコいい成人男性が自分たちのテーブルの二つ先に座ったのをすかさずチェックした。誰かと待ち合わせするでもなく1人で飲んでいるようだった。
暇「ちょっとあの人に声かけてきていいかなあ」
みどり「へっ」
立ち上がり、周りにいる男性客の視線を感じながらも私はゆっくりとターゲットのもとへ近づいて行った。
「すみませーん」
「私たち女ふたりで飲んでるんですけど…よかったら一緒に飲みませんか?」
「・・・なんで?」
「いや・・・なんとなく・・・」
「・・・」
暇「一応・・・ナンパしてるつもりです」
「嫌ならいいんですけど・・・」
「あ・・・じゃあ、行こうかな・・・」
おにいさんが我々のテーブルに加わった。
暇「おにいさんは彼女とかいるんですか?」
おにい「うん。もうすぐ結婚するんだ」
「へえ~やっぱりぃ。おにいさんカッコいいからなぁ」
おにい「もうオレ、30だからねえ」
みどり「結婚を意識し始めるのって何歳からなんですか」
おにい「28くらいかなあ。親からの『早く結婚しろ』圧力も高まるし、相手の女性の出産のことも考えると早い方がいいかなってね……」
暇「じゃあ私たちもその年齢になれば結婚したくなるのかなあ」
おにい「そうかもね」
おにい「30なんてあっという間だよ。20代はすぐに終わっちゃう」
「20代のうちにやっておいた方がいいことってありますか?」
「うーん、もっと馬鹿なことをたくさんやっておけばよかったな~って思う」
「大学時代、本当に何もしなくてつまらない生活だったから、その反動でここ何年かハチャメチャなことをやってる。でも大人になってから変なことすると痛い人になっちゃうから、馬鹿なことするなら若いうちの方がいいね」
暇「エッチなこともいっぱいやったんですか?」
「あ~やったねえ。うん、やったやった」
みどり「どこで女の人を捕まえるの?」
おにい「コスプレイベントかな・・・」
「えっ」
「実はオレ・・・元コスプレイヤーなんだ」
「えええええええええ!!!!」
おにいさんはガッチガチのコスプレイヤーだった。
おにい「イベントで出会ってその日にどうこうするとかじゃなくて、名刺を交換しておいて後日デートして・・・っていうパターンが多いね」
みどり「コスプレイヤーって名刺とか持ってるんだ?」
おにい「君たちそんなことも知らないのか?」
「ごめんなさい・・・」
おにい「コスプレのイベントに行くときはな、主人公とか、二番目に人気のキャラのコスプレで行っても無駄だ」
英国風パブでコスプレについて熱く語るおにい
「主役級の人気キャラは大御所コスプレイヤーのものなんだ。だから有名じゃないレイヤー(コスプレイヤーの略称)が今更やっても誰も見向きもしない。狙うなら、3番人気のキャラを狙え!」
「3番人気のキャラをやる人は滅多にいないから、主役級のコスプレをしている大物たちと一緒に写真を撮ってもらえるチャンスが広がるんだ!」
みどり『教えてもらっても・・・』
暇『使い道がねえ・・・』
みどり「なるほどね~!」
暇「参考になるぅ~!」
「君たちも、今のうちに馬鹿なことをたくさんやっておきなさい。人生に悔いのないようにね」
「ここに立ち寄る前、新橋でミニ四駆を走らせてきた」と笑うおにいさんを見ていると『年をとってからも楽しいことは色々ありそうだなあ』なんて思ってしまった。
↑みどりちゃんから来たメッセージ。逆ナンはOLさんの心も潤せたようです。
「元コスプレイヤーに出会う」というとても秋葉原っぽい展開が期せずして訪れた今回。ちなみにおにいさんの奥さんになる人も「元コスプレイヤー」だそうです。
世界は広い。どうぞお幸せに。
暇な女子大生(id:aku_soshiki)
「暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ」を書いている女子大生もといフリーライター。好きな男性のタイプは洗濯物の畳み方が几帳面そうな人で、好きな食べ物はエビチリです。