今年5月、出生に関する数値目標について検討してきた内閣府の有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」は出生率の具体的数値目標設定を行うか否かを検討、最終的に断念しました。しかし、この検討期間中に具体的数値目標としての「出生率2.07」が一人歩きし、「政府が女性に対して出生率の目標を作ろうとしている」という誤解も生まれてしまいました。
数値目標設定案は政府の経済財政諮問会議から出たとのことです。その際に登場した「2020〜30年ごろまでに合計特殊出生率2.07」という数字を達成するためにどうすればいいのかを、ざっくり感覚で眺めてみようと思い、以前ツイッターで「世界が100人の女性村だったら」という仮定で呟いてみました。その際のまとめです。数字は現在手元にある資料から取るので、最新データではない可能性が高く、いい加減な算数が頻出していますので、清く正しく美しい人が、清く正しく美しい計算をしてくれる日を信じて待っています。
【前提】
・世界は100人の女性だけの村です
・きっとどこかに105人男性村もあるはずです
・ゴールは合計特殊出生率2.07とします
・スタート時の合計特殊出生率は1.43です
・全ての数字の前に「約」という文字を幻視してください
それではスタートです!
生涯無子率は38.1%なので、100人女性村で子供がいる人は62人、子供がいない人は38人。
子供の数は143人です(子供は子供村で遊ばせておいてください)。
日本は子供が少ない国という印象が強くなってきましたが、子持ち家庭に限ってみると、子供の数は2人以上いる場合が多いのですね。
特殊出生率2.07の世界になるには、子供があと64人必要です。
ですから、62人のママさんたちに、あと64人の子供を産んでもらえば解決です。ですが、既に各家庭に2、3人は子供がいます。そして35歳以上の出産の高齢出産率は22%です。高齢での出産も可能性はありますし、親の年齢が高いことでのメリットもあるのですが、62人ママの内の約14人はもう生物的に妊娠出産が難しいかもしれない、と仮定します。それでは、35歳未満の48人のママさんに、あと64人分子供を産んでもらいましょう。
え、…えー……
流石に48人のママだけで64人を生むのは難しいです。既にママさん達には2~3人の子供がいます。それならば、生涯無子の38人にも子供を産んでもらうしかありません。しかし現在6組に1組は不妊だと言われています(7組に1組というデータもあります)。38人の子供のいない女性のうち、約7人は不妊かもしれません。また、子供がいない女性のうち35歳未満の女性の数は29人です。出産が可能なのは、子供のいない女性のうちの22人です。ちなみに、既に子供がいる35歳未満のママ達だって、2人目3人目不妊になる人は決して少なくないと思うのですが、2人目3人目不妊に関しては不妊治療関連のデータが見つかりませんでした。
しかし、そんな事情を押しのけて22人に子供を産んでもらいました。そして既に2人程度の子供がいる35歳未満のママ48人にも、追加で更に産んでもらいました。子供が70人産まれましたね。目標達成です!やったー!出生率2.07以上になりましたー!
なにが「やったー」だよ…
パセリの花言葉でも調べてろよ…
【清く正しくパスタ茹でている人】
合計特殊出生率の計算は15~49歳の範囲なんだけど、 http://t.co/ornulopdce から計算してみると、2009年時点で、15~49歳の女性のうち35歳以上の人の割合は46.6%なのよね。
— 烏蛇 (@crowserpent) 2014, 6月 17
高齢出産率は医療の進歩で多少の向上は見込めるかもだけど、そんな劇的には上げられない。低年齢(15~19歳、10.7%)の出生率もそうそう増やせまい。とすれば、上昇分の大半を残り42.7%の20~35歳の層で…ってそんなん出来るわけないじゃん!
— 烏蛇 (@crowserpent) 2014, 6月 17
【余談】
出生率目標「賛成」 男性7割、女性5割強(Wの質問)「国が破綻」「個人の自由」
男性は7割も賛成なんですね。しかし無理だろう、と。
【参考】
人口動態調査
出生率2年連続上昇 13年1.43、出生数は最少102万人
将来推計人口の描く日本人のライフコース
人口推計の結果の概要