米政府は米企業が(税率の低い国にある企業を買収することで)本社を外国に移し、税負担を軽くする「タックス・インバージョン(課税逆転)」という抜け穴をふさぐ取り組みを強化している。
だが、これは本社移転の動きをさらに促す事態を招いている。医療機器大手メドトロニックによるアイルランドの同業コヴィディエンの429億ドルでの買収や、医薬品アッヴィによる英同業シャイアの540億ドルでの取得など、最近注目されているこの動きに続こうと考える企業は最大で25社にのぼる。
米財務省が変更を5月に遡って適用したいと考えていることも、事態を一段と悪化させているだけのようだ。米企業はオバマ政権が米議会を説得して抜け穴をふさぐことができるとは考えていないが、万が一に備えて買収を急ピッチで進めている。
米企業のこうした駆け込みは、米法人税全体を改革する必要性を浮き彫りにしている。アップルやファイザー、ゼネラル・エレクトリック(GE)など様々な米大企業は米国で極めて低い実効税率で納税しており、海外でもほんのわずかにとどまっている。知的財産のロイヤルティーをアイルランドやルクセンブルクなど税率の低い国で計上するなど、各国の税制度をてんびんにかける達人と化した企業もある。こうした企業は海外で稼いだ利益を米国に還流せず、米国での納税を避けている。
ルー米財務長官は議会や米企業の「経済版の愛国心」に訴えているが、これが聞き入れられることはなさそうだ。アップルなどの企業は米国での技術革新や法規定など米制度の恩恵を大いに受け、世界有数の企業になった。慈善活動でトップにのし上がったわけではない。こうした企業に行動を変えるよう期待するのは現実的ではない。税制度を徹底的に見直すことだけが賢明な対応となる。
■法人税率、先進国で最も高い水準
オバマ政権の提案は意図こそ正しいが、2つの問題を引き起こしている。1つ目は逆効果になりかねない一時しのぎの策だという点だ。現行の米法人税制で弁護士や会計士はうまみを得ている。今回の法案では、本社の海外移転が認められる外資比率の基準を20%から50%に引き上げるが、これは利口な税理士にさらに策略を練るチャンスを与えるだけだ。課税額は今後10年で200億ドルしか増えないため、米企業の純利益(税引き後の利益)に大きく影響することもない。
2つ目は法案が成立する見込みが低い点だ。共和党が法案の遡及条項に強硬に反対しているからだ。税収がそれほど増えない割に政治的ないざこざは大きいため、労力をかけるに値しない。米政府がもっと野心的な米法人税改革に着手する方がはるかに得策だ。
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