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女児虐待死 最高裁判決 直感的評議、戒める 求刑超え一定の歯止め

産経新聞 7月25日(金)7時55分配信

 「量刑は直感によって決めれば良いのではない」−。女児への傷害致死罪に問われた両親の上告審で、求刑の1・5倍の懲役15年とした裁判員裁判の結論を破棄した24日の最高裁判決。裁判長を務めた白木勇裁判官は補足意見で、評議の前提として量刑傾向の意義を裁判員に理解してもらう重要性を指摘し、「直感的」評議を戒めた。裁判員の「求刑超え」判決が増える中、厳罰化への一定の歯止めともなりそうだ。

 ◆「見直し当然」

 「1審の判決は感情的なものだとしか思えなかった。法律家としては見直されて当然だと思う」

 判決後、岸本美杏被告(32)の弁護人は、量刑を懲役15年から同8年に減刑した最高裁の判断をこう評価。別の弁護人も「市民感覚が反映されるのは想定の範囲内だが、量刑判断にあたって何の基準もないわけではない」と話した。

 裁判員らは評議で(1)被告が有罪か無罪か(事実認定)(2)有罪の場合、どのような刑にするか(量刑判断)−について話し合う。

 事実認定では、最高裁が平成24年2月、控訴審で事実誤認を理由に1審判決を見直す場合は「論理則、経験則」に照らして、不合理な点があることを具体的に示さなければならない、との初判断を示している。

 量刑判断をめぐっては、裁判員制度下で「求刑超え」が増加。今年5月末までに1審で「求刑超え」とされた49被告のうち、5被告は高裁で破棄されたが、最高裁で量刑が見直されたのは今回が初めてだ。

 ◆「あり方」示す

 公平性の観点から過去の量刑傾向を評議での「共通認識」とするよう求めた判決の中でも、詳細に「評議のあり方」を示したのが、白木裁判官の補足意見だ。

 白木裁判官は、量刑傾向を考慮しなければ「評議は合理的な指針もないまま直感による意見の交換となってしまう」と指摘。評議では法定刑をベースにした上で、参考となるおおまかな量刑傾向を紹介し、同種事案の量刑判断で考慮された要素を裁判員に説明することなどが必要とした。

 元東京高裁部総括判事の門野博法政大学法科大学院教授は「形の上だけでなく先例の中身まで検討した質の高い評議を求めており、評議での裁判官の役割の重要性を改めて示した」と見る。その上で「国民感覚を反映させながら説得力のある判決にするには、先例の意義を踏まえ、裁判官が裁判員に丁寧に説明することが必要だ」としている。

最終更新:7月25日(金)11時55分

産経新聞

 

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