国連人権委:元慰安婦への「完全な賠償」を日本に勧告

毎日新聞 2014年07月25日 11時37分(最終更新 07月25日 12時28分)

 【ローマ福島良典】スイス・ジュネーブの国連人権委員会は24日、旧日本軍のいわゆる元従軍慰安婦問題について、日本政府が国家としての責任を認め、元慰安婦らが「完全な賠償」を受けられるよう勧告した。また、ヘイトスピーチ(憎悪表現)など人種差別を助長する行為を禁止するよう促した。

 勧告は元慰安婦問題について「本人の意思に反する行為は人権侵害とみなされる」と断じ、人権侵害を調査して責任者を訴追・処罰し、本人と家族が裁判と完全な賠償を受けられるよう求めた。また、日本政府が「公的に謝罪を表明し、国家責任を正式に認める」よう促した。

 日本政府は1965年の日韓請求権・経済協力協定で請求権問題は解決済みとの立場で、元慰安婦問題については謝罪に加え、「アジア女性基金」(95〜2007年)を通じた償い事業を実施してきたと説明している。

 ヘイトスピーチに関して勧告は、外国人に対する差別的なデモが頻発していることや、Jリーグのサポーターらが掲げて問題となった「ジャパニーズ・オンリー」(日本人以外お断り)という表示に「懸念」を表明。「差別、敵意、暴力をそそのかすような人種的優位の主張や憎悪をあおる言動」を禁じるよう促した。また、現行の民法、刑法では十分に対処できていないと指摘し、加害者を処罰するよう法整備を求めた。

 その他、勧告には死刑制度の廃止検討、特定秘密保護法の厳格な運用が盛り込まれた。

 勧告を出したのは、拷問禁止や表現の自由など「自由権」と呼ばれる人権を担当するB規約(市民的、政治的権利)の人権委員会。人権委員会は国際人権規約の批准国を順番に審査している。今年は08年以来約6年ぶりに日本が審査対象となった。

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