水俣病の研究や患者支援に尽くした原田正純医師の死去から2年。その足跡や人柄を伝える児童向けの本が出版され、この夏の読書感想文コンクールの課題図書になっている。水俣病に関わり続けたわけを「見てしまった責任」と語っていた原田さんの生き方を通じて、見失いがちな大切なことを執筆者は問いかける。

 原田さんは、公害病や炭鉱事故など、戦後の高度経済成長の負の側面に目を向けた。被害者の声に耳を傾け、「現場」に学ぶ態度を貫いた。2012年6月、77歳で死去した。

 絵本作家の三枝三七子(みえだみなこ)さん(47)=長野県=が文章と挿絵を描いた「よかたい先生 水俣から世界を見続けた医師―原田正純」(学研教育出版)は、青少年読書感想文全国コンクール(全国学校図書館協議会など主催)の小学校中学年の部の課題図書になった。生前の聞きとりなどを元に、原田さんの「一人語り」の文体で、生い立ちや水俣病の歴史をつづっている。

 原田さんは研究人生の大半を過ごした熊本大では、助教授のまま64歳で退官。水俣病の患者認定の範囲を狭くとらえた医学部の主流派に対し、被害の実情をありのまま捉えようとしたことが響いたといわれる。