平成14年4月のトピックス
フィラリア予防の季節は?

 今年は、春の訪れが早かった。福岡市では、3月15日が、桜の開花宣言であった。暖かい日が続いたと思うと、肌寒い日もあった。

 これだけ暖かいと、3月の終わり頃から、ぼちぼち蚊が見られるようになってきた。

 蚊というと、フィラリアを連想してしまう。蚊を見かけたら、すぐにフィラリアの予防をしないといけないというのではない。

 フィラリアの感染機序は、フィラリアに感染していて、血中にフィラリアの仔虫がいる犬の血液を蚊が吸血する。その仔虫は、蚊の体内で、感染仔虫に成長して、蚊の吸血行動によって、他の犬の体内に入り、寄生が成立する。

 フィラリアに感染している犬の血液を他の犬に入れても、感染しない。蚊の体内で、感染仔虫と呼ばれる仔虫に成長しないと感染しないのである。

 フィラリアの感染には、蚊の体温、つまり気温が重要な要素を占めている。

 平均気温が、18℃であれば、フィラリアの仔虫は、28日で感染仔虫に成長する。
 平均気温が、27℃であれば、フィラリアの仔虫は、8〜9日で感染仔虫に成長する。

 また、平均気温が適切でも、1日の温度変化の中で、14℃を下回る時間帯が数時間でもあれば、蚊の体内での仔虫の成熟は遅延する。早春や晩秋は最低気温の関係から,蚊内での成熟が遅れるため,感染仔虫にまで成熟できない。

福岡の平均気温、最高気温、最低気温は、下表のとおりである。

 

 

平均気温

最高気温

最低気温

1月

6.4

9.8

3.2

2月

6.9

10.5

3.5

3月

9.9

14.0

6.1

4月

14.8

19.2

10.7

5月

19.1

23.5

15.0

6月

22.6

26.5

19.4

7月

26.9

30.7

24.0

8月

27.6

31.6

24.5

9月

23.9

27.8

20.6

10月

18.7

23.0

14.7

11月

13.4

17.6

9.6

12月

8.7

12.5

5.2

 

フィラリアの予防薬というと、飲むことによって、これからの感染を予防するように思われるけれども、実際は、薬を飲むことによって、約1ヶ月前にさかのぼって感染したフィラリアの仔虫を殺す薬である。感染仔虫が成虫になるのを 防ぐ薬である。

 蚊が出没し始めたからといって、あわてて予防を始める必要はないのである。

 以上のようなことにより、私の住んでいる福岡市は、5月から11月までが、フィラリアの予防期間である。