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明日を問う玄海町長選2014(中) 交付金の行方

2014年07月21日 12時31分

目標にした年間20万人の来場が厳しくなっている次世代エネルギーパーク「あすぴあ」=東松浦郡玄海町
目標にした年間20万人の来場が厳しくなっている次世代エネルギーパーク「あすぴあ」=東松浦郡玄海町

 「平日はほとんど人がいないので、知り合いに宣伝してください」-。玄海原発そばにある次世代エネルギーパーク「あすぴあ」。20日で開館1年を迎えた町の観光施設のスタッフは、来場者に苦笑まじりに話しかけた。

〈目標の半分以下〉

 玄海町が太陽光や風力など再生可能エネルギーを体験できる施設として、「3・11」前の2010年に着工し、3カ年で整備した。玄海3号機のプルサーマル発電受け入れに伴う核燃料サイクル交付金を主に活用し、総事業費は15億3千万円。地域活性化への大きな期待をかけた巨額投資だ。

 年間来場者の目標は20万人。隣接する玄海エネルギーパークの09年度実績と同数で、その見学者が「流れてくる」想定だった。開設した2000年度がピークとなった41万人から昨年度は4分の1にまで減少し、あすぴあもその余波が直撃、5月までの10カ月で8万6千人と目標の半分にも満たない。

 「あすぴあの入場者を増やす意味でも、玄海原発の再稼働に期待せざるを得ない」。町の担当者はそう本音を漏らす。年間運営費は初年度1億円。町は指定管理委託料約8800万円を費やし、残りは物品販売などの収入で賄う。今後も財政負担は重くのしかかる。

 玄海原発が運転を始めた1975年以降、町が受け取った原発関連交付金は昨年度までの39年間で335億円を超える。これに九電からの固定資産税や法人税を加えれば、町の歳入の6~7割が「原発マネー」。町は潤沢な財源を使って、学校や庁舎、道路などの整備を進め、町民や地域産業に恩恵をもたらしてきた。

 しかし、身の丈以上に立派なハコモノは、維持管理費がボディーブローのように町財政に効いてくる。あすぴあのように事業効果が芳しくなければ、なおさら。維持管理費の予算がかさめば、結果的に町民サービスにしわ寄せがいきかねない。旅館関係者が眉をひそめる。「原発事故が起きて財政がひっ迫する恐れもあったのに、あすぴあの計画が止まることはなかった。子や孫にツケを残すことはないのか」

〈思わぬ追い風〉

 「3・11」以降、原発に依存しない産業育成の柱と期待されるのが、11年5月開設の「薬用植物栽培研究所」。総事業費11億8千万円で、その多くを原発関連交付金で賄った。町は運営費として年間約4千万円を支出している。

 当初は漢方薬の原料となる「甘草」の栽培法確立を目指していた。唐津に化粧品産業の拠点をつくる「唐津コスメ構想」が昨年登場し、原料の研究施設としての役割が注目され、思わぬ追い風が吹いてきた。園長の古舘保弘(62)は「早期に技術を確立させ、町全体に栽培を広げることで、新たな地場産業に発展させたい」と気を引き締める。

 町の貯金とも言える基金は13年度末で144億3910万円。原発の将来がなお不透明な中、豊かな財政力がいつまでも続く保証はない。交付金の使途について、町民は厳しい視線を注ぎ始めている。(敬称略)

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