Ryohei’s neuroscience notes

  ようこそ! マックス・プランク・フロリダ研究所の新ディレクターです。学習、記憶の分子メカニズムを研究しています。オフィシァルページはこちら
登場人物:ひいこ(妻, 日記)、ティラノ(息子15才、日記)、スコミムス(娘12才、日記)、グイ(娘9才)

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2011-08-11

[]グラントの書き方

さて、最近NIHからもう1つR01グラント(大型研究予算、1年あたり$150-$250の3−5年が普通か)がとおり、私がPIとなっているR01は、テクニカルには5つになった。複数PIのものが1つ、同僚から引き継いだものを含めてだが、それでもR01に関してはこれまで採択率100%を維持している。おかげで、うちのラボの直接経費予算も$1Mを超え、そのうえにHHMIからの備品予算もつく、というラボが始まった当初かすると、夢のような研究環境となった。これまで敗れたグラントもあるけれど、すべて合わせても80%以上の採択率を維持している。テニュアのほうも問題なさそう。

もちろん、まだR01の審査(Study sectionとよばれる)もやっていないわけで(Tenure前ということで、勘弁してもらっている)、たった4つ5つ連続してとれたからといって(まだ再提出もやったことがない)「勝利の方程式」が見えたわけではないとは思うけど、それでもいろいろな先輩からアドバイスされ、大事だと思う項目を整理しておいてもよいだろう。

1.グラントセミナーにでる

ゲームのルールを知らなければグラントはとれない。一度でもでると、書き方のコツがわかる。

2.いいアイディアがある。

プロジェクトが成功してHigh impactな原著論文が次の5年間に4−5報でる、ということを審査員に納得してもらう、というのが最終的に大事なのだと思う。そういうアイディアが出るまで考えるべし。

3.大きな論文を書く直前が最高のタイミング!

神経学科の学部長ジムからのアドバイス。論文のねたを「予備データ」として使い、そこから派生する問題をグラントにする。すべての技術的なブレークスルーは、グラントを書く段階で解決している必要があるので、どうしても論文が近い状況になる。

4.仮説、または目標は、1文で、明確に。

グラントセミナーより。グラントセミナーは、Specific Aimsの書き方が50%を占める。それだけ大事なセクションなのだけど、そこで1文でかける「Central hypothesis」というものを書く。これだけでProposalらしくなる。この仮説は、「正しくなければいけない」という恐ろしい宿命があり、予備データをたくさん用意して「たぶん正しい」ということを書く。

5.Specific Aimsは3つがいいかな?

グラントセミナーより。Central hypothesisを証明するための3つの実験目標を書く。ここで重要なのは、たとえばSpecific Aim 2をやるために、Specific Aim1の成功が必要であることが、ないようにするのがよい。この「前Aim依存性」は、避けられない場合は、Specific Aim1に関しては、「まず100%成功する」と思わせるだけの予備データを取る必要がある。

6.KISS(Keep it simple, stupid!)の原理

カレルからのアドバイス。何十個ものアプリケーションを読むがわからすれば、複雑なロジックなどもってのほか。簡単に、素人でもわかるように。私自身は、条件分岐はなるべく避けるようにしている。もし必要な場合は、ほとんど、かたほうの分岐のみを考えればいいほど、予備データをためておく。

7.図表を使う。

複数の人より。。1つの図は100行の文章よりも効果的なことがある。表は、個人的には、すべての項目を網羅している雰囲気を出すのに使っている。

8.すべての可能性を考えつくしている、という雰囲気を作る。

グラントセミナーより。仮説が正しい場合とそうでない場合の、「予想される結果」というのはきちんと書いておく。ポジティブ、ネガティブコントロールも大事かな。

9.1月前には書き終え、人にみせる。

当然。グラントセミナーより。

こんなもんかな?Study sectionに言ったことある人の意見があれば、ぜひ聞きたいものです。コメント欄に!

SatoSato 2011/08/17 08:39 RO1の Renewal の時の審査では、ひとつひとつのSpecific Aim がきちんと遂行されて、それらが成果に結びついたか、Central Hypothesisの検証は達成されたか、ということが、かなり具体的に厳しく審査されます。 また、Renewal のプロポーザルでは、新たなFirst Proposalの続きというよりは、First Proposalで得られた結果に基づいて、さらなるブレークスルーにつながる飛躍的な結果につながるプロポーザルである必要があります。 Renewalの前に一回か、二回、自分のプロポーザルが審査されるStudy Section にAd hoc の審査委員として参加するのは、とてもためになります。 自分のプロポーザルが審査されるStudy Section の雰囲気、傾向がわかるというのは、かなり有利です。 Study Section ごとで、かなり性質、傾向は違うので。。。。また、Standing Member の人たちとのコネクションも有利に働きます。 所詮、人間の審査するものですから。。。。RFAでとったRO1はRenewal 出来ないと思ってほぼ間違いないと思います。 また、 RO1を沢山維持していくのには限りがあるので、ここらへんでPPGに加わっておくと、後々助かると思います。

僕は、日本に来て2年になり、いくつか大型グラントをとりましたが、Ryoheiさんがいっているようなことは、日本のグラントを書くときもほぼ同じです。 アメリカでのグラントライティングの経験はとても役にたってます。日本の研究者の多くは、Central Hypothesisをたてて、論理的なプロポーザルを書く訓練を受けていない人達が多いので、かなりアドバンティジになります。 ただ、日本のグラントは数ページなので、短くまとめるのがとても大変です。また、日本語は英語より、文字が混雑する傾向にあるので、読み易く(見易く?)書くのが大変です。

ryasudaryasuda 2011/08/19 12:43 なるほど。Renewal前に、Ad Hocとして参加しておいたほうがよかったもしれませんね。。。日本のグラント書きに、アメリカでの経験が役に立った、という話も、時がきたときに日本に帰れるかも、というはげみになります。

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