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仮設自治会 曲がり角 自宅再建進み役員転居

自治会解散で使用頻度が落ちた仮設住宅の集会所。1カ月前のカレンダーが掛けられていた

 東日本大震災の仮設住宅で、被災住民が自治会の維持に苦慮している。自宅再建に伴ってリーダー役の転居が相次ぐなどし、活動が停滞したまま解散する組織も出ている。支援側は対策を模索するが、抜本的な解決法は見つからないのが実情だ。(鈴木拓也)

<「通って」職務>
 仙台市宮城野区の港南西公園仮設住宅(42戸)はことし3月末、自治会を解散した。自治会長だった中島正志さん(74)は「集会所に顔を出す人も減っていた。潮時だったと思う」と話す。
 中島さんは昨年10月、約500メートル離れた場所に自宅を再建。後任不在のため仮設に通って役職を務めた。「夜中の様子は分からなかった」と当時を振り返る。
 仮設での役員選出は、新規入居が期待できないだけに通常の住宅地よりハードルが高い。
 若林区のJR南小泉仮設住宅(90戸)。会長を含む役員7人のうち6人が年度内の交代を予定しているものの、人選は難航気味だ。
 会長の大久保勝彦さん(73)は「(現在住んでいる)約60世帯のためにも解散はできないが、仕事を持つ人が多くて役員をお願いしにくい」と明かす。

<対策 模索続く>
 自治機能の低下は、支援者側にとっても頭の痛い問題だ。若林区社会福祉協議会は打開策を探ろうと、ことし6月、NPO法人などと神戸市を視察した。関係者から阪神大震災の際の状況を聞き取ったが、ヒントは得られなかった。
 社協の担当者は「神戸では仮設に残る人には焦点が当たっていなかったようだ」ともどかしそうに話す。
 釜石市甲子町の仮設はことし5月、会費不要の準会員として地元町内会に加盟した。交流の幅を広げ、住民の孤立を防ぐのが目的だった。受け入れ側の理解が不可欠となるだけに、他地域にも応用できるとは限らない。

<陸の孤島 懸念>
 自治会は住民の互助機能のほか、行政などとの交渉窓口の役割も担う。石巻仮設住宅自治連合推進会(石巻市)の内海徹事務局長は「解散は仕方ない側面もあるが、仮設自体が『陸の孤島』になってしまう恐れが高まる」と指摘している。


2014年07月25日金曜日

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