奈良県橿原市の新沢千塚(にいざわせんづか)古墳群の126号墳(5世紀後半)で出土した円形の切り子ガラス碗(わん、重要文化財)がササン朝ペルシャ(226~651年)の遺跡で発見されたガラスのうち、5~7世紀に流通した高級品とほぼ同じ化学組成であることが分かった。東京理科大の阿部善也助教(分析化学)らが蛍光エックス線分析で明らかにした。
ガラスの化学組成は原料や採取地を反映し、不純物として含まれる微量元素が指標となる。新沢千塚のガラス碗はデザインなどからササン朝ペルシャ製とされ、その特徴である植物灰を含むことも分かっていたが、微量元素を詳細に分析し、不純物の少ない高級品の部類に入ることが判明。
阿部助教は「同じ原料を得られる、限られた地域で生産された可能性が高い」とみている。
古代ガラスは産地が分からないものが多く、阿部助教らは製品を破壊せずに微量元素を検出する蛍光エックス線分析法で、内外にあるササン朝ガラスとされる42点について約20の元素組成を調査。126号墳のガラス片は植物灰由来のマグネシウムを豊富に含む一方、不純物であるジルコニウムなどが少なく、透明度が高いことが分かった。
ガラス工芸史に詳しい林原美術館(岡山市)の谷一尚館長は「ペルシャから新沢千塚に運ばれるまで、あまり年代が隔たっておらず、当時の交易を考えるうえでも興味深い」と話している。
126号墳のガラス碗は淡い緑黄色で厚さ約1~1.5ミリ。円形の切り子文様があり、1963年の発掘で青いガラス皿とセットで出土した。〔共同〕
東京理科大、ガラス