以心伝心記

Technology is anything that wasn’t around when you were born.

「もはや計画は不要になった」の衝撃 - 準備をしない創造的チームとは? -

「もはや計画は不要になった」

「もはや計画は不要になった」 MITメディアラボ・伊藤穰一氏が語る、"インターネット後の世界"と"新しい原理" | ログミー[o_O]

なんと刺激的なタイトルだろうか?多くの組織論がよりよい計画の作り方と、その計画の実行の方法に血眼になっているというのに!

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多くの会社組織は計画の立案とその共有と実行を日々全力で取り組んでいる。

その計画の妥当性正確性をいかに上げていくのか?は大きな課題だし、その計画を指示して進捗を管理することはマネージメントの肝だ。

そして、その計画の正確かつ効果的効率的な運営こそがマネージャー評価のコアだ。

「良い計画」の作成と共有と実行と評価を極めていくことに異論を挟むのはとても困難だ。

その一方で、計画のための計画、計画の目的や価値が失われてもなお計画を達成する為に費やされている多大なコストと組織的情熱とに得も言えぬ違和感を感じている人は実は物凄く多いのではないか?

 

変化は計画できない。 

世の中は(消費者も競合も技術トレンドも市場環境も、そして依って立つ競争軸も)常に移り変わるというのに「計画」は死守される。

それを振り返って、見直し、書き換えるコストを敢えて支払ったとしても、そこで生まれるのは新たな「計画」だ。

世の中の変化は常に止まらないのだから、結果として継続的な陳腐化は決して避ける事が出来ない。

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創造性と計画は常にトレードオフの部分がある。

予測し予定し機械的に実行することで全てが上手く回せることが出来たとすれば、それは経営資源的にも商流的にも競争環境を維持できる「変化の固定が可能」な非イノベーティブな状況であったに過ぎないのかもしれない。あるいはパラダイムチェンジが起こらない期間がたまたま長かっただけなのかもしれない。

何しろ大きな変化はジョーイの記事の中でも述べられているように、ソフトウェアだけでなくハードウェアでさえ基本ゼロコストでスタートが切れるようになったことだ。

未だに製造段階になるとハードルが高いのは事実だとしても、クラウドファンディング資金を集めることが出来れば、それすらも乗り越えることは可能だ。

会社とはそもそも、

 

・お金を集め

・人を集めて

・物を手に入れる

 

いわゆる、ヒト・モノ・カネの経営資源を中心に成立している。

ところが、オープンアンドフラットのネットワーク環境が充実すればするほど、それらの集約集積のみでは、もはや競争優位には出来ない(変化に応じた離合集散を組織できないから)。

 

つまり、計画が変化を阻害している。

むしろ世の中の変化を捉えきれない陳腐な計画で足腰が固定されているような大組織では、そのヒト・モノ・カネを有効に活用しきれないのだ。

だから、ここでジョーイが述べている「フューチャリスト」ではなく「ナウイスト」へのパラダイムチェンジは本質的な時代の変化を言い当てていると思う。

 

経営資源の集約と蓄積による競争優位の維持が、もはや無意味化しつつあること。

そして、もはやそういうスタンスや考え方でやっている限りは、創造的イノベーションを(計画的に)阻害する他はなくなっている。そういう時代的な兆候を的確に述べている。

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では、「計画」に依存せずに成長を遂げられるチームとビジネスをどう考えていけば良いのか?

 

「今」を生きる。

過去に通用したような競争優位性のロジックが成り立たない世界で、どういった方法でスケール可能な価値創造をやり遂げていくのか?

小さい創意工夫の積み重ねではなく(それだけでは既存環境を書き換えられない)、大きく世界を変えられる様な製品戦略を、いかに「計画性」の悪しき弊害に囚われずに進めていくのか?

この世界は非常に複雑ですが、あなたに必要なことはシンプルです。

何が必要か、何を蓄えなければいけないか、何を準備しなければいけないか、あれこれ計画する、なんて考えをやめることです。そして周囲をよく見渡し、関心あることをまとめ、常に学び、素晴らしい今に気づくべきです。

これがジョーイの提言で、でも、実は、そんなに簡単ではない。特に極めて優秀な計画立案実行組織で有ればあるほどパラダイムチェンジは困難だ。

「準備をやめる」ことは大いなる勇気と日々弛まざる学びのプロセスを意味する。それに向き合うことは容易ではない。

 

でも、一方ではメイカーズのムーブメントとクラウドファンディングの環境は、いとも簡単に「計画」のドグマを乗り越えつつある。

そういう意味では、メイカーズムーブメントの次世代型とも言える、IoTのテクノロジー環境。つまり、コネクト可能でプログラム可能なデジタルデバイスの製造開発環境は、明らからに「計画」不要な創造性向きだ。

 

決められた「計画」を不要とし、思いつきや気まぐれに対して積極的、その場その場の瞬間的な気付き(と、それらへのインサイト)や触発、偶然の出会い、発見、発明に際して自由であること。そういうチームやビジネスユニットの登場が、まさに期待されていると言える。

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まず計画を捨ててみる。

そう、そもそもがインターネットもパーソナルコンピュータも人のコミュニケーションを加速し効果的にする通信網および装置として発展してきたのだから、新しい情報環境に於いては創造的な組織が既存の企業組織が抱えた旧態依然のロジックに囚われている事自体が、本来はナンセンスなのだ。

だから、究極的には「計画」に囚われない、「準備を必要としない」創造的組織の有り様は、社会の構造や関係性を大いに書き換えるに違いない。

 

仕様書や日報週報などが、そもそも人の手足(創造性)を縛っていることへの違和感が、ようやく開放される時代なのではないか?

「今」に対して開放的であることを、どう現実に活かしていくのか?

 

まずは「計画」や「準備」を捨ててみよう。

「計画」や「準備」を捨て去った後の恐怖や空虚の代わりに、変化を恐れない、充実した、「今」を生きる力が得られるのではないか?逆に言えば、その今を生きる力を得るために捨てるのは、計画や準備に依存しがちな恐怖心なのかもしれない。

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