木暮太一の「経済の仕組み」

カイジ「どん底からはいあがる」生き方の話
【第3回】日本人に染みついている"減点思考"の弊害

2014年07月25日(金) 木暮 太一
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漫画『賭博黙示録 カイジ』とは?

自堕落な日々を過ごす主人公、伊藤開司(いとう・かいじ)。そのカイジが多額の借金を抱えたことをきっかけに「帝愛グループ」をはじめとする黒幕との戦いに挑んでいく大人気漫画。命がけのギャンブルを通じて、勝負師としての才能を発揮するカイジだが、その運命は果たして・・・。

(作者:福本伸行 講談社『週刊ヤングマガジン』で1996年11月号~1999年36号まで連載された作品)


 

【第2回】はこちらをご覧ください。

ミスだけが評価対象になってしまう

ぼくが小さい時から感じていることがあります。それは「日本は"減点方式"が大好き」ということです。この減点思考こそが、日本人を不幸にしているのだと、強く感じています。

日本人は、何でもかんでも減点方式で考えます。すべてうまくやるのが前提で、うまくいかないことをそこからマイナスします。あたかも「最初に持っている点数が満点で、何かミスをしたりペナルティを課せられるとそこから点数が減っていく」という考え方をします。

何か理想的で絶対的な"正解"があり、至らない部分をそこから減点していくように考えています。その理想の姿に一歩近づいていればプラス1点ではなく、「99歩も足りないからマイナス99点」と考えるのです。

日本の教育はまぎれもなく「減点方式」です。学校のテストは加点方式じゃないかと思うかもしれませんが、違います。それは点数の上限が100点と定められていることにすべてが現れています。マークシート式ではもちろん、論述式でも、満点以上の点数を取ることはできません。加点方式で、よかったところを評価し、積み上げていくのであれば、「満点」という考え方すらなくなります。

あらかじめある水準が設定され、そのレベルまでたどり着くことが"善し"とされます。それ以上はどれだけがんばっても行くことはできず、むしろ足りないところが明らかになるような設計がされています。

仕事でも同じです。ミスをすると、減点されます。いい成果を出してもなかなか認められないのに、ミスをするとすぐに評価が落ちてしまいます。

決められたことを問題なくこなしていれば「満点」です。しかし一方で、将来のために新たなチャレンジをして、残念ながら失敗すると、減点対象になってしまいます。既存のビジネスをそつなくこなすことよりも、新しい分野で結果を残すことの方が圧倒的に難しいはずです。そして、圧倒的に重要なことです。しかし、そこにチャレンジしたことは評価されず、ミスだけが評価対象になってしまうのです。

この「減点思考」の影響が、いろいろなところに現われています。そして、本来は「減点」で考えないものも減点方式で考えて行くようになっています。減点方式で考えた結果、引き起こされるのは、「ミスをしなければ満点」「わざわざ動いてミスをすれば減点」という考え方です。これが日本人を不幸にしているのです。

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