最高裁:求刑超え判決破棄 裁判員経験者の意見は分かれ

毎日新聞 2014年07月24日 23時52分(最終更新 07月24日 23時57分)

 尊重されるべきは市民感覚か、それとも過去の量刑相場か。裁判員制度スタート当初からの議論に24日、最高裁が一つの答えを出した。「他の事件と比べて出した結論なら仕方がない」「被告にも会わず裁判員の判断を否定するのは納得できない」。求刑の1.5倍という裁判員裁判の判決を「不当」とした最高裁の結論に、裁判員経験者の意見は分かれた。【島田信幸、吉住遊、伊藤一郎】

 昨年、知人女性に対する傷害致死罪などに問われた男の裁判で裁判員を務めた岐阜県可児市のアルバイト男性(65)は「他の事件とのバランスを考慮する裁判官の判断で見直されるのなら、仕方がない」と受け止めた。

 男性が裁判員として加わった判決は、懲役15年の求刑を大きく上回る懲役20年。2審で「量刑は相当性を欠く」として懲役12年に減刑され、最高裁で確定した。「個人的意見として求刑を超える判決に迷いがあったので納得はできた。量刑に対する裁判員の意見にも幅があった。裁判員の判断が上級審で変更されるケースがあってもいいと思う」という。

 「プロの裁判官にとっては数ある裁判の一つでも、裁判員にとっては唯一の裁判」。2011年に東京地裁が強盗殺人罪に問われた男に死刑判決を出した際に裁判員を務めた女性は、2審で無期懲役に減刑された際、「市民感情を反映した判断が否定されたことに反感を覚えた」という。今回の最高裁判決についても「被告にも会わず、裁判記録と今までの事例との比較だけで、裁判員の判決が見直されるのは納得がいかない」と語った。

 判決後に取材に応じた岸本美杏被告の弁護人の間光洋弁護士は「無罪主張が認められなかったことは残念」とした上で「市民感覚が反映されるのが裁判員裁判と理解しているが、量刑の判断に基準がないわけではない。破棄は当然」と述べた。

 一方で、ある検察幹部は「検察の求刑は参考意見として出しており、それが常に正しいとは考えていない。検察としては事案に応じて公平な求刑を目指すだけだ」と語った。

 ◇被告に不利判断、裁判官が1人は賛成する必要

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