July 24, 2014
地球上で一番大きな動物、シロナガスクジラは、毎年夏を向かえると米国で最も船が混雑するカリフォルニア沿岸部に集まる。新たな研究報告によると、船との衝突事故がシロナガスクジラの個体数増加に歯止めをかけているという。
国際捕鯨委員会(IWC)が絶滅危惧種として米国西部海域での捕獲を禁止した1966年以降、生息数は徐々に増加しているが、期待されるほど早くは回復していない。
20世紀初頭、世界中の捕鯨船が北太平洋でシロナガスクジラを捕獲し始める以前、その海域には4900頭が生息していたが、現在では約2500頭しか確認されていない。
毎年夏になるとシロナガスクジラが集まる“ホットスポット”は、ロサンゼルス近海のチャンネル諸島とサンフランシスコ近海のファラロン諸島にあり、船の航路と重なっている。
これらの海域では航行速度が規制され、衝突回避を・・・
国際捕鯨委員会(IWC)が絶滅危惧種として米国西部海域での捕獲を禁止した1966年以降、生息数は徐々に増加しているが、期待されるほど早くは回復していない。
20世紀初頭、世界中の捕鯨船が北太平洋でシロナガスクジラを捕獲し始める以前、その海域には4900頭が生息していたが、現在では約2500頭しか確認されていない。
毎年夏になるとシロナガスクジラが集まる“ホットスポット”は、ロサンゼルス近海のチャンネル諸島とサンフランシスコ近海のファラロン諸島にあり、船の航路と重なっている。
これらの海域では航行速度が規制され、衝突回避を促す監視システムも導入されているが、依然として船とクジラの接触が後を絶たない。
◆シロナガスクジラを脅かす船
ファラロン諸島やチャンネル諸島を囲む浅瀬は海洋保護区となっており、シロナガスクジラは繁殖のため一夏を過ごす。1993年から2008年にかけて、クジラの移動を衛星から監視する追跡タグが、研究者の手によって取り付けられた。そして、データの分析から彼らが頻繁に訪れるホットスポットが浮かび上がった。そこはちょうど商業船の航路と重なり、たびたび致命的な衝突事故が起こっている。
ニューポートにあるオレゴン州立大学の海洋哺乳類生態学者で論文の共著者、ラッド・アーバイン(Ladd Irvine)氏によると、2007年だけで、カリフォルニア州南部で3頭のシロナガスクジラが船と衝突して命を落としている。さらに、2頭死んでいるのが同海域で発見されたが、死因はわかっていない。たった5頭と思うかもしれないが、2500頭という全体数からすると、海洋大気庁(NOAA)が彼らの死を“異常死亡事象(Unusual Mortality Event)”と宣言するのに十分な数である。
最新の衛星追跡データは、ナショナル ジオグラフィック協会から一部助成金を受けている。アーバイン氏の研究チームは、船とクジラの衝突を減らすため、既存航路を変更する際の指針になると期待を寄せている。チャンネル諸島とサンタバーバラを挟む海域にある3航路の間を走るカリフォルニア南部航路の1つを南に移動することで、クジラたちが最も頻繁に集う海域を回避できると著者らは記す。
「実際に現在の航路を変更するのは難しいでしょう」と、カリフォルニア州サンタバーバラにあるチャンネル諸島鯨類研究所に勤める海洋哺乳類生物学者のミシェル・バーマン・コワレフスキー(Michelle Berman-Kowalewski)氏は話す。同氏は、今回の研究に参加していない。新たに提案された航路は、米国海軍の実験地域と重なるため、航路の変更は困難を要するだろう。
アーバイン氏もそれを承知している。それでも、海洋大気庁は、海運業者や海軍、その他関係者を交えて、クジラを含むすべての当事者にとって最善の航路を選ぶべく努力していると同氏は述べている。
今回の研究論文は、科学誌「PLOS ONE」に7月23日付で掲載された。
Photograph by Robert Harding. Specialist Stock/Corbis