海外には政治主導で漁業改革に成功した事例が数多く存在する。これまで日本では目立った動きがなかったが、一部の政治家が動き始めた。こうした永田町の変化は霞が関にも影響を及ぼしはじめている。
日本漁業は必要経費である燃油代すら捻出できない状態であり、普通の会社ならとっくに倒産している。にもかかわらず、日本は、漁業の構造的な問題に向き合わず、補助金による問題先送りを繰り返してきた。世界の漁業がおしなべて成長する中で、日本だけが一人負けという状態が続いている。
海外には、政治主導で漁業改革に成功した事例が、数多く存在する。米国は、2002年に個別漁獲枠制度を導入し、漁業再生に成功した。経済学者ポール・クルーグマンは、「政府の介入は大成功で、漁業は活力を取り戻し、漁師と消費者の双方に利益をもたらした」、「やるべきとわかりきったことを、きちんと実行すれば、多くの人が予想する以上に容易に成果がでる」と指摘している。「やるべきとわかりきったこと」が、大規模資源への個別漁獲枠制度の導入である。
日本でも、政治主導の漁業改革のための条件が整いつつある。安倍内閣が日本経済の再生に向けて展開する「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「成長戦略」の3本の矢。3本目の矢の「成長戦略」の成否によって、アベノミクスの真価が問われることになる。
安倍首相は「攻めの農林水産業 ~成長戦略第2弾スピーチ~」において、2020年までに水産物など一次産業の輸出金額を倍増させる目標を発表した。現在の施策内容は「ブランディングと衛生証明書の発給」となっているが、魚がいないのに輸出が増えるはずが無い。目的達成の前提として、資源管理が不可欠である。
2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、水産エコラベル認証を得た、持続的な漁業によって生産された水産物のみを大会で提供することが決まっている。東京オリンピックでも、リオと同等、もしくは、さらに厳しいハードルが要求されるだろう。透明性のある形で、資源管理を導入することがオリンピックのホスト国として求められている。
日本政府が掲げる政策目標を達成し、東京オリンピックにおいて「日本の海の幸でおもてなし」を実現するには、早急に資源管理を導入して、20年までに成果を示す必要があるのだ。