経営のためのIT
【第22回】 2014年7月25日
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内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

20年後、今ある職業の半分はなくなる!
デジタルイノベーションの潮流
――デジタル化の進展が企業に及ぼす影響

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多くの経営者が、ITを競争優位性獲得のために戦略的に活用することが重要であると認識しているものの、それを実践できている企業は少数派と言わざるを得ない。業務の効率化などを目的としてきた従来型の企業ITの進展は成熟段階に向かっており、今後はコンシューマーITの進展や社会インフラのデジタル化などの潮流が、経営やビジネスに大きな影響を及ぼすことが予想される。

デジタルイノベーションとは

 デジタルイノベーションという言葉は、現時点で明確に定義づけられているものではない。 社会や産業全体におけるデジタル化(デジタライゼーション)の進展を指す場合もあるが、ここでは、こうしたデジタライゼーションの潮流が企業に及ぼす影響と、それに対応するための企業の革新的活動に焦点を当て、デジタルイノベーションを「デジタル技術やデジタル化された情報を活用することで、企業がビジネスや業務を変革し、これまで実現できなかった新たな価値を創出すること」と定義する。

 一方、これまでもパソコンなどのデジタル技術を多方面で使ってきたであろうし、デジタル化された情報を伝達、共有、意思決定などに活用してきたことは言うまでもない。また、インターネットを介して顧客や取引先に情報の受発信を行ったり、販売や顧客サポートを提供したりと、これまで手作業や紙ベースでは実現できなかったことを実現しているのも事実である。

 また、昨今注目されているモバイル、クラウド、ビッグデータといったIT業界の新潮流も、それら1つひとつをマス目の粗い物差しで測れば、それぞれダム端末、ホスト・コンピュータのタイムシェアリング、情報活用といった一昔前のキーワードと本質的には何ら変わることはなく、延長線上の概念に過ぎないと捉えることもできる。

 これまでの情報化(いわゆるコンピュータライゼーション)とデジタルイノベーションが大きく異なる点は、業務やビジネスに対する改善・拡張に留まるものであるか、破壊・創造を伴う変革であるかという点である【図1】

 例えば、産業分野におけるデジタルカメラの発明は、現像・焼き付けといった業務プロセスそのものが不要になり、現像所や取次店といった事業形態に転換を余儀なくしたという点においてデジタルイノベーションと呼べるであろう。また、インターネットを介したWeb会議やタブレット端末を利用したビデオチャットなどの台頭は、集合会議のための出張や高額な専用TV会議設備を不要にすることを含めて、会議のあり方を革新する可能性を持っている。

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内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は大手ユーザー企業のIT戦略立案・実行のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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