日本は燃料電池車に手厚い補助金－米中の支援を大きく上回る

　　７月25日（ブルームバーグ）：燃料電池自動車（ＦＣＶ）への補助金が、政府と自治体を合わせて販売価格の４割程度になる公算だ。電気自動車（ＥＶ）など次世代環境対応車については、中国や米国も普及に向けた取り組みをしているが、日本政府のＦＣＶ支援はこれを大きく上回る。

安倍晋三首相は18日、訪問先の福岡県でＦＣＶに試乗し、「排気ガス、ＣＯ２が出ない新しい時代の車」と評価した上で、政府として「少なくとも200万円の補助をしていきたい」と述べた。政府はＦＣＶについて、同じ車格で燃料電池を搭載していない車両との差額の２分の１を補助する方針だ。

さらに、トヨタ自動車 の本社がある愛知県は22日、県として同差額の４分の１を補助すると発表。政府支援と合わせると差額の４分の３を補助金でカバーすることになる。トヨタは今年度中に発売するＦＣＶ価格を700万円程度にする予定で、比較対象となる「ＳＡＩ」（価格約330万円から）を基準に単純計算すると、実質購入価格は420万円前後。これは、高級車レクサスのラインアップで下位モデルの価格帯になる。

ジェフリーズのアナリスト、タン・ファム氏は「新技術の普及には政府の支援は欠かせない」と述べた上で、「燃料電池技術は日本が世界市場をけん引できる立場」にあり、今回の政府補助金支援が正しい方向にあるとコメントした。ジェフリーズでは、世界のＦＣＶ市場が2025年までに３兆3000億円に達するとみている。15年の見通しは340億円。

中国や米国も普及支援

環境技術をめぐっては、中国も対応車両の普及を図っている。20年までにＥＶやプラグインハイブリッド車（ＰＨＶ）、ＦＣＶなど「新エネルギー車」を500万台に普及させる方針で、北京市での補助金額は中央・地方政府を合わせて最大11.4万元（約190万円）となる。中国は６月、普及強化のため、新たに政府公用車の３割をＥＶにする方針を示したほか、９月から17年まで対象車の取得税10％を免除すると発表した。

米国ではＥＶ購入者に7500ドルの減税措置がある。さらに、カリフォルニア州では2500ドルの税金還付があり、渋滞した高速道路で優先道路を走行することができる。

日本政府はクリーンエネルギー自動車等導入促進補助事業として、これまでもＰＨＶやＥＶなどに補助金を支給してきた。モデルにより異なるが、例えば、三菱自動車のＥＶ「アイミーブ」では最大85万円で、このほか自治体によっては数万円から、一部で30万、40万円程度の補助が受けられた。ＦＣＶへの政府・愛知県の補助金額はこれを大きく上回る。

ＦＣＶは水素を燃料とし、二酸化炭素や有害な排気ガスを出さないため、世界の主要メーカーが開発を進めている。トヨタのＦＣＶ発売は一般向け量販モデルとして世界に先駆ける形となる。

関連産業にも利益

ジェフリーズのアナリスト、タン・ファム氏は、ＦＣＶについて「補助金政策は自動車メーカーだけでなくインフラやエネルギー関連産業にも利益をもたらし、輸出につながれば安倍政権の成長戦略の一翼を担うことになる」とコメントした。

トヨタや日産自動車、ホンダは11年１月、ＪＸ日鉱日赤エネルギー、昭和シェル石油などエネルギー関連企業10社とともに、水素供給インフラ整備に関する共同声明を発表し、15年までに100カ所程度のインフラ整備を目指すとした。

資源エネルギー庁は６月に発表した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」で、20年ごろには燃料の水素価格をハイブリッド車（ＨＶ）の燃料代と同等以下にして、25年ごろには車両価格で同車格のＨＶと同程度を目指すとした。国内の水素・燃料電池関連の機器・インフラ産業の市場規模は、30年で約１兆円、50年に約８兆円になると試算した。

トヨタはＦＣＶを国内で発売した後、米国や欧州にも投入の予定。米国では水素充てんステーション導入の動きが進んでいる。カリフォルニア州では10カ所が開設しており、16カ所で準備が進んでいるほか、約4700万ドルをかけ28カ所で新たに設置予定。トヨタ北米本部長のジム・レンツ氏は５月、これだけの設備があれば１万台のＦＣＶ販売に十分だという見方を示した。

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更新日時: 2014/07/25 00:01 JST