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 警察庁が風俗営業店の経営者に対して30年近くにわたって、従業員の本籍地を記載した名簿をつくるよう指示していたことがわかった。本籍地は、差別や不利益な取り扱いにつながりかねない高度なプライバシーが含まれる情報とされる。警察庁の指示は、人権に配慮して行政事務を進めるように求めている政府の取り組みに逆行している形だ。

 風俗営業法は性風俗のほかキャバレーやパチンコ、ゲームセンター、ダンスクラブなどの経営者に対し、営業所や事務所ごとに従業員の名簿を備えるように求めている。警察庁は1985年の総理府令(現内閣府令)で、名簿には性別や生年月日、採用年月日などのほかに本籍地(外国人については国籍)を記載するよう命じた。違反すれば100万円以下の罰金がある。

 警察庁は指示の理由について、「年少者の風俗産業への就業を規制するため、身元を確認する必要がある」と説明している。ただ、本籍地の情報を元に戸籍などを調べれば、出生、家族状況、破産歴、犯歴など、差別につながりかねない情報を得られる。

 政府は2000年、人権教育・人権啓発推進法を制定。国や自治体が行政事務を執行する際、人権に配慮するよう求めた。厚生労働省はこの求めに従い、採用時には思想信条や支持政党などと同じく、本籍地も聞かないよう雇用者側に指導。労働基準法でも、労働者名簿への本籍地の記載義務を削除している。