July 24, 2014
アメリカの大西洋岸とメキシコ湾岸は、気候変動に伴い予想される洪水の増加やハリケーンの大型化に対する備えができていないと、専門家が指摘している。
全米研究評議会(NRC)は7月23日に報告書を発表し、ここ数年の間に、大西洋岸とメキシコ湾岸地域で「海岸と暴風雨に関連した損失が劇的に増大している」と警告した。損失拡大の理由は、人口の増加と、危険地域に建てられる家屋その他の建築物が増えていることだという。
報告書の執筆者の1人で、メリーランド大学カレッジパーク校の土木環境工学教授グレッグ・ベーカー(Greg Baecher)氏は、「危機感が高まっている」と話す。
「ハリケーンの勢力は年々強くなっている。科学者は現在、この傾向が続くと考えている。各レベルの政府機関の連携が取れていないが、時間は尽き・・・
全米研究評議会(NRC)は7月23日に報告書を発表し、ここ数年の間に、大西洋岸とメキシコ湾岸地域で「海岸と暴風雨に関連した損失が劇的に増大している」と警告した。損失拡大の理由は、人口の増加と、危険地域に建てられる家屋その他の建築物が増えていることだという。
報告書の執筆者の1人で、メリーランド大学カレッジパーク校の土木環境工学教授グレッグ・ベーカー(Greg Baecher)氏は、「危機感が高まっている」と話す。
「ハリケーンの勢力は年々強くなっている。科学者は現在、この傾向が続くと考えている。各レベルの政府機関の連携が取れていないが、時間は尽きかけている」。
報告書をまとめた委員会で委員長を務めたノースカロライナ大学チャペルヒル校の海洋科学教授リチャード・A・ルーティック・ジュニア(Richard A. Luettich, Jr.)氏は、「政府機関同士や連邦政府と各州との間の協力が絶対的に必要だ。国の政策も、沿岸部の被災への対応を基本とすることから、リスクを軽減し、回復力を高めるために賢明に投資することへと進んでいけるよう、変更する必要がある」と、声明の中で述べている。
この報告書は、米陸軍工兵隊の依頼により作成された。
◆連邦政府の支出は多すぎる
最近では、アメリカの連邦政府は、ハリケーン「カトリーナ」や「サンディ」などによる大災害の復興費用について非難を受けがちだが、昔からそうだったわけではない。
「連邦の納税者が負担する割合は、大幅に増加した」とベーカー氏は指摘する。20世紀中頃のハリケーンでは、連邦政府が負担したのは復興費用の10%程度だったという。しかし、サンディの後、連邦は費用の約75%を拠出した。
連邦の納税者は、必ずしも出した金額に見合う見返りを受けてはいないと報告書は述べる。建物の再建費への支出が大きすぎ、沿岸部の都市計画や防災準備、リスク軽減対策への支出があまりにも少ないという。地域社会は災害に弱いままだ。
「災害の前に1ドル使っておけば、被災後の再建費用が4~5ドル減らせるのだ」とベーカー氏は話す。
◆開発を制限?
NRCのアドバイザーは報告書の中で、「過去のリスク軽減計画の大半は防災施設の建設で、高リスク地域の再開発を制限し、より安全でリスクの低い地域に開発を誘導するような努力はほとんど行われなかった」と書いている。
ルーティック氏に言わせると、これは「リスクと報酬とリソースと責任の調整不良」であり、そのせいで「非効率と不適切なインセンティブが生まれ、最終的に沿岸部のリスクが高まった」のだという。
具体的には、開発業者は、水害保険制度を通じてリスクを家屋の所有者や連邦政府に転嫁できるため、平気で危険な地域に建物を建てているのだと、ベーカー氏は説明する。州政府や自治体の役人は、それで税収が増えるため、見て見ぬ振りをすることが多い。
委員会は、この問題を解決する「魔法の弾丸を見つけているわけではない」と、ベーカー氏は話す。しかし、この報告書が、より良い沿岸防災政策につながる議論を活発にするものと期待している。
1つの解決案は、養浜や防波堤といった海岸保護施策に拠出する資金を調整することだ。現在、連邦政府は地方政府に、こうした保護計画に一定の比率で予算を割り振るよう求めている。しかし今後は、湿地帯の回復や、建物の床を高くするなどのリスク軽減措置を取った地方政府には、保護計画に割く予算の比率を下げることを認める、などのやり方が考えられる。
連邦政府は、今日のような「プロジェクトごとの継ぎはぎのアプローチ」に頼るのでなく、沿岸部のリスクに対処する全米レベルの計画を立てることもできるはずだと、報告書は指摘している。
Photograph by U.S. Coast Guard via Getty Images