【藤本順一、上杉隆の言いたい放談】2013年3月1日掲載紙面から
安倍晋三首相(58)が第2次政権発足後、初の施政方針演説に臨み「強い日本」を高らかに表明した。高支持率に支えられたアベノミクスでイケイケの安倍政権に対し、民主党は海江田万里代表(64)体制下で初の離党者が出て、党存亡危機に立たされている。本紙「永田町ワイドショー」藤本順一氏、元ジャーナリストで公益社団法人自由報道協会理事長の上杉隆氏が、明暗分かれる両党の今後を占った。
藤本:まずは安倍首相が施政方針演説。70%に迫る高支持率を背景に憲法改正や原発再稼働に言及するなど、1月の所信表明演説より、かなり踏み込んだ内容でしたね。人気があるからと言って何でもやれると勘違いしてもらっちゃ困る。安倍政権の役割は経済再生に道筋を付けるところまで。原発の再稼働については、まず福島の廃炉と放射能除染にケリをつけてから。憲法改正や国防軍なんて頼みもしないことまでやることはない。
上杉:安倍首相を応援する身としては(笑い)「おごるとすぐに足をすくわれますよ」と強く言いたい。オバマ大統領(51)との首脳会談も晩餐会や共同会見はなく、せっかく「山田パター」のお土産を持っていったのに最低の扱いを受けていた。ハッキリ言って、日本は相手にされていない。売り物の経済再生にしても政権発足以来の円安株高でアベノミクスは期待値が先行していますが、最近はイタリア政局の混迷から円は対ユーロで値を上げている。楽観は禁物です。
藤本:甘利明経済再生相(63)は経済演説で雇用と所得を増加させると熱く語っていましたが、参院選までに結果を出さなければ、負担だけを強いられてきた国民は騒ぎだしますよ。
上杉:経済の波及効果で庶民の給料が上がるのは最後の最後ですから、早くて1年はかかる。経団連に「給与を上げて」とお願いして、ローソンが勇み足で年収3%アップを打ち出しましたが限定的です。どこまでごまかし続けることができるのやら。
藤本:安倍首相が直々に、企業経営者に社員の給料アップを頼むなんて前代未聞の珍事。雇用についても小泉構造改革の格差拡大で象徴となった非正規社員の準正社員化を打ち出し、連合を支持母体にする民主党より労働者保護に熱心ですね(笑い)。
上杉:お株を奪われてしまった民主党は24日に党大会を開催しましたが、首相の訪米日程と重なり話題にも上らない。
藤本:ついには運にも見放されてしまった(笑い)。
上杉:党大会の会場も閑古鳥が鳴いていましたよ。この日は東京マラソンがありましたからね。沿道を埋め尽くすのは何十万もの有権者ですから、6月の都議選を前に民主党の都議選候補は名前を売りたいからイベント参加を優先。しかも党大会の開会時間がマラソン真っただ中の13時では、交通規制に出くわし、党大会に行きたくとも行けない。よくぞこんな日程を組んだものだとあきれ果ててしまいました。
藤本:そんなんじゃ党再生は無理だね。結党から10年以上もたって、ようやく党綱領を決めましたが、相変わらず党内は右と左が足の引っ張り合い。海江田代表が早々、参院選敗北後の辞任に言及、創業者の鳩山由紀夫元首相(66)さえもがついに離党を表明して見放してしまった。まあ、まだいたの?って感じがしないでもないけど(笑い)。
上杉:鳩山氏の時間軸はわれわれ一般人とはズレがありますからね。相対性理論やビッグバン理論でも鳩山氏の宇宙法則は解けない(笑い)。
藤本:時空を超えた瞬間移動なんてこともできるのかな(笑い)。
☆ふじもと・じゅんいち=1958年、福岡県生まれ。新聞、雑誌記者を経て独立、取材執筆集団「メディアフォーラム」代表。「建設業界・談合が崩壊する日」「永田町奇譚 もしニッポンの総理が東スポを愛読してたら…」など著書多数。本紙で「永田町ワイドショー」好評連載中。
☆うえすぎ・たかし=1968年、福岡県生まれ。テレビ局、衆院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ取材記者、フリージャーナリストを経て、公益法人自由報道協会理事長。ミドルメディア「NO BORDER」代表。近著に森達也氏との共著「誰がこの国を壊すのか」など多数。