【藤本順一、上杉隆の言いたい放談】2013年2月16日掲載紙面から
鳩山由紀夫元首相(66)、邦夫元総務相(64)の母親で“ゴッドマザー”といわれた鳩山安子さん(享年90)が11日、死去した。本紙「永田町ワイドショー」藤本順一氏、元ジャーナリストで公益財団法人自由報道協会理事長の上杉隆氏が、謎のベールに包まれた安子さんの“素顔”と政界とのつながりを明かした。
藤本:安子さんがお亡くなりになった。上杉さんは邦夫氏の秘書時代に安子さんと交流が深かったとか。
上杉:マスコミでは、ゴッドマザーといわれていますが、本人はその呼び名を嫌がっていたし、実際、全く似つかわしくない方でした。鳩山事務所では安子さんは安子奥様と呼ばれていて、最初に会ったのは20年ほど前。現在は鳩山会館となっている東京・音羽の鳩山邸に届け物をした時に、地味な格好でお手伝いさんかと間違えたのが奥様だった。その後、何度も訪れましたが、ご飯とみそ汁と漬物、煮付けと質素な生活をしていたのが印象深いです。
藤本:安子さんはブリヂストン創業者・石橋正二郎氏の娘で令嬢のイメージもあるが、福岡・久留米で過ごした幼少期は、随分と苦労したんですよね。
上杉:石橋氏は地下足袋屋さんで、足袋の底にゴムを付けたら長持ちするゴム付き足袋を考案し、その技術を車のタイヤに転用した。石橋の英語名「ストーン」と「ブリッジ」をひっくり返したブリヂストンを創業した。安子さんは赤貧時代を経験しているから、鳩山家に嫁いでからもぜいたくすることはなかった。車にも乗らずにいつも電車とバスで移動していました。
藤本:そんな質素な生活をしながら、夫の威一郎氏は外務大臣で、2人の息子を首相と大臣に育て上げた。安子さんがいなければ民主党や政権交代はなかったわけだし、由紀夫氏が首相になることもなかった。そういう意味では、やはり偉大なるゴッドマザーですよ。
上杉:ゴッドマザーのイメージが独り歩きし、裏で政治を動かしているともいわれましたが、一切口出しはしなかった。私が唯一、知っているのは1996年に「政治が国民の皆様を向いていない。もう2人で一緒におやりになったらいいじゃない」と一喝したことだけ。それで仲たがいしていた兄弟が旧民主党を作った。安子さんは「ウチは3人も政治家を出して、有権者の皆様に迷惑をかけている」というのが口癖でした。
藤本:確かに1人には振り回された(笑い)。気になるのは莫大な資産の行方ですね。一昨年に兄弟それぞれに42億円の生前贈与をしているが、それも一部でしかないでしょう。
上杉:私がいたころで保有資産は500億円とも600億円ともいわれていましたが、今はどうなっているのか。ブリヂストンの大株主で、兄弟に毎月1500万円の献金問題があったせいで、大金持ちのイメージを持たれがちですが、株主配当などの収入はあしなが育英会や各地の病院、施設などにほとんど寄付していました。夫の威一郎氏が亡くなった際も遺産は政治団体を通して、兄弟に引き継がせれば無税だったのに、団体を解散させ、兄弟にそれぞれ17億円もの相続税を払わせていました。
藤本:そのあたりは大物政治家とは違うところだね。ため込んだカネを個人資産と政治資金でごちゃ混ぜにして、相続させてしまっているところはゴマンとあるからね。
上杉:葬儀等で久々に鳩山家のお手伝いをしましたが、秘書や書生を経験した現役の国会議員は10人近くいて、彼らはみな入り口で秘書と同じ仕事(笑い)。地方議員なども含めれば100人くらいを輩出していますからあらためて鳩山家の底力を見せつけられましたよ。