【藤本順一、上杉隆の言いたい放談】2012年12月8日掲載紙面から
衆院選(16日投開票)が4日に公示され、シ烈な選挙戦が始まったが、国民をあぜんとさせたのは、野田佳彦首相(55)が比例代表に重複立候補し、小選挙区で敗北したとしても比例復活の予防線を張った弱腰姿勢だ。本紙「永田町ワイドショー」藤本順一氏、元ジャーナリストで「NO BORDER」代表の上杉隆氏は野田首相を痛烈批判。閣僚が落選し“閣僚過半数割れ”の珍事も起きかねないと指摘した。
藤本:衆院選序盤の各世論調査では、自民党が単独過半数どころか自公で300議席に迫る勢いですね。
上杉:逆風の民主はもとより、第三極勢の維新や未来も公示直前の合従連衡の混乱が響き、浸透していませんね。
藤本:だとしても千葉4区から出馬する野田首相が比例に重複立候補したのは情けないね。
上杉:完全にビビってますよ。現職の首相が重複するなんてあり得ない。比例は辞退し、小選挙区一本で勝負するのが首相たる者の務めですよ。
藤本:上杉さん、もう一人忘れていますよ。2000年に「神の国」発言で支持率急落した森喜朗首相(75)が現行の小選挙区制度に移行してから現役首相として初めて重複立候補しています。引退する森氏が野田首相をベタぼめしてるのは周知の通りですが、つまりは同類相哀れむということなのでしょう(笑い)。
上杉:千葉4区は決して強力な対抗馬が出ているわけではないから、なおさら“へたれ”です。それでも選挙は何が起こるか分かりませんから、もし野田首相が落選し、比例でも復活できないようなことがあれば、憲政史上初のケースになりますね。想定していないでしょうけど、首相が死亡したのと同じケースの欠格扱いになる。
藤本 となれば私がかねて待望していた岡田克也副総理(59)がわずか数日間の「臨時」とはいえ、ついに首相のイスに座ることになるわけですね。
上杉:そんなことで舞い上がっている場合じゃないですよ。当落線上には藤村修官房長官(63)、城島光力財務相(65)、樽床伸二総務相(53)、田中真紀子文科相(68)ら現職閣僚がうようよいますから、岡田臨時内閣が発足しても閣僚が“過半数割れ”しているかもしれませんよ。日本は間接民主主義ですが、そうなれば事実上、国民有権者が野田内閣の不信任案を可決したことになります。
藤本:なんだか哀れな民主党政権の末路だけど、こうなったら開き直って閣僚全員落選、討ち死にしてもらい、ギネスを目指すことです(笑い)。その分、第三極に頑張ってもらわないと困るんだけど、東国原英夫前宮崎県知事(55)を維新が公認したところで「終わった」と思ったよ。
上杉:近畿の比例名簿単独1位ですから当選確実ですよね。これでは他の維新候補者は士気が下がります。
藤本:東国原氏にしても、小選挙区から逃げたら単なる維新の人寄せパンダのタレント候補でしかないわけで、政治家としての価値を自己否定したようなもの。あと、個人的には選挙の風物詩ともいえる新党大地の鈴木宗男代表(64)の姿が見られないことが、寂しいね(笑い)。
上杉:公民権停止中ですから涙と土下座の街頭パフォーマンスや、選挙カーの曲芸的ハコ乗りが見られない(笑い)。
藤本:その分、北海道7区から出馬した長女の貴子チャン(26)には、ぜひとも議員バッジをつけてもらい、女ムネオとして国会で暴れ回ってほしいんだけど(笑い)。
☆ふじもと・じゅんいち=1958年、福岡県生まれ。新聞、雑誌記者を経て独立、取材執筆集団「メディアフォーラム」代表。「建設業界・談合が崩壊する日」「永田町奇譚 もしニッポンの総理が東スポを愛読してたら…」など著書多数。本紙で「永田町ワイドショー」好評連載中。
☆うえすぎ・たかし=1968年、福岡県生まれ。テレビ局、衆院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ取材記者、フリージャーナリストを経て、ミドルメディア「NO BORDER」代表。近著に森達也氏との共著「誰がこの国を壊すのか」など多数。