【藤本順一、上杉隆の言いたい放談】2012年11月24日掲載紙面から
衆院選(来月4日公示、16日投開票)での民主党公認をめぐって、野田佳彦首相(55)から党議順守を迫られた鳩山由紀夫元首相(65)が不出馬、政界引退に追い込まれた。本紙「永田町ワイドショー」藤本順一氏、元ジャーナリストで公益社団法人自由報道協会理事長の上杉隆氏が、引退撤回もあった舞台裏から仰天の出馬案まで披露し、惜別の辞を送った。
藤本:鳩山氏の引退には驚かされました。上杉さんは、いち早く鳩山氏から引退を知らされていたとか。
上杉:20日に脳科学者の茂木健一郎氏(50)らと一緒に鳩山氏と食事をしたんです。その席で鳩山氏から「明日、引退を発表します。まだ地元にも説明していないので、上杉さん、ツイッターでつぶやかないでね」と告げられたのですが、1時間後にはテレビで速報が流れた。
藤本:誰が漏らしてしまったの?
上杉:鳩山氏は輿石東幹事長(76)だけには報告していて「明日までは黙っていてください」と口止めしていたようです。「ひどいなあ」って言っていましたよ。他には思い当たりませんね。私から「向こうが約束を破ったのなら、やはり出馬すると言えばいい」と水を向けたら「でも一回辞めると言って、その後また出ると言って、またブレたと言われる」と。一瞬、言葉を失いましたが、最後まで人の良さのにじみ出た引き際でした(笑い)。
藤本:前回、本欄でボクが「ウソつき解散」と命名したのは、野田首相が民主党のマニフェストをほごにし、先の衆院選で一票を投じた有権者や党内の仲間をだましたからです。鳩山氏もその犠牲者の一人とも言えるが、一方で加害者でもある。だからこそ、冗談ではなく、普天間基地の県外移設の約束を果たすために沖縄選挙区から出馬してほしい。「最低でも県外」で辺野古移設を中断させたことは、地元の反対派からすれば大勝利だった。無所属でも絶対に当選するよ。
上杉:沖縄だけのローカルな議論を日本全体の問題に昇華させた点は大功績ですからね。ただ、離党ではなく引退を選んだのは、自分がつくった民主党への思い入れの強さからです。
藤本:鳩山氏じゃなくても幸夫人(69)が「主人は志半ばで倒れたが…」と出ればいいのに(笑い)。
上杉:なるほど。27日に自由報道協会で鳩山氏が会見しますので、もしやがあるかもですね(笑い)。
藤本:一方、選挙戦は連日、維新の石原慎太郎代表(80)と橋下徹代表代行(43)がメディアに引っ張りだこで、話題を独占していますね。
上杉:マスコミは相変わらずですね。単にポピュリズムに乗っかっているだけ。官僚機構の打破や変革を訴えると言いながら報じるから有権者も影響されてしまう。
藤本:橋下氏が面白いことを言っていた。「政治で大事なのは政策じゃない。行政を動かせるかどうかなんですよ〜」って。だけど、間違った方向に動かされても困ります。
上杉:とはいえ、産経・FNNの世論調査で維新が比例投票先で22・4%と自民党と0・5ポイント差に迫っていたのが不気味です。永田町の常識では「FNNの世論調査は直近だと外れるが、1〜2か月後にトレンドを表す」ですから、1か月後の投票日には相当、躍進しそうな気がしてきました。
藤本:さすがに小選挙区は厳しいけど、この数字からすれば、比例で50〜70議席を取る可能性があります。自公で過半数割れするようだと石原政権の目も出てくるのかなあ。南無阿弥陀仏…。
☆ふじもと・じゅんいち=1958年、福岡県生まれ。新聞、雑誌記者を経て独立、取材執筆集団「メディアフォーラム」代表。「建設業界・談合が崩壊する日」「永田町奇譚 もしニッポンの総理が東スポを愛読してたら…」など著書多数。本紙で「永田町ワイドショー」好評連載中。
☆うえすぎ・たかし=1968年、福岡県生まれ。テレビ局、衆院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ取材記者、フリージャーナリストを経て、公益法人自由報道協会理事長。ミドルメディア「NO BORDER」代表。近著に森達也氏との共著「誰がこの国を壊すのか」など多数。