【藤本順一、上杉隆の言いたい放談】2012年11月3日掲載紙面から
臨時国会がようやく開会し、野党側が野田佳彦首相(55)に年内の解散・総選挙を迫る攻防戦が始まった。民主党は開会日に離党者が現れ、今月結成予定の石原新党にも流出者が出る気配で、崩壊劇が各所で止まらない。本紙「永田町ワイドショー」藤本順一氏、元ジャーナリストで公益社団法人自由報道協会理事長の上杉隆氏が、断末魔の叫びを上げる野田政権と民主党の行く末を占った。
藤本:臨時国会の代表質問で自民党の安倍晋三総裁(58)が、来るべき総選挙後の政権構想を語れば、野田首相は言い訳ばかり。初対決は安倍氏の圧勝ですかね。
上杉:参院の方は国会で野田首相の所信表明演説を拒否したんでしたね。批判もありますが、気持ちは分かりますよ。言い訳ばかりじゃ聞いてもしようがない。時間の無駄です。
藤本:結局、参院は2日に27年ぶりとなる緊急質問という形で野田首相への質問が行われ、大幅に軟化する軌道修正となった。自民党国対のメンツを潰さずに国会が進む段取りになったが、おそらく参院の事務局が知恵をつけたのでしょう。議会そのものが既に自民党政権へシフトしているともいえる。
上杉:自民党の部会に出席する各省庁の官僚も野党転落後と打って変わって、局長級が顔を出し始めている。政権交代に一番敏感なのは霞が関ですから、永田町でも既に次を見据えた準備はできているワケですね。
藤本:野田首相は追い詰められ、解散の環境は整いつつある。
上杉:だけど、実は民主党の秘書会が予定していたゴルフコンペが一度は慌ただしい政局を理由に中止となっていたが、予定通りの開催となった。野田首相の下では「選挙は協力しない、動きませんよ」という秘書会の意思表示でもある(笑い)。党内では首相を交代させる大義名分はないかと探し回っているし、あの鳩山由紀夫最高顧問(65)は自分が政局のキーパーソンと触れ回っているとか(笑い)。
藤本:「生活」の小沢一郎代表(70)が、野田首相は退陣するかもしれないと言い出したのにはそんな党内事情も知ったうえでのことなのかな。
上杉:野田首相も先の代表選前に前原誠司国家戦略相(50)や細野豪志政調会長(41)に自分がどうにもならなくなった時には禅譲を示唆しているフシがあります。政治家は自分勝手なもので自身が首相になれば、支持率が回復すると勘違いする。事務所費問題が噴出した前原氏もチャンスがある以上は辞めるはずもない。
藤本:野田首相は解散権すらも事実上、封じられてしまったわけですか~。だけど、民主党の議員連中も姑息で見苦しいよね。負けっぷりもカッコ良くないと。
上杉:先日、元国会議員が「民主党はここまでバラバラだったらあとはまとまるしかない」と力説し、新しい党名予想で話が盛り上がりました。そこで出たのは「シーサンプ“トウ”」でした。
藤本:どこかで聞いたことがあるね。マージャンの役だっけ?
上杉:そうです。漢字で書くと「十三不塔」。配パイと子の第1ツモ時に搭子(ターツ)すら1枚もないバラバラの状態で役満になる。裏返せば多様性ともいえる(笑い)。
藤本:ただ十三不塔が役満になるのはローカルルールじゃなかったっけ? 中央政界じゃチョンボだよ(笑い)。
☆うえすぎ・たかし=1968年、福岡県生まれ。テレビ局、衆院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ取材記者、フリージャーナリストを経て、公益法人自由報道協会理事長。ミドルメディア「NO BORDER」代表。近著に森達也氏との共著「誰がこの国を壊すのか」など多数。
☆ふじもと・じゅんいち=1958年、福岡県生まれ。新聞、雑誌記者を経て独立、取材執筆集団「メディアフォーラム」代表。「建設業界・談合が崩壊する日」「永田町奇譚 もしニッポンの総理が東スポを愛読してたら…」など著書多数。本紙で「永田町ワイドショー」好評連載中。