【藤本順一・上杉隆の言いたい放談】8月4日発行紙面から
ロンドン五輪の陰に隠れ、永田町が流動化の気配だ。自民党の谷垣禎一総裁(67)は消費税増税法案の採決がお盆後に先送りされた場合、野田佳彦首相(55)の問責決議案を出す方針を示した。新党「国民の生活が第一」の小沢一郎代表(70)ら野党7党は増税法案採決前の内閣不信任決議案提出を表明した。本紙「永田町ワイドショー」藤本順一氏、元ジャーナリストで自由報道協会代表の上杉隆氏が混沌の舞台裏を明かした。
藤本:五輪期間中は休戦モードとみられた政局が慌ただしくなってきた。自民党は8日に増税法案の参院採決を求め、見送られるようなら7日に野田首相の不信任決議案を提出する方針を示しました。
上杉:小沢氏の生活やみんな、社民などの野党7党が増税法案の採決前に衆院で内閣不信任決議案を出すことで合意しましたね。増税法案に反対しながらも民主党に残った鳩山グループが一気に追い詰められた(笑い)。
藤本:ただ、生活やみんなの党が出す問責や不信任は増税法案の成立阻止が目的ですが、自民、公明両党は法案に賛成の立場ですから相乗りは難しい。民主党との3党合意を廃棄すれば別ですが、谷垣氏はこれを推し進めてきた立場ですから、ここまできて、ちゃぶ台返しはないでしょう。
上杉:2か月前に3党合意を結んだ際の民主党と状況が全く変わっていることを理由に破棄すればいいじゃないですか。もちろん政治的な痛手を被りますけどね。
藤本:1日に自民党青年局長の小泉進次郎衆院議員(31)ら若手有志が谷垣氏に3党合意の破棄を迫った。参院で増税法案を否決し、解散総選挙に追い込むべきだとの「緊急声明」でしたが、これは2週間前にオヤジの純一郎元首相(70)が谷垣氏に忠告したものが無視されていたのを焼き直しただけ(笑い)。まあ、執行部がここにきて民主党との対決姿勢を強めているのは党内の不満をなだめるガス抜きの意味合いもあるのでしょう。
上杉:永田町が騒がしくなっているのは「12日からはお盆休みに入ってしまうので、その前に」ということでしょうが、いずれにせよ、法案うんぬんではなく、選挙モードに入っている。野田政権は死に体ですよ。新設される原子力規制委員会の人事でも委員5人中3人が原子力ムラ出身で固められていれば、紛糾するのは当然。従来通りで、役人の出してきた案をそのまま通してしまって、全くチェック機能が働いていない。
藤本:原発事故絡みでいえば、東電の勝俣恒久前会長(72)や菅直人前首相(65)らへの告発状が東京地検で受理されましたね。上杉さんが3・11以降、強く訴えていた逮捕までたどり着くかが見ものですが「極めてクロに近いグレー」で不起訴処分となるのが予想されますね。
上杉:告発した側も検察がアテにならないのは織り込み済みで、不起訴となっても強制起訴へ持っていける検察審査会への申し立てを既に視野に入れている。そういえば7月30日に自由報道協会で菅氏の会見を開きましたが、ウチのスタッフを怒鳴りつける場面がありました。会見には国会事故調の野村修也委員(50)が出席していて、菅氏は「なんで野村氏に質問させるんだ」と会見後にブチ切れた。野村氏は質問していないのに勘違いしていたんです。政治家としての器の小ささ、これでは原発事故で対応できるハズもなかったと改めて感じさせました。
藤本:何より、犯した罪を悔い改めないのが一番の罪。不倫や年金未納と違い、国民の命を危険にさらしたわけですから、今度ばかりは丸坊主でお遍路やったくらいでは済まされない。
☆うえすぎ・たかし=1968年、福岡県生まれ。テレビ局、衆院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ取材記者、フリージャーナリストを経て、社団法人自由報道協会代表。ミドルメディア「NO BORDER」代表。著書に「新聞・テレビはなぜ平気で『ウソ』をつくのか」など多数。
☆ふじもと・じゅんいち=1958年、福岡県生まれ。新聞、雑誌記者を経て独立、取材執筆集団「メディアフォーラム」代表。「建設業界・談合が崩壊する日」「永田町奇譚 もしニッポンの総理が東スポを愛読してたら…」など著書多数。本紙で「永田町ワイドショー」好評連載中。