【藤本順一、上杉隆の言いたい放談】2012年8月25日掲載紙面から
外交、領土問題で大騒動の中、野田佳彦首相(55)は、毎週金曜日に首相官邸前で原発再稼働反対のデモを主催する市民団体「首都圏反原発連合」と“歴史的”な面会の席を持った。本紙「永田町ワイドショー」藤本順一氏、元ジャーナリストで自由報道協会代表の上杉隆氏が、面会劇の舞台裏と野田首相の過ちを断罪した。
藤本:野田首相が脱原発の抗議デモを主催するメンバーと首相官邸で面会しましたね。なんでも裏で糸を引いていたのは上杉さんだったとか。
上杉:いえいえ、脱原発の官邸前デモに関しては、是でも応援でも反対でもありませんが「首都圏反原発連合」にいち早く自由報道協会で会見の場を提供していたんです。リーダーのMisao Redwolf氏にもインタビューし「首相と会えないのが普通。会えたら勝ち」と話していて、首相会見では私が「メンバーと会うのか」と質問し、援護射撃の形にはなっていましたが、本当に会うとは思わなかった。
藤本:野田首相としては秋の代表選再選を見据え、菅直人前首相(65)ら党内の脱原発派をなだめておく必要があったのと、世論のガス抜きのつもりだったんでしょう。だけど、どこの馬の骨かもしれない活動家を官邸に呼び入れたのは間違いでした。何より、民主主義の手順を踏まずに、国民の代表でもない彼らの活動に国家が権威を与えたことは将来に禍根を残しますよ。
上杉:まさに政治的には野田首相の完敗です。一般の市民団体のいくら代表であろうと何の権限もない団体と会った瞬間から、活動自体を認めたことになりますからね。今度は野党が申し入れ、きちんとした団体からも申し入れが続いたときにどうするのか? それこそゴルフ税廃止を訴え、全国のゴルファーが全国から集まって、官邸前デモを展開したら、いちいち会うのかということ。オバマ大統領(51)がオキュパイ・ウォールストリートのデモ隊をホワイトハウスに招き入れるかといったら絶対にない。首相官邸を使ったこともダメですよね。
藤本:今回は菅氏や辻元清美衆院議員(52)、社民党の阿部知子衆院議員(64)らがタッチしているのはさもありなんですね。議員個人の立場で抗議デモに共鳴するのは結構だが、面会するのであれば党本部を窓口にするべきだった。脱原発は多くの国民が望んでいることかもしれないが、国民世論の発露は、国会の議論で集約するのが議会制民主主義の基本です。
上杉:関係大臣には、官邸前デモは収拾がつかないから、野田首相なり担当大臣が出て行って、声を聞くだけでガス抜きになると進言していたが、聞き入れられることはなかった。官邸での決定権者は野田首相か藤村修官房長官(62)だが、閣内の大臣が言っていることを拾い上げるセンスもなく、パンクしてしまっている。