Financial Times

中国の「トラ退治」が失敗に終わる理由

2014.07.25(金)  Financial Times

(2014年7月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

「中韓は軍国日本の被害共有」、訪韓中の中国主席が講演

習近平国家主席は「トラ」も「ハエ」も一網打尽にすると約束したが・・・〔AFPBB News

中国の習近平国家主席は、汚職の取り締まりで、地位の高い党幹部も地位の低い官僚も、つまり「トラ」も「ハエ」も一網打尽にすると約束した。

 だが、国営テレビ局、中国国営中央テレビ(CCTV)の派手で自信満々の花形アンカー、芮成鋼(ルイ・チョンカン)氏を拘束した一件では、中国当局は気取って歩くクジャクに襲い掛かった。

 芮氏は先週、担当するニュース番組「経済信息聯播」に登場する直前に身柄を拘束された。この番組の1000万人の視聴者は、ツイッターのようなソーシャルメディア「新浪微博(ウェイボ)」上の同氏のフォロワー数に匹敵する。

 どこか非現実的だが、劉暁波(リュウ・ギョウハ)氏の欠席に注目を集めるために壇上に空の椅子が置かれた2010年のオスロでのノーベル賞授賞式を彷彿させるように、番組のスタジオでは芮氏の席とマイクがこれ見よがしに放置されていた。

自信に満ちた新しい中国を象徴するようなニュースキャスターの拘束

 一見したところ、芮氏は思いも寄らぬ犠牲者だ。この36歳のテレビタレントほど、新しい、一見自信に満ちた中国の愛国的で自信たっぷりな態度を具現化している人物はいないだろう。

 その「洗練されていない食文化」が中国の伝統に対する侮辱であるという理由で、スターバックスを紫禁城から追い出す上首尾のオンラインキャンペーンを企画したのは芮氏だった。米国のバラク・オバマ大統領への質問の中で、「アジア全体」を代弁していると主張したのも彼だった。そして、エコノミークラスに乗っていると元駐中国米国大使のゲイリー・ロック氏を馬鹿にし、それは米国が中国に多額の借金をしているからなのかと聞いたのも彼だった。

 中国の新しい地位を象徴するような芮氏が巻き込まれたということは、習氏の汚職撲滅キャンペーンがいかに遠くまで広がっているかを示している。

 芮氏は、CCTVの組織全体への攻撃のように見える行動で賄賂を受け取った容疑で逮捕されたCCTVの別の幹部と近い関係にあった。また芮氏は、自らが米エデルマンに売却したPR会社の共同創業者でもあった。この会社がCCTVとビジネスを行っている間も芮氏は同社の株式を保有し続けた。

 実際には、芮氏は取るに足りない存在だ。習氏の汚職撲…
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