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最終更新:2014年7月22日(火) 21時37分

「河野談話」検証の一方で政府が非公式にパンフ作成に関与

 従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めて謝罪した「河野元官房長官の談話」。安倍政権は「内容は見直さない」という姿勢を打ち出しています。しかし、最近になって安倍総理に近い政府関係者がこんなパンフレットの作成を
 「日本軍が韓国人女性を性奴隷として20万人動員し戦後その多くを虐殺した、は誤解です。慰安婦に関する国際的誤解を説明します」(パンフレットより)

 慰安婦問題での国際的な誤解を解くために、総理にも近い政府関係者が主導して作られたパンフレット。

 「河野談話で日本政府は慰安婦の強制連行を認めたと考える方が今も多数います。しかし、それは誤解です」(パンフレットより)

 旧日本軍の関与を認めて謝罪した「河野談話」についても、「強制連行を認めたものではない」と説明しています。執筆にあたったのは、安倍政権に政策提言を重ねる西岡力氏です。

 「悪意を持って日本の過去について名誉侵害をしようとする国際的な動きがある以上、事実関係に踏み込んで政府が反論しなければならないと思います。それと連携して、民間で言論活動をする必要がある」(東京基督教大学・西岡力教授)

 西岡氏が指摘するのは、韓国の民間人が海外で進める「慰安婦」像の設置などのキャンペーン活動です。

 「私はこういう展示はない方がいいと思う。次に進んで、日本と韓国が未来の利益のために一緒に歩む時なんじゃないだろうか」(展示会を訪れた人)

 安倍政権は国際社会の批判を避けるため、この問題で表立ったPR戦略は取らない方針ですが、代わりにパンフレットの草稿には外務省や総理官邸のスタッフも目を通し、非公式に作成に関わってきました。そして5月。あえて公費を投入せず、表向き「民間団体の主張を紹介した」という形で完成に至ったのです。

 この動きと並行して、政府の有識者チームが河野談話の作成過程を検証した報告書を発表。菅官房長官は「検証だけで見直しはしない」と明言していますが、総理周辺からは「将来の見直しに向けた世論作りのきっかけに」という思惑も聞こえます。

 歴史認識をめぐるこうした動きに、警鐘を鳴らす人がいます。
 「検証結果を出してみたって、談話を否定しないと言うんでしょ。何が必要なのかと」(村山富市元首相)

 村山氏は、総理在任中に発表したいわゆる「村山談話」でアジア諸国への植民地支配と侵略を認めて謝罪しました。

 「僕の後を引き継いだ歴代の内閣は全部、村山談話を継承すると言って約束してきた。安倍さんも含めてそうであると。それでアジアの環境は安定しているんですよ」(村山富市元首相)

 村山氏は、在任中に元慰安婦らへの償い金を民間から募った「アジア女性基金」を創設した経緯を近く発表する考えで、来月には韓国を訪問し、これまでの日本政府の取り組みを説明する方針です。

 河野談話の検証をめぐり頓挫していた日韓協議は、ようやく23日に再開されますが、日本側は検証結果については事実だけを淡々と説明する方針です。(22日15:58)

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