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「社会はウェブをコピーする」:小林弘人に訊く「現実世界」の次なる常識

 
 
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INTERVIEW BY KEI WAKABAYASHI
PHOTO BY KAORI NISHIDA
TEXT BY SOTA TOSHIYOSHI

小林弘人

──そのときカギになるのは、何でしょう。

再三言っていますが、ぼくは「体験のデザイン」ということになると思う。例えばそれは、「使って気持ちいい」とか「マニュアルなくても使いやすい」ということかもしれませんし、「ちょっと洒落てる」「気が利いている」といった感覚も、そうでしょう。コンテンツを作っている立場であれば、そのコンテンツを見た人を泣かせるのか笑わせるのか、マーケッターならそのブランドに対する感情をどう設計するかといった能力ですよね。

ぼくは昔から、ハードウェアでもソフトウェアでもない、マインドウェアとでもよぶべきものがあると思っています。メディアは短期的に見ればただのコンテンツの集合体ですが、長期的にユーザーが摂取する場合にはマインドウェアとして機能します。ディズニーランドが提供しているのはハードウェアと演出のデザイン、そしてホスピタリティですが、それらすべての影響力が絡み合ってマインドウェアとして、来る人の心に作用するわけです。

──では、体験をデザインする役割は、どういう人間が担うのでしょうか。従来の「デザイナー」という職能では説明できないように思うのですが。

究極的には「わがままなユーザー」なのだと思います。iPhoneを生み出したスティーヴ・ジョブズのような、「俺はこれを使いたいんだ!」「ないんだったら自分でつくる」という考え方。つまりは、地上でもっともわがままなユーザーになり、その人たちが、何を欲しているかというのが起点になってくるのでしょう。呪文のようなコマンドを入力する仕様のPCが、少し前まですごく売れていたということすら笑い話になるかもしれません。

ただ、この話は結局、組織論にぶちあたるんですよ。組織のなかのひとりが「これをつくっている場合じゃない」と思ったとしても、企業の論理では「それはおまえの範疇じゃない」、でしょう? 企業において、そのようなわがままが通ると、収集がつかなくなってしまう。

──企業体をどうデザインするのか、非常に難しい課題が立ち上ってきますね。

アップルや、同じようにひとりの「わがままな」リーダーが率いる企業を見ていても、実は、普通の会社とそう変わらないと思います。というか、むしろボスこそ絶対なので、『インサイド・アップル』など内幕を描いた本を読むと、普通の会社よりイヤな感じ(笑)。

必要なのは、共創に近い考え方なのでしょう。出版社を例にとると分かりやすいのですが、「お前は営業、俺編集者」という区別はもはやありえません。メディアの売り方に対しては、全員がアイデアを出すべきだし、メディアのことを一番よく知っているのは編集者。それなのに縦割りで動くことに、意味はありませんよね。

多くの場合、仕事はひとりの力ではカヴァーできなくなっていて、だからこそ、人が集う企業であることの意味が出てくると思うんです。そして、企業内で実現できないのなら、外部の力を調達して、コラボレーションしていくことも考えなければならない。自己完結することは、もはや複雑かつスピーディーなこの世界や市場では難しい。

 
 
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